『序/零天式』
人々は、生まれながらにしてなんらかの神秘を持っている。
個人の内に秘められている才能かもしれないし、
『生命』という奇跡のことかもしれないし、
はたまたその『存在』かもしれない。
『人々が神秘を持っているならば、それはなんだと思う?』という質問があるとしよう。
こんなことを聞かれた時、君たちは何を思い浮かべる?
ここに書いてあることの中にあるかもしれないし、それ以外の答えももちろんあるはずだ。
恐らく、その質問の答えは個人個人によって変わってくると思っている。
——急になんの話だ…と、君たちは考えているはずだ。
これは、俺の人生の数ページに刻まれた物語である。実は、この神秘についての質問はそんなに関係ない。
俺の言っている神秘、それは——『零天式』のことだ。
『零天式』は、生まれて来る人々にのみ与えられる、神秘の領域に位置する特殊な現象。
最期の望みを一度だけ、その『式』の名前に関連するものならなんでも叶えてくれる与えられた奇跡。
俺は、その神秘を宿した、計五人の少年少女と出会った。全員が俺と同じぐらいの歳で、同じ地域に住んでいて、同じぐらい純粋だった。
しかし、彼らの持っていた神秘は『零天式』では無かった。
——俺は、その五人の終末を見た男である。
誰もが持っていると知られている『零天式』
常識の中に埋もれている真の絶望は、当時の俺には計り知れないものだった。
なぜ、今これを語ろうと思っているのか、俺自身にも分からない。
あの回廊を思い出したからだろうか……。




