第十三話 繋がりし黒
黒大理石の床には所々装飾として黒曜石が埋め込まれ、艶やかに磨き上げられている。
黒く冷たい床を赤い絨毯が一直線に貫き、その先、黒を地とし黄金の玉座には物々しい空気を纏い、鎮座する者が一人。
玉座の左右には無言の近衛兵が佇み、誰もが皇帝マグナー・フォン・ヴァルディナの動作ひとつに息を吞む。
天井高くから吊るされたシャンデリアからの光は、輝きというより裁きの光に近い。
その玉座の前に、帝国軍元帥アウグスト・フォン・アイゼンブルクの姿。
アウグスト元帥は皇帝陛下へ、今回のエルデンシュトラへの出兵を報告しているようだった。
「エルデンシュトラの混乱を受け、この度出兵を許可し、本日進発いたしました」
皇帝マグナーは、その報告を表情を変えることなく聞いていた。
静まり返った玉座の間は、緊張感でその空気さえも張りつめている。
一時の間の後、落ち着いた低い声が静寂を断つ。
「貴様の所の、あの少佐が向かったのだろう?」
嗜虐的な笑みを浮かべて皇帝マグナーは言葉に出すと、息を漏らし笑い出す。
「ふっ……ははは、あいつが行ったのか。実に適任だ」
皇帝マグナーの赤い眼が研ぎ澄まされ、強さを増すと、低く静かに声が響く。
「面白い──」
その様子をアウグスト元帥は視線を下げ、表情一つ動かさず言葉を聞いている。
「まぁ、よい。下がれ」
皇帝陛下は玉座のひじ掛けに腕を預け、顎にたくわえた黒い髭を触りながら、その不敵な笑みが消えることはなかった──
最後まで読んでくださりありがとうございます。
彼らが何を選び、どう進むのか、見届けていただけたら幸いです。
ここで『第一部 始まり編』が終わりになります。
次回ひとつ番外編を挟んで、その後『第二部 エルデンシュトラ編』に入ります。
引き続き、お付き合いくださると嬉しいです。




