69.醜態を晒しました
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「人材? 役立たずのコイツのことか。」
扉から2人の人物が入ってくる。
「裕さん。」
1人は副社長でもう1人はユウタの父親だった。しかも抱きすくめられている。どういう関係だ。
「ほら、お前も止めろ。それとも、この写真をバラまかれたいか。」
なにやら脅されている様子だ。
その写真は若い男性の女装、しかも下着姿、しかも股間が・・・。
「ヤメテくれ。大学時代のサークルの飲み会で無理矢理女装させられただけなんだ。裕太。本当なんだ。」
はあ。溜息が出るよな。何で世の中の男性は口で拒否しつつも女装が好きなのだろう。生理的にダメならば、誰かを女装させようなんて思い付きもしないだろうし、こんな写真など持ち歩けないだろう。
裕さんも裕さんだ。股間をこんなにして。エロ女装として今でも続けていそうだ。
「父さん大丈夫だよ。母さんは、こういうの大好きだから。チヒロのも母さんが似合うと言い出したのがはじまりなんだ。」
ユウタは俺の情報を祖父から伝えられて、親友になるためにどうしたらいいか母親に相談したらしい。
意外なところで意外じゃない関与している女性が出て来た。ユウタのアイデアにしては詳しすぎると思ったんだ。バックにユウタの母親が居たらしい。
「そうなのか?」
まるで目からウロコだったようで、裕さんは呆然とユウタの顔を見ている。
「そうだよ。だから、こんな卑怯な輩とは決別しろよ。こんなことで馴れ合っている父さんのほうが格好悪いよ。」
脅迫が効かないと解ったようで隣の男が身を乗り出してくる。
「いいのかっ。加納家の人間が、こんな男だと世間に知られるんだぞ。」
何を言っているんだろう。この人。
「構いませんよ。アタシはこの姿で加納家の人間として記者会見に臨みますから。それでは失礼します。」
もう既に俺のプロフィールは世間に出回っている。しかも映画製作の記者会見では全国的に女装姿で顔が知られてしまったのだ。いまさらもいいところだ。
結局、脅迫罪が成立して企業価値が減ることを心配したのか。その写真は世間に公表されなかった。
☆
株式会社カノンは、企業価値の全てと言っていいブランド名や商標を獲得するためにファンドからある会社に売られ、株式交換による吸収合併が成立し、製品ブランド毎の2代目会社に分割され、不採算事業は整理されていった。
もちろん元経営陣は降格や退陣を強要され、年功序列で高収入の管理職は整理対象の会社に追いやられ、逆に優秀な人材は被吸収合併会社の社員として活躍している。
ユウタの話では、裕さんは女装姿で母親と出歩いているらしい。夫婦の趣味がバッチリ合っているんだから離婚などありえないに違いない。
「あれっ。おねえさま。おねえさまがリョウコさんがユウタの母親なんですか?」
例の写真のことでユウタの家に謝りに行くと出て来たのは良く見知った人物だった。
「年齢がバレっちゃったわね。そうよ私がユウタの母親よ。こんなオバさんだと解ってガッカリした?」
ソコに居たのは女装界隈でイベントがあると必ず出てくるカメラマンだった。ビアンだという噂だったのに母親だったのか。
「年齢って、SNSで公表してるじゃないですか。それに前からオバさんだと解ってますよ。」
このカメラマン。結構、えげつない写真を無断で撮るのだ。下からのアングルはもちろんのこと、爆睡して涎を垂らしていようが泥酔して醜態を晒していようが、どんな写真でも撮る。しかもフェチなのか、同様の趣味を持つ人を増やそうとSNSから拡散してしまうのだ。
オバさんはオバさんでも年齢じゃなく自分勝手なルールで動くオバさんという生き物なのだ。
それでも、自分だけが安全なところから撮るんじゃなく。回りじゅうが泥酔しているときは、どんな強い酒でも飲み、回りがエロい格好をしていれば自分も同じレベルに合わせる。
そんな撮影スタイルだけは公明正大な姿に界隈の女装さんやニューハーフさんやビアンさんなどから、おねえさまと慕われているのだ。
「酷いわねえ。私何かしたかしら。」
俺も熟睡中のブリーフ姿の写真を撮られている。主催する女装イベントの準備のため自宅でグッズを作成していたはずなのに、いつの間にかズボンをズリさげられていたのは驚いた。ヤラセでも良いらしい。
LGBTのクラブイベントというと密室の中で行われているイメージがありましたが、今はかなりオープンなようで一般人にも開放しています。
そして専属カメラマンも居てバシバシ撮影していますし、女装参加者のカメラマンも居たりします。
女装している男性にはイロイロなタイプがあります。エロ目的、ナルシスト、性同一性障害が単に女の格好をしている。などなど。もちろんエロ目的のカメラマンも居ますし、エロ目的のイベントスタッフも居たりして、この2者が組むイベントは最高で最悪でした。




