70.オネエは地獄を見ることになったようです
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「どうしたんだよ急に。」
昼休み順子さんに数学準備室に連れ込まれ、押し倒されてヤラれてしまった。
「学年が変わってホームルームで顔が見れなくなって、チーちゃん成分が足らないのよ。」
順子さんはあいかわらず。いや酷くなっている。こんなところを見つかれば、懲戒免職だというのに自制が効かないらしい。まあ自制が効いている順子さんなんか見たことは無いか。
「そんなことか。」
こちらは2年生になって大変だというのに、困ったものだ。
「そんなことって何よ。私に取っては一大事なんだから。それに私の場所が上条さんに取られちゃったもの。」
その上条さんが問題なのだ。あいかわらずユウタたちとはつるんでいるが、クラス替えにより、タツヤとヒデタカが別のクラスに替わり、上条さんが同じクラスになったのだ。
これはキツイ、タツヤを盾替わりにできないのである。しかも何の因果か1年生のとき学年主任だっだ先生が2年生の担任になったのだ。1年生のときから厳しいという噂で女装するにあたって校則ギリギリの理論武装をしたのも、その影響だったのだ。
意外にも担任になった今も何も言われていないが何時言われるか戦々恐々としているのが現状だ。
上条さんは座席こそ離れた場所だったが、休み時間など、ことあるごとに俺の隣を陣取っているのである。もう周囲の視線が痛いなんてものじゃない。射殺されるような視線も偶にある。
その担任の先生に眉を顰められ、不純異性行為と勘違いされているのではとも思っている。
「あれなあ。何度言ってもヤメテくれないので、休み時間になると逃げ回っているの。ここにも来ると思うけど、今日みたいなのは勘弁してほしいな。」
タツヤばかり頼れないので、情けないけど高校1年生に持ち上がった優子さんに匿って貰うときもあるし、今日みたいに授業が終ったチャイムと同時に教室を飛び出してくるときもあるのだ。
順子さんとは朝、電車の中でも好き放題されているし、『キャラメ・ルージュ』にも頻繁に顔を出す。アフターにホテルに連れ込まれることも週に2度3度ある。それでも足らないらしい。
上条さんは拒絶すれば、無理矢理何かをしようとしてこないので助かっているのだが、順子さんのような強引さがあれば、転校するしか無いと思っている。
だが、あのタフさ加減には脱帽ものだ。拒絶したときはキズついたような顔をするが半日も経てばケロッと元に戻るのである。こちらは心を痛めながら拒絶しているというのに。
「トモヒロ君。見つけた! あ・・・。」
噂をすれば影。その上条さんが数学準備室の扉を開けて入ってきた。
というか鍵も閉めずに、あんなことしたのかよ。危ないったら、ありゃしないな。
珍しく上条さんが扉から近寄ってこない。順子さんとの甘々な空気を読み取ったか。空気を読まない上条さんに限ってそれは無いな。
それでもしばらく待っていると口を開けたままの上条さんが居た。悪い予感がして後ろを振り向くとスカートを捲り上げてパンツを穿いている順子さんが同じように口を開けて固まっていたのだ。
バレた。どこをどう見ても情事の後だ。
「早く仕舞えっ。・・・何だよ。何か言えよ。」
固まった順子さんに命令すると思わず素に戻って上条さんに向って乱暴な言葉が出てしまった。ショックを受けただろう上条さんに気遣えよ俺。オネエだろ。
「・・・・・。・・・・・きっと・・・巨乳になってみせるからね。待っていてトモヒロ君。」
上条さんは上条さんだった。視線を自分の胸の辺りに持ってくると出て来た言葉がコレだ。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
怖いよー。
前向き発言というよりは、怖さのため背中に鳥肌、腕に寒イボ。
「ヤメテくれよ。近付いてこないでくれ。キミが(怖い)嫌いなんだ。大嫌いなんだ。」
流石に怖いとは言えなくて飲み込んだ次の言葉が最悪だった。どうしてこうなったんだ。
「数学準備室で何を騒いでいる。」
開いていた扉から叫んだ言葉が聞えたのか担任の先生が入ってきた。うわっ。最低だ。
いやセーフか。後ろを振りむくと順子さんは着替え終わっていた。少しだけ紅潮していたのは情事の後だった所為なのか上条さんに何かを言おうとしていたのか。
「あっ。担任の先生。」
「高柳さん。何があったか話してもらおうか。」
「何って・・・そのう。そう結城さんの服装チェックをしていたんです。服装の乱れは心の乱れでしたよね。少し乱れていたところを指摘していると上条さんが現れたんです。」
一生懸命にウインクして合図をすると考えてあった言い訳を思い出した順子さんが立て板に水とばかりに言葉を紡ぎ出した。助かった。
「智広クン。嫌いだとか聞えたが・・・それは友香・クンに向って言ったのかね。イカンね。その姿に似合ってない。気持ちは解るがもっと優しい言葉を使ってはどうかな。」
意外にも女装には何も言わないどころか擁護とも思える言葉が返ってきた。厳しいという噂だけで決め付けていたみたいだ。
「パパには関係無いでしょっ。」
続いて上条さんの口から出て来た言葉に呆然としていると担任の先生を突き飛ばすように出て行ってしまった。
「パパって、先生は上条さんのお父さんなんですか?」
「うむ。友香は離婚した妻の元に居るんだ。君が嫌がっていたのは知っていたが止められなくてすまない。そんな訳なんだ。できれば優しく接してやってくれないか。」
「それは・・・いえ頑張ってみます。」
上条さんの口から、順子さんとの関係が先生に伝わったら最低最悪だ。これは首の皮一枚繋がったということだろう。何が何でも阻止しなくてはいけない。この先に地獄が待っていようとも。




