67.自問自答しました
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「しかし電光石火だったわね。」
タピオカドリンク店『過濃茶』をフランチャイズ展開しようとしたところ、早速社長が手を挙げてくださったのだ。
急遽、自宅がある高層マンションのオフィス棟の一室を借りて会社を設立した。今日は陽子さんと初めての取締役会だ。
東京と大阪の有名店の近くに世界初『環境に配慮したタピオカドリンク店』として数店舗出店し、高級スーパー『ハロウズ』が入っている全国各地のショッピングモールにも出店を果たした。
「こんな流行を追うような店は珍しいんだよ。きっと女性の従業員の提案なんだろうね。」
フランチャイズ本部はこの会社が行う。
店舗運営指導と言ってもノウハウはこれからだ。材料供給も俺と社長で設立した合弁会社が行うことになっている。出店した店が儲かろうと儲からなかろうとも一定の収入は確保された形だ。
「大きな会社なのに1人の従業員の意見が通るなんて考えられないわね。」
社内SNSグループで提案され、賛成が80%を超えると無条件で採用される。一応社長には拒否権が与えられているが使ったのをみたことは殆どない。
「きっと有名店と交渉を始めるところだったのだろうね。運が良かったんだ。」
フランチャイズ店も銀座の第1号店と大差無い。タピオカとゼリー状の食べ物と飲み物の組み合わせだ。そこにアイスクリームなどのトッピングを追加したり、無くしたり出来るようにした。
後は季節モノを期間限定で提供する。女性は限定品に弱いからな。
「それだけ信頼関係を築いてきたのよ。」
「まあ合弁会社が手掛けている化粧品や服も好調だからね。」
男性の肌に合ったスキンケア商品を販売したところ、ニキビの陥没跡が治る事例が出て来たり、男性用に左前のボタン仕立てのロングカーディガンやロングシャツが生産が追い付かないほど、バカ当たりしたのだ。
店舗を持つ販社の株価は鰻登りだ。株式分割を繰り返し資金を調達して店舗を増やしているところだ。
しかもLGBT向けと謳っている所為か追随するメーカーが全く無いのが大きい。服は簡単に真似をされるからな。
「じゃあ、私が手を引いても大丈夫そうね。」
「えっ・・・。」
陽子さんが思いがけない言葉を口にする。
「真っ当に商売が成り立つんだったら、私たちみたいな反社会的に見られる人間は表舞台に居てはいけないわ。もちろん裏からのバックアップはさせて貰う。だから私の持分は買い取ってくれるかな。」
「そんなっ。」
・・・ギリっ。
何も言い返せない。どう考えても陽子さんが言っている言葉が正論だ。
「ほら泣かないの。唇から血が出てる。私の大好きなチーくんの顔にキズをつけないで。」
そう言って唇を奪われた。
本当はこんなに大規模に事業が展開していくとは思っていなかったのだ。合弁会社で出た利益のうちから資金を出して、陽子さんと気楽な関係を築けたらいいなと思って設立した会社だ。それなのに終ってしまった。
「どこまでするの?」
熱を帯びたキスをしているうちに床に押し倒されてしまった。当然、唇が離れる。
「もちろん、私の持分は払ってくれるでしょう?」
「陽子さん。オヤジ臭いよ。」
どうやら身体で払えということらしい。それ以外では受け取らないつもりなのだろう。本当なら汚いヤリクチだと抗議するところだろうけど、好意しか感じられないのでは突っぱねることもできそうにない。
「諦めたの?」
抵抗せずに身体の力を緩める。
「うん。優しくしてね。」
セリフが男女逆だが、結構乱暴だからなあ。
タツヤを救うためだったが、薬を盛られて誘拐された。座敷牢では手足を拘束された。自分の意思もあったがヤバイ薬を盛られて、身体を強要された。
それなのに、こんな関係になっている。結構、好きなんだ。この女のこと。
「どうしたの。こんなところじゃイヤ?」
俺が上の空だったからなのか急に気弱な顔をする。
「ううん。アタシ、陽子さんのこと好きよ。」
ボン。ボンというニュアンスがピッタリな感じで陽子さんの顔が真っ赤になる。
「・・・もう・・・オバさんをからかって。」
オバさんなんて全く思ってないくせにそんなセリフを口にする。
「陽子さんもアタシのこと好き?」
「大好きよ。子供たちよりも愛しているかもしれない。」
「そっか。ゴメンね。同じだけ愛し返せなくてゴメン。でも好きなのは本当のことだから。」
一瞬、重いなと思ったがそれを振り払い謝ることにした。そもそも俺に何を置いても女性をそこまで愛せるだろうか。自問自答してみるが答えが出ない。
「大丈夫。女性は愛せれば幸せなのよ。知ってるでしょチーくんは。」
いやいやオネエだからって女性の心を持っているわけじゃないから解らないって。何か誤解してるよな。まあいいか。




