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63.京都を案内されました

お読み頂きましてありがとうございます。

 京都駅の前を通り、鴨川に掛かる橋から川沿いの道に入る。


「トモヒロ君、ほら見えてきましたよ。あれが鴨川の川床です。」


 鴨川の堤防沿いの店の軒先から川に突き出るように木組みの床が広がっている。


 この光景を見せてくれるために鴨川の反対側に渡ったんだ。まあ京都市内は一方通行も多いから、このルートしかないのかもしれないけど。


「なんか凄いですね。危なくないんですか?」


 景観を守るためか全て木組みで構築されているようで鉄骨を使っているようには見えない。


「ええ今は基準を決めて運営されているのですが、江戸時代には河原に机を置いただけの席もあったようで当時、鴨川の河原では見世物小屋や物売りの店が立ち並んでいたそうです。」


「へえ、それが今では有名百貨店や南座。凄く歴史を感じますね。」


 車は丁度、京都四条通りの南座の角を曲がる。前方には有名百貨店の看板が見えた。


「それでも河原には違いないわけで雨風台風には弱かったようです。そんな危険を冒してまで河原に店を構えたかご存知ですか?」


「そういえばそうですね。川の水が増水すれば店は流されてしまう。何故なんでしょう。」


「ここは番外地で河原では税金が掛からなかったんですよ。施政者としては悔しいですが法律の穴があったわけです。だから当時の京都の住民からは嫌われ、『かわらもの』などという差別用語で呼ばれていたそうです。それが今では国を代表する文化『歌舞伎』ですからね。世の中解らないものですよ。」


「ああそれで、ここは『河原町』なんですね。」


 その河原町駅から鴨川沿いの道に入っていく。


「到着しました。この店は友人が経営してまして普段は夜だけなんですが、時々接待のために昼間の時間帯を押えることがあるんですよ。」


 立派な門構えの料亭に到着する。事前に調べた中ではトップクラス。もちろんお値段もトップクラスだった。そこを貸し切ったというのだ。


 順子さんにエロい視線を向けた御代にしては高すぎる。他に何か融通しなければないかも。まあ16歳の俺に出来ることなんて知れているから、そう無茶は言わないだろう。


 早速川床に通される。周囲の店との間には目隠しが多少ある程度で周囲からは丸見えだ。もちろん対岸からも丸見えだが対岸の車は米粒くらいだから殆ど見えないに違いない。


 眼下には鴨川沿いの遊歩道が見える。あの辺りからが一番近いかもしれない。まあそれでも逆光でこちらの顔など見えないに違いない。意外と秘密の接待にも使えそうだ。


「順子さん。どうしたの?」


 珍しく話しかけてこない。いつもならば嫉妬で般若の顔になっている頃だ。まさかタクシーで前の席に押し込んだので仲間外れにしたと拗ねているんじゃないだろうな。あれはもうエロい視線を受けないようにするためだったのだけどなあ。


「こんなところ初めてだから緊張しているのよ。チーちゃんは緊張してないみたいね。」


 ちゃんと笑顔が返ってきた。これなら暴走しなさそうだ。


「物怖じしない性格って良く言われる。緊張していたら純粋に楽しめないからね。お姉さまはどう?」


 志保さんも表情が硬い気がする。『西九条れいな』なら我が物顔で女王様やっている頃だ。まさか男を俺に取られたからと露出度の高い服に着替えてこようなんて策を練っているんじゃないだろうな。


「緊張しているわよ。程よく緊張しているほうが本来の力を発揮できるのよ。覚えておいてね。」


 演技のことを言っているらしい。あくまでもステージママという設定なのだろう。


 4人掛けにしては大きなテーブルに通される。対面に順子さんが座り、その隣に志保さんだ。美女2人で目の保養としては大満足だ。


「結構、涼しいでしょう。トモヒロ君、寒いようだったら羽織ものを貸してくれますから言ってくださいね。」


 優しい笑顔で世話を焼いてくれるオジサンだ。これは多少認識を改めなくてはならない。政治家という色眼鏡で見ていたかもしれないな。


「こちらのお二方は成人を越えてらっしゃるのでしょうか。伏見の純米酒で大吟醸の良い物が置いてあるので、それにしましょう。トモヒロ君は南高梅のシロップで我慢してくださいね。」


 食前酒なのだろう梅酒のグラスが各人の前に置かれる。俺の前には同じ色のグラスと別にスクリュー瓶が置かれた。早速口を付けてみるが只の梅ジュースだ。別に甘いお酒を飲ませて酔わせようという意図は無いらしい。


 中に氷が満たされた独特の形のガラスの徳利が2つ出てくる。順子さんが志保さんにお酒を注いでいる。まあ2人ともいい大人なんだから、お酒が過ぎることもあるまい。


「お注ぎいたしましょうか。」


「ああダメです。トモヒロ君が本物の舞妓さんならば、京都の条例によりお酌して頂けるのですが。」


 俺が徳利を持ち上げようとするとストップが掛かった。周囲に誰も居なくても法律を守るタイプようだ。俺の周囲の大人たちは結構いい加減だから新鮮だな。


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