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50.オネエなのに会社を経営するようです

お読み頂きましてありがとうございます。

少し本編が進みましたので後追いで再開したいと思います。

よろしくお願いします。

「ちょっと待ってください。俺が加納ホールディングスの会長補佐ですか?」


「そうだ。ワシの直属の部下という扱いじゃよ。」


「俺、言いましたよね。貴方の跡は継がないと。」


 もっと良いご褒美というのが加納ホールディングスの次期会長の座だったのだ。


 高校を卒業後、大学に通いながら加納ホールディングスの一員として英才教育を受け、関連会社の役員を歴任し、30歳で会長の座に就くレールが敷かれていたのだ。


 経営に携われるという意味では魅力を感じないわけではなかったが、高校卒業後就職することを決めていた俺ははっきりと断ったのだ。


「搦め手というやつだわい。株式会社カノンの高卒採用の件は知っているじゃろ。山田氏に何度も足を運んで頂いたんじゃが。さっぱり進展せん。これ以上、あの方の手を煩わせたくはないんじゃよ。」


 加納グループの中核企業である株式会社カノンの高卒採用とは、俺のバイト先の社長とこの祖父との間で取り交わされた約束なのだが、当の株式会社カノンの経営陣が首を縦に振らないので頓挫している。


 これ以上、社長の手を煩わせたくは無いというのは俺も同意できるところだ。創業家の一員でもあり高卒採用の利点を良く知る俺が適任というのも良く解る。


 つまり俺が断れば、社長の手を煩わせてしまうということで脅しているのだ。


 どう考えても断れない。でも断らなければ、加納ホールディングスに取り込まれてしまうだろう。いや、それも1つの手段かもしれない。


「それで、俺にどの程度の権限を持たせて頂けるんですか?」


「ヤル気になったようじゃの。もちろん全権じゃよ。」


「全権って、俺が株式会社カノンを売ってしまうとは思わないんですか?」


「もちろん、それも選択肢の一つじゃわい。ワシも何度、売ろうと思ったことか。」


 出来ないと思っているな。加納ホールディングスの企業価値の大半を占める株式会社カノンを売ってしまえば株価は急落し、企業として立ちゆかなくなる可能性大なのだ。おいそれと出来ることじゃないのは解っている。


「俺ひとりでは到底無理です。」


 これは嘘だ。有償だが渚佑子さん経由で調査依頼は出せることになっている。だが祖父の意図することも知っておきたい。双方の情報をつき合わせて、最善の方法で実施すればいいのだ。


「解っておる。補佐をつけよう。何、心配要らん君も良く知る人物じゃて。」


 1人の男性が障子を開けて入ってきた。


「なんだ。驚かないじゃな。」


「いえ声も出せないくらい驚いているんです。」


 目の前にはユウタが居たのだ。もちろん、この辺りも事前に調査済みである。祖父について調べてもらったときに一族の家系図と共に詳細な人物像が調査結果として返ってきたのである。


「改めてよろしく。存分に扱き使ってくれるか。」


「でもいいの? ユウタのお父さんって、カノンの役員じゃ。」


「どうしてそれを・・・。」


「順子先生に聞いたのよ。」


 これは本当だ。順子さんに家族構成を聞いた際に嬉々として話してくれたのだ。既に知っていることとつき合わせてある。家族にしか解らない点も多かったが、やや・・・いや・・・大分、順子さんの見栄や偏見が入っていたかもしれない。


「そうか。僕はキミのナイトだ。それはいかなる場所でも変わらないさ。」


 参ったな。こんな場面でもこのセリフが出てくるんだ。俺が女だったら惚れているところだ。


「お願いします。それでお祖父さま、報酬の件ですが経営を勉強するために、自由にできる会社を幾つか頂いても構いませんか。」


「おおっ。もちろんだとも。」


 俺は次々と名前を挙げていく。元々そう簡単に次期会長を諦めるとは思わなかった俺は、お茶を濁そうとカノングループで経営できそうな会社を幾つか見繕ってあったのだ。


「なるほど堅実な選択だの。」


 やだな。見透かされている。高校生の俺が全く知らない分野の会社を経営できるはずもないのだ。自ずと選択肢は狭まっている。


 例えば、『ユニセクシアル』という衣料品ブランド。フリース素材を使った衣料品で有名だ。元々、男女共にほぼデザインが共通なものが使われているのだが、それを1歩進めて女性の骨格を持ったトランスジェンダーのFTMや男性の骨格をもったMTFの衣料品を開発させようと思っている。


 実際には通販サイトにFTM用に男性向けの色合い、MTF用に女性向けの色合いの商品を置いたり、肩パッドの位置を変更できるようにするだけでも体形に合う衣料品の選択肢が広がるはずなのだ。


 他にも『KC』という化粧品ブランド。女装さんの中には、アトピーやニキビ痕で悩みメイクを始めた男性も多いのだが、そういう人がハマるのが化粧品でさらなる肌荒れを起こすことなのだ。それで女装をやめた人間も多い。


 そういう人々が長く続けられる化粧品を作りたい。既存の化粧品メーカーにもあることはあるのだがプチプラと呼ばれる安価な化粧品ではないため、手を出しづらいのが現状だ。それに女性の肌向けに作られている分、化粧品の色合いも微妙に違ってくるはずなのだ。

5話ほどは確約できます(笑)

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