22.オネエでも小悪魔というようです
「トモトモ。何をやってるの。アタシも混ぜて。」
コレコレ。どんな状態でも女の子たちの中に割って入れる。これこそがオネエの特権だ。男の子たちの中だと罵倒されて終わりだがな。
「トモヒロ君・・・何よ。その女の味方する気?」
意外にも相手の女の子は俺の名前を知っていた。俺も有名になったもんだ。上条さんはブスッとしたままだ。男の子に愛想良くしろとは言わないけど、女の子たちとは笑顔を見せて仲良くしたらいいのにと思うのはお節介だろうな。
「なになーに。友だちの男の子がトモトモに振られた? それじゃあ、普通すぎるわね。」
そう言えば最近は聞かなくなったな。前回の告白タイムにタツヤが出てきたのが拙かったのか。
「そんなことじゃないわよ。その女がトモヒロ君が高柳クンにオネエをやらされているって言いふらしていると聞いたのよ。」
なんだ俺が有名になったわけじゃなく噂のネタになっていただけか。ガッカリだ。
「又聞きなのね。もうそんなに噂になっているのねえ。でもそれ本当のことだから。ユウタの提案というのは確かね。もちろんアタシは楽しんでやっているけど。別に口止めしてないから、どんどん広めてくれると嬉しいな。」
結構、周り人間には言っているつもりだったが上条さんしか知らない情報に見えたのかもしれない。
皆、信じてくれないから言いふらしてくれないのかな。それでも少しずつ浸透してきているのだろう。
「ええっ。そうなの。」
学年カーストのトップの社会的信用というものを侮っていたかもしれない。傍目からはユウタがそんな酷いことをするとは思えないらしい。
「アタシはユウタの愛人でも何でも無いし、女の子が好きなの。誤解しないでね。ここにいる皆はユウタが好きなのよね。アタシで良かったらラブレターも取り次ぐわよ。」
「私はトモヒロ君がいい!」
その場の勢いなのか。集団で上条さんに詰め寄ったことが後ろめたいのか。好きだと言ってくれる子もいた。
「ええっ。アリガト。オネエのアタシがいいなんて奇特な人ね。もちろんアタシも絶賛募集中よ。売れ残って腐らないうちに貰ってね。」
その場に笑いが広がる。
今まで存在だけで笑いを取っていたから、その他の要素で笑いを取るのは大変だ。今度からスベってもヒデタカのウケ狙い発言には笑ってあげよう。
「じゃあ友だちからお願いします。」
目の前の女の子からSNSのバーコードを差し出された。本気かどうかは解らないが友だちにはなりたいらしい。
「うん。アタシの方こそ、よろしくね。トモトモ。とばっちり、ごめんなさいね。」
スマートフォンのSNSアプリに登録し、上条さんに向き直る。
「どうして・・・どうして、トモヒロ君が謝るのよ!」
上条さんはそう言い捨てると何処かに行ってしまった。
どうも本当に言いふらしていたようだ。どういう意図だったのだろう。俺を孤立させようとでもしていたのだろうか。
「・・・私、やっぱり上条さん嫌い。」
まあそう言うよな。全然周りが見えていないのに画策しようなんて出来るわけが無いと思うんだがな。
「まあ、そう言わないであげて。アタシが思うに男の子で沢山怖い目にあっているのでしょうね。味方とはいわないけど、敵にはならないであげるかな。逃げ場が無くなっちゃうでしょ。」
自ら自分を追い詰めているような気がする。何があって、そんなことになったのだろうか。まあ俺には関係無いのだろうけど。
「私もトモヒロ君と友だちになりたい!」「私も。」「私も。」
上条さんの評価が下がった分だけ俺の評価が上がったようで、その場にいた女の子たち全員とSNSを交換した。これってモテているというのだろうか。なんか違う気がする。
「あれっ順子先生。なんでこんなところに隠れているの?」
その場で女の子たちと別れて中庭から校舎に戻ろうと角を曲がったところに順子さんがいたのだ。
「いいわね。おモテになって。あの女の子たちと付き合うの?」
全部見ていたらしい。でも嫌みタラタラなのは戴けない。
「どうしよっかな。」
とりあえず保留ということで、お願いします。順子さんの目は怖くて見れないけど。
「ええっ。だって・・・・・・ごめんなさい。どうして私って、こんなに嫉妬深いんだろ。」
思ってもみない答えだったのだろう。そうそうフォローばかりはしてあげないぞ。
「それはアタシを深く愛しているからでしょ。」
「解っ・・・。」
二の句が継げなくなったらしい。口をパクパクしている。
「相手はトモトモとはいえ集団で囲むような女の子たちと本気で付き合わないわよ。でも友だちくらいはいいでしょ。アタシだって逃げ場所が欲しいし。」
「・・・・・・ああっ・・・どっちにも動けないじゃない。」
順子さんに睨み付けられてしまった。
「もっと寛容になって、オネエの友だちにまで嫉妬していたら身体が持たないわよ。」
オネエと友だちならなりたいという女の子は多そうだからな。全てをいちいち断っていたら、こっちの身が持たない。そこそこの付き合いをすればいいのだ。
「それはチーちゃんが逃げようとするからでしょ。」
「そうかな。アタシは我慢強いと思うわよ。普通の男の子だったら、とっくの昔に逃げ出していたと思うの。イマイチ自分の限界が解らないのよね。どっかで・・・プツンというのだろうけど。もっと限界まで試してみる?」
気が弱い男の子ならまだしも普通の男性なら女性に無理やりエッチされた時点で逃げ出す。変なところでプライドがあるからな。その点、俺はオネエになったときにくだらないプライドは溝に捨てているのだ。ちょっと拾ってこなきゃいけないかな。
「もう・・・小悪魔なんだから。」
チビ悪魔という意味じゃないだろうな。流石に怒るぞ。
「それってオネエに使う言葉なの?」
「知らないわよ。」




