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大鵜取防衛戦⑤ ~退却~

5月11日 1100時 

「大鵜取はまだ落ちんのか!?」

ロシア帝国陸軍 ポロナイスク前線司令部にロゲルスキーの声が響く。

「ですが閣下。日本軍の迎撃は厳しく、のままでは被害が増えるのみであります。」

「一部陣地を落としたのでは無かったのか!?」

「落ちる直前に、日本軍の増援部隊が攻撃を開始。グーネル大尉率いる第5攻撃隊が壊滅。生存者は200名程です。」

副官の報告に、将軍は目をつぶる。

「…………………………殺せ。」

「はっ?」

「生存者を殺せ。陣地を落とせず、生きて帰ってくるとこうなると見せしめにしろ!」

「将軍!優勢なる敵と交戦した、勇気ある戦士達を殺せと仰るのですか!?」

「ああそうだ!我々は早期に此処を落とさねばならん。そして、進まなければならないっ!」

そして、水を飲むと、こう続けた。

「我々には時間がない。兵も1万5000を切ろうとしている。であるならば…………」

「そのために!?

戦いでも無い中で、味方に殺させろというのですか!?」

「そうだ!分かったら始めろ!!今すぐにだ!!!」

目を見開き、机を叩きながら怒鳴るロゲルスキー。

「………………了解いたしました。直ちに実行します。」

こうなってしまっては、「上」からの命を「忠実」に実行するのみ。彼が生き残るにはそれしか無いのだから。


1130時

ロシア帝国陸軍第5攻撃隊 残存兵無し。

全滅





1135時

ポロナイスク冲10浬を5隻の船が進んでいた。

4隻は木造。そして1隻は鋼鉄艦だ。

「地点まで、残り45分。」

「乗挺用意!同時に砲撃科も用意せよっ!」

「乗挺用意!」

「砲撃科弾薬班!弾は何処だ!早く持ってこい!!」

「1150大隊乗挺~~!!」

「後部ハッチ起動確認よしっ!!」

「全砲、旋回確認完了!」

「海軍艦、先行!!」

「好きにさせろ!ただし、間違っても俺らを撃たないように。とな!!それと、後ろのロシア艦も見張ってろよ!」

「1151大隊乗挺開始~!」



「地点まで残り30分!」

「1151大隊の乗挺完了!!288連隊全兵乗挺完了!」

「海軍艦が砲撃を開始!」

「こちらも攻撃を開始する!大体で構わん!敵陣地を破壊せよ!」

「砲撃よぉーい!」

砲長の声と共に、前部榴弾砲6門が仰角を調整する。

数秒後には調整が完了し、弾が装填される。

「仰角よしっ!装填よしっ!射撃可能!」

「撃て!」

そして6門の榴弾砲が火を吹いた。









「一体どういうことだ!!退却命令だと!?」

またも机を叩きながら怒鳴るロゲルスキー。

「モスクワ陸軍司令部からの命令であります。」

「そんなことは分かっている!何故、樺太全土から撤退せねばならんのだ!」


「樺太攻略軍は直ちに退却。モスクワ帝都防衛基地に集結せよ。」


「まさか、帝都が狙われたか?」

「…………………………」

「まあいい。命令ならばやるしかなかろう。全軍!退却する!!間もなく船が来るはずだ。それまでに全ての準備を終わらせろ!戦闘中の部隊の退却もだ!」

「緊急事態です!」

「一体何なんだ!」

またまた机を叩くロゲルスキー。

バキッ!

「あっ……………………まぁ。いいだろう。一体何だね?」

「(机壊したのは良いのか?)沖合から木造船4隻と謎の船1隻が接近しています。」

「船?退却用ではないな。この人数に対して少なすぎる。と、なると…………」

「失礼します!!」

「さっきから何なんだね!!!」

立ち上がって椅子を床に叩きつけるロゲルスキー。

「不明船の背後にロシア国旗を掲げた船がいます!!」

「ては、日本軍に勝利したと言うことか!!素晴らしい!」

しかし、兵は顔を落として言った。

「いえ…………ロシア国旗と共に白旗を掲げています。」

「………………はあ?白旗だと?」

「はい。あれは間違いありません。白旗でした。」

「ではたった数隻の船に負けたというのか!?」

「そういうことなのでは………………」

「くっ…………兵に戦闘の用意をさせよ!戦だ!」








1145時

「流石にこれはやりすぎたか?」

「降伏するかどうかの賭けですからね。降伏するならよし。しないなら殺す。それだけです。というか、そもそも、強襲上陸だと殺し合いですからね。」

「降伏してくれれば楽なんだが。そうは上手くはいかなかったか。」

「降伏勧告も無しに降伏はしないでしょう。」

「それもそうか。で、勧告はするか?」

敷香上陸隊隊長兼特殊船船長 大友 義就(よしなり)中将は参謀に問うた。

「どうやって勧告を行うのですか?既に我々も砲撃しているのですよ?」

正論だった。

「なら、放ってほくか。今に降伏するはめになるだろうし……」

義就の言葉とほぼ同時に、敷香の司令部に白旗が翻った。

「………………フラグだったか?」

「偶然でしょう。」


何はともあれ、敷香司令部が降伏。大鵜取攻防戦は終了した。



1500時

迅速かつ完全な撤退を条件に、ロシア軍は撤退を開始。1800には乗船が完了し、次々に敷香を出航する。これらの船は、一度大鵜取に寄り、戦闘中の残存兵を回収し、ロシア本土に帰還する。また、「甲」は敷香冲にて待機し、海軍輸送船の物資到着を待つ。物資到着後は、敷香守備の290連隊の増強(に見せかけた実質的兵数減少分の回復)用に1151大隊を残し、敷香上陸隊を載せ、仙台に帰還する予定だ。

また、290連隊の敷香到着は明後日の予定だ。




遅い?

仕方ないさ。徒歩だもの…………






5月13日


ロシア艦艇は、大鵜取の残存兵の回収を。そして、290連隊は、敗残兵を捜索しつつ北上。13日の昼過ぎに敷香上陸隊司令部に到着した。

(大鵜取には大泊基地歩兵71師団284連隊を移駐。)

これにより、1800より「甲」への乗船を開始。2030に無事、敷香を出、仙台へと向かった。ちなみに、歩兵用糧食弾薬は択捉の74師団から回されている。

それと、つい先日決まったことだが、陸軍の「1基地に歩兵ないし騎兵2個師団の配備」を停止し、1個師団のみで良いことに変更された。これにより、日本国内に計30程度しか無かった基地が70近くまで増やされることになった。

あっ。そうそう。前に様々な地方から北方に移駐していた部隊は、全て元の基地に戻されている。大半はまた移動になるが…………

装甲車とトラックの量産も進まないし……思い通りには行かんもんだねぇ………………




5月14日

鉄道敷設作業が再開。陸軍が先行し、その後を作業員が敷設しながら進むことになっている。敷香到着は2ヶ月後だが、敗残兵が居るかどうかも分からないので、予定通り進むのやら……


また、南樺太の石炭は試験採掘に漕ぎ着けたんだが、炭鉱まで鉄道通さなければいけないわ、警備の人間送らなきゃいけないわでそんなに稼働してないのが現状だ。石炭に困ってるわけでもないし、というか蝦夷地(北海道)の資源採掘とかの方が楽そう…………

気づくとクリスマスが終わっていた件について。

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