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大鵜取防衛戦② ~陸軍省~

1700時


「…………………………相変わらず何も無い部屋だな。」

「物を置けるほど広くないってのもあるがな。」

いや、一応大臣室なんだがな。

「まぁいい。そんな話より…………」

「これの話だろ?」

そう言って、俺は鞄に入っていた書類を手渡した。

「……………………結局、追い返せたのは追い返したが………………」

長谷川に続けるように、俺も口を開く。

「柳生は柳生だった。って訳だ。」

「まったく………………名字を野牛に変えてやろうか…………」

ゆっくりとお茶を淹れながら、長谷川が言った。

「いいんじゃないか?」

「止めろ。俺が斬られる。」

長谷川が笑いながら茶と菓子を出してきた。

「飯前だぜ?」

「大丈夫さ。」

長谷川の出してきたものが、どっからどう見てもスコーンにしか見えないんだが、大丈夫か…………?

「まあ…………食うか。」

スコーン的な何かを口に運ぶ。

「…………………………………………これ、スコーンだろ?」

「スコーンだな。」

「お前、よく飯前にこんなの食えるな…………」

「甘いものは別腹さ。」

「お前は女か……………………」

「何バカなことを…………俺は男だ。」

「だから例えだ。ここで女なんぞ言いやがったら、こっから放り出してるさ。」

窓を指差しながら言う。

「おー。怖い怖い。」

「言ってろ。」

斯く言う俺もスコーンを食べる。

「おっ。紅茶か。それもミルクティーか。」

「ああ。英領セイロンのルフナだ。これでも高かったんだぞ?100g3000円。」

「お前………………ほんと紅茶にだけは甘いよな。」

「美味いんだからしょうがない。まあ、ある種の趣味だな。」

「高い趣味なこった………………」

やっぱ、大臣樣は金持ちだな。俺みたいな諜報部と違って……

「………………ふぅ~~………………」

「で、どうすんだ?北方の辻大将からも増援の話が云々とか聞いたぞ。」

「ああ。あれな。仕方ないから、「甲」の実験がてら送り込むさ。2500しか載らないなら、仙台の師団から引っこ抜いても大丈夫だろ。」

「まあ………………連隊規模だし大丈夫だとは思うが…………」

「大丈夫だ。もう準備は出来てるから、明日には仙台を出て北上だ。」

「手際いいな…………」

「一応、それが仕事だからな。」

コンコン

「今日はよく来るな。

入れ。」

「失礼します!

あっ、大佐!こんな所に居たんですか!?何処に行くのかぐらい、先に伝えておいて下さい!」

うわっ。石井少尉か。また余計な奴に…………

「…………次からな…………」

「いつもそれで逃げてるじゃないですか!」

「おいおい…………で、何の用だ?」

「はっ。陸軍大臣への直接入電!中は見ずに、大臣に直接手渡せとのことであります!!」

「ご苦労。下がっていいぞ。」

「はっ。」

………………ガチャン

「行き先くらいちゃんと伝えろよ。小原(おはら)諜報部長さん。」

「遅刻常習犯のお前に言われたく無いがな。」

「……………………じゃ、開けるか。」

逃げたな。

「俺が居てもいいのか?」

「諜報部長は知ってた方がいいだろうと思ってな。」

「信用しすぎだ。」

「それに足る人物だと思ってるからいいんだよ。」

そう言いながら、紙を開けた。

「……………………………………」

「無言で手渡すんじゃねぇよ。それに無表情だと不審だろうが。」

と、言いつつも勿論受けとる。

「…………………………………………こりゃ…………」

「ちょっと、会議室に移動するか。」

「他は呼ばなくていいのか?」

「これだけの情報じゃ何も出来ないからな。また後で呼ぶさ。」

まったく…………諜報部員と2人きりで何を話すんだか………………



1800時

陸軍省第3会議室

「「……………………………………」」

「結構致命的だな。これ。」

「…………軍送っても問題ないんじゃないか?ここまでの状況ならな。」

「いや、俺が許可しても、他が許可しないんだよ。今まで戦力の逐一投入を止めろと言ってきたんだが…………さっきの「甲」派遣と言い、どうも、陸軍上層部には送り込む兵数を調整したがる節があるんだよな…………」

「最低限の兵数ってか……………………質で補えるとでも思ってるんだろうが、そんなに甘くないぞこの世界は…………ってか、陸軍大臣が言って聞かないのも問題だろ。」

まあ、上層部のことだから、大体どんな言い訳をするかは思い付く。

「確かにそうなんだがな………………

「指揮を執るのは我々だ。」

とか抜かしたジジイ共がいてな。」

やっぱりか。頭の固いお偉いさん方は、何かある度にこの言い訳を使うからな………………さすがに慣れた…………

「なんだ。!お前も言われてたか。」

「諜報部長級になると、上層部とやりあうことも増えたからな。しっかし…………なぁ…………まさか陸軍大臣にまで言ってるとは………………」

「上樣は50を越えたジジイども。それに対してこっちは30代。顰蹙買うのも無理ないさ。」

「いや、顰蹙買う原因ははお前の発言だと思うが…………」

前の大臣の時は良かったんだが、歯に着せぬ発言が、今の上層部は嫌いなそうだ。一応、こいつの言ってることは真実で正しいんだが…………

「安心しろ。今、ジジイ共の対策を練ってるところだ。遅くとも来年には田舎に行ってることになるだろ。」

「その前にお前が田舎に行かんようにな。」

「ハハハ。そんなに甘くねぇよ。俺は。」

こいつ………………

「1720年

7月7日」

「おい…………それは…………」

「田村…………」

「待て!話せば分かる!!待ってくれ!!」

「……………………真珠(まみ)。」

「グハッ!!」

「さあ、詰めが甘いのはどっちかな?」

「……………………俺は甘くない。」

「おいおい何言ってんだ?尻拭いしたのは俺だぜ?」

「悪いのはあの日の天気だ!天気さえ良ければ何も起きなかったはずだ!!!」

「長谷川よぉ。往生際が悪いぜ…………諦めて認めろよ。なっ?女にあげる物を落として俺と一緒に探しまくった挙げ句、見つからなくて謝罪に追い込まれた長谷川さん?

それに、天気は晴れだぜ?」

「うわぁぁぁああああ!!!止めろ!これ以上俺の精神を傷つけるな!!」

「甘いよな?」

「はい。甘いです………………」






勝ったな。

諸事情により、次回更新を12月11日金曜日にします。

申し訳ありません。

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