エピローグ
翌朝病院で目を覚ましたクララは、強盗ビリーの死体が見つかったことをマルメガネに教えられた。
駆けつけた教会の職員が持ち物を調べたところ「ふくろ」の中にはマキンタの腕も入っており、これを繋げば彼の腕も治るという。
「───それで……麻耶さんは無事でしょうか?」
マルメガネの話が一通り終わったところでクララは聞き返す。
話を遮らないだけ待ってから聞いたとも言えるクララに対し、フッと微笑んでもったいぶるマルメガネ。
この時点で答えは丸わかりなのだが、それをぶち壊したのは摩耶本人だった。
「そのことなら……」
「やっほー! クララちゃんもう起きた?」
「ま、摩耶さん。もう動いても平気なのですか?」
大きな声で元気よくクララの病室に入ってきた麻耶は、仕込みを潰されてゴニョゴニョとしているのマルメガネを無視してクララに前に立った。
昨夜の傷を見ていればクララでなくとも驚くほどに元気な摩耶には当然突っ込まざるを得ない。
「この通りウチはもう平気ですよ。この体になったおかげで頑丈だし、治療さえしてもらえればすぐに回復できるのは便利ですって」
「麻耶さんでもこの様子ということは……もしやマキンタさんも?」
「流石にあの彼が起き出すなんてすぐには無理だな。ゲームキャラ化していなければあの腕はくっつかなかっただろうし、傷の影響で衰弱しきっている。この体に詳しいNPCの医者が言うには体内エーテル量が低下しているそうだ」
「クララも見た目は平気そうだけど同じような状態だってさ。だから無理せずこのまま休んでいなよ」
「うん」
麻耶の言うようにクララの体内エーテルは減少していた。
これはビリーとの戦いだけではなく、ネオスドリフトになってからの短い期間に受けたストレスで受けた心の傷が彼女のエーテルを知らぬうちにこぼれさせていた。
この傷はいずれ癒える。だが今は休むしかない。
麻耶の言葉に頷いたクララが再び眠りにつき、次に目を覚ましたのは翌日の夜。
すっかりお腹が空いているのだが不思議と快調である。
これは睡眠によりエーテルが回復したからに他ならないの。
「おはようクララ」
目覚めた彼女の枕元には長らく遠征に出ていたパウロがいた。
帰還した彼はクララが倒れたのを知り、自分も疲れているのを押して見舞いに来ていたわけだ。
「その様子だともう平気そうだね。ずっと寝ていてお腹が空いただろう。何か食べに行かないか?」
最初は寝ぼけていたが少しして時間を見たクララは苦笑い。食事に行くのには遅い時間だからだ。
「もうこの時間じゃ出歩けませんよ。それよりも今度はパウロさんが倒れそうじゃないですか」
「私なら平気さ。これでも大人だからね」
実際パウロは酷い顔ではあったのだが、クララのように心に傷を負わなかったのは元の世界での経験があってこそか。
この時点ではまだヤサトの街やハイジのその後をクララは知らない。
知れば気に病みそうなほど治りかけの心が傷だらけのパウロを冷たく眺めていた。
これから自分はどうなるのか。
恋人とは再開できるのか。
そしてとりあえずこの時間から空腹を満たすのにはどうすればよいか。
ぎゅるぎゅるとお腹が鳴る音に赤面したクララの顔にパウロは微笑んでいた。




