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増築と手探りの船出

 デバイスのメニュー欄に定期販売という項目が増えた。

 選択して開くと、クリエさんとアルビダさんっぽい似顔絵のアイコンと、納品する品目、数量が表示される。

 ある程度の定期購入回数分は中にストックできるようなので、忘れないようにパースニップ・ビートと油の在庫を入れられるだけ入れておく。

 ログインできるときはずっとパースニップを育ててるからみちみちになるまで突っ込んでも大丈夫。


 プロバさんの露店でお金を使ったけれど、半日で収穫できるパースニップたちのお陰で懐にはかなりの余裕がある。

 なので、家の増築をしてしまおうかと思う。

 2回目の増築で野菜保管庫という施設が増えるようで、初めてのクエストで人に作物を譲ることもあると知った私は、普段から作物を備蓄することを考え始めたからだ。


 1回目はシステムキッチンが業務用みたいな厨房になったり、各施設が上位互換される感じだった。それでも100万レントはかかったけれど。

 2回目の増築は200万レント。

 念願の野菜保管庫は出荷しないまま放置しておくと品質が下がっていく作物の品質を保持しておける結構重要な保管庫だ。

 見た目だけだと思うけれど、輸出用コンテナの内部みたいな内装でちょっと面白い。


 あと実験室という部屋ができて種マシンと作物加工機は実験室の壁に収納された。

 さようなら、唐箕っぽい見た目の種マシン。


 そういえば種マシンの品種改良に「触媒」を追加する機能がついていた。

 品種改良を行う際に加えた触媒によって改良できる項目が増えたりするようだ。

 現在は触媒になるような材料をなにも持っていないから試すことはできないけれど。


 ショップでなにか触媒になりそうなものを探して買ってもいいけれど、改良後の品質は種の品質と触媒の品質を足して割る感じらしいから、慎重に選ばないとね。



 ゲーム内のお知らせを見るといつの間にか始まっていつの間にか終わっていたモンスター討伐イベントの結果発表と次回イベントの予告がある。

 優勝したプレイヤーさんの名前に見覚えがあるけど、よくジュースを買ってくれる人かもしれない。取引画面は名前情報しかないから同名の人かもしれないけれど。


 次回イベントはバレンタイン料理祭……生産系イベントだけど農民ギルドの人には縁が薄そう。

 でも投票で1位になったお菓子は投票者全員に後日配布とか書いてあるのでちょっと気になる。

 ゲーム内でまだ食べたこと無いお菓子を食べてみたいし投票期間が始まったら一応チェックしておこう。



 そろそろ1月も終わりに近付いて、私がエルムジカの世界に飛び込んでから一月が経とうとしている。

 初日がなんだか遠い昔のことのように感じてしまうのが不思議だ。


 ゲーム内時間だと3か月以上経ってるから、その辺りで感覚のずれがあるのかな。

 きっと2月になっても色々な出来事があるのだろうな。




「年末に石岡ちゃんが出してた新商品コンペ、無事に通ったよ」


 会議から戻ってきた三浦先輩に言われて、どんな新商品を出していたっけ? と首をかしげる。

 先月ものすごく頑張った思い出はあるのだけど、記憶力ちゃんと仕事して。


 あ、思い出した。「眠りの実験室シリーズ」だ。

 過去の社内資料をかなり掘り起こして、自分でも長い間実験したのに、どうして忘れるかな。


 そして通ったということは……


「おめでとう。石岡ちゃんが入社して初めてのメインプロジェクトだ」


「……私に務まるでしょうか?」


「メサルティムのプロジェクトと並行して、遅くまで調べ物していたのを私もみんなも知ってるよ。一緒にコンペ出してた他の子たちもプロジェクトに加わるから舵取りが大変だと思うけれど、見守っているからね」


 人をまとめて導く力が私にあるのか不安になる。

 初めてのメインプロジェクトだからいつも以上の自分を出さなきゃいけない。

 でもそれが私にできるだろうか?


 なんでも上手くこなす三浦先輩の後ろにずっとついていたから、いざ自分で前に出るとなると怖くて仕方ない。

 きっと私は先輩みたいなスーパーウーマンにはなれないから。



 ……ふと、先日会った湖出さんの顔が浮かぶ。

 あの人も業界の重鎮ではなく、私ともそんなに歳が離れていないように見えたけれど、うちとは比べものにならないほどの大きなプロジェクトの先頭に立って現在進行形でチームを導いている。


 元々の能力に違いはあると思うけれど、あの姿を目指して学ぶことはできないだろうか。

 まだ一度しか会ってないから、身近な先輩と違い客観的に見ることができる気がする。


 今度また仕事で会うわけだから、そのときにじっくり観察させてもらおう。



 だけどその日のうちに、インタビューするのはエルムジカの中で、と先方から連絡がきたので、私は仮目標を早々に捨てることにした。


 変に気負っても仕方ない。

 やるべきことに全力で取り込むしかない。

 いつも通りマイペースを乱さないように、こつこつやっていきましょう。

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