スローライフ緊急準備。
その日の夜、ジンは寝る前に試作の鏃の作成を始める。
リーナとリンダの買い込んだ矢を1本取り出し
矢先の鏃を外すし『銀細工』スキルで手製の鏃を作成し付け替える。
鏃の形は外した鉄製の物に似せて作ってみたが
『付加魔法』で『魔法弾』を付加するから形にこだわる必要あるのかと思い
細長い丸形にし爪の先ほどの大きさの銀製の鏃にした。
次に『付加魔法』で『魔法弾』を付加する。
『銀細工』から『付加魔法』までの流れを数分で終了し
「見た目は只の『銀矢』っぽいな。
鏃が尖って無いから攻撃力は無さそうだな・・・。」
ジンの細工作業を見ていたチコとリコは銀の塊が姿を変え
その後魔法を付加した工程を見ていたのだが
「あの『銀細工』も『付加魔法』も数分で行使できるものなんですか?」
「綺麗な銀矢です。」
「あまり複雑な形にしても作成するのが大変だし
シンプルな形なら作り上げるのも時短出来ると思ったんだけど・・・?」
「銀矢には『魔法弾』が付加してあるんですか?」
「試しに『魔法弾』Lv1を10本に『魔法弾』Lv2を10本の20本作るつもりだよ。
魔法Lvで性能に違いがあるかも知りたいしね。」
「本当は私達もジン兄さんの手伝いをしたいんですが・・・。」
「『銀細工』スキルは修得してないからね・・・。」
「チコちゃんとリコちゃんには『開拓村』で出来るだけ料理を作って貰いたい。」
「『串焼き』は作り続けられるけど『野菜スープ』とか『煮込みスープ』は
鍋が無くなれば調理不可ですけど・・・・どうします?」
「薄焼きパンも小麦粉がある分だけ調理してますが
小麦粉がある分だけ焼上げていいの?」
「鍋がある分だけスープを調理して欲しいかな。
薄焼きパンを30枚焼けば十分かな。」
「それなら明日の午前中には調理完了出来そうです。」
「私も3薄焼きパン30枚なら午前中で終わりそうです。」
「それなら午後から薬草採取とポーション作成をお願いしていいかな?
魔力回復ポーションを多めに作成して貰おうかな。」
「上位冒険者のパーティーに届ける分ですね。」
「私達2人でですか?」
「『開拓村』の周囲に大蜥蜴や黒犬がいなくなったと言っても2人では危険だから
ソラやシロに同行して貰おうかな。」
クロの甲羅の上で丸くなって寝ていたソラとシロは『『はい~』』と返事をした。
3日後までやる事が山済みなので用意する物や準備する事が多すぎる。
「銀矢の試射は明日するとして今日はもう寝よう。」
「ん?鏃作らなくていいの?」
「もう、寝るの?」
「少し疲れたし続きは朝錬の時にでも完成させるよ。」
ジンはそう言いクロの隣に横になるのだった。
チコとリコは「寝ましょうか。」といいながらジンの腕に抱きつきながら
「ジン兄さん、おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」
「おやすみなさい・・・。」
今日は色々な事があったのでジンは勿論の事
チコやリコも数分で眠りにつくのだった。
焚き火の部屋ではリーナとリンダ・リスター・リムルの4人は
果実酒を飲みながら地図と睨めっこしていた。
上位冒険者の陣地と『開拓村』の位置で黒飛蝗との戦闘の激しさが変わる。
「街へ向かって行くなら『開拓村』への被害は無いと思うけど・・・。」
「『開拓村』の畑や果樹園に向かう事になれば・・・危険度が増しますね。」
「クロさんが魔法で護ると言う話でしたが?」
「100mx100mの『開拓村』を護るほどの範囲魔法ですか・・・。」
「そういえばクロさんは勿論ですが
ソラさんやシロさんの魔法はどうなんですか?」
「少なくとも魔法で大蜥蜴や黒犬を倒す実力はある。」
「どちらも群れを相手に無傷で倒してましたね・・・。
しかも、一撃で倒していた感じがしましたね。」
「ギルドへの納品を一番に考えて急所への一撃。
ギルドへの納品報酬は高額でしたしね。」
「それだけ実力があると言う事でしょ。」
少なくともソラとシロはリンダに言わせれば中堅冒険者よりも強いという認識だった。
クロは果樹園や畑でまったりしている事が多く戦う姿を見てはいなかったが
ジンのテイムしている黒亀が普通な訳が無いと考えていた。
「そう言えば明日は『魔法付加矢』の試射をするけど誰が撃つの?」
「リスターとリムルの二人でいいんじゃない?」
「弓スキルでの試射ですね。」
「本当に鏃に魔法が付加出来れば『天災』に抗う事が出来ます。」
「数千の軍勢ですからね・・・。」
「ランクAのパーティーが3組の参加してるし
ランクBでも4組参加ですか・・・過剰戦力な気もしますが?」
「数千を相手では難しいでしょうね。
無理だと感じたら退避して欲しいものです。」
「黒飛蝗の襲来とはそれ程なんですか?」
「遠目からでは黒い煙のように見えるらしいです。」
「黒い煙ですか・・・それが一斉に向かってきます。
射程距離ギリギリから広範囲魔法を何発撃てるかで勝敗が決まります。」
「黒飛蝗の飛翔速度は?」
「人が走る速度と同じらしいですが・・・
群れで集団で迫ると言う事で考えているより速い速度らしいです。」
「リーナさんのその情報はどこからきたものなの?」
「ギルドの資料室に記載されてあった過去の『黒飛蝗襲来』の資料からです。
『黒飛蝗襲来』に参加し生き残った冒険者の証言らしいので間違いないかと・・・。」
「生き残ったですか・・・やはり参加した冒険者の生存率は低かったと?」
「はい・・・、倒された冒険者と言うより喰い殺された冒険者が多くいて
生き残った冒険者は建物の潰された空間に運よく逃げ延びた感じで書かれてましたね。」
「それでは戦った冒険者は全滅ですか?」
「建物に逃げ込んで助かった冒険者や『土魔法』で地下へ逃げた冒険者はいたらしいです。」
「逃げ場を作る必要があると?」
「そうです、上位冒険者達もその事を知っているから陣地には必ず地下室を作ります。
もしくは頑丈に陣地を作りますが・・・こればかりは冒険者達の自主性に任せるしか。」
上位冒険者の陣地と『開拓村』では距離が離れすぎていて
ここへ逃げ込む事は無理だろう・・・。
それに自分達の実力では上位冒険者達を手助けをするだけの実力も無い。
逆に足手まといになる実力なのでリンダ達はアリスやルカ達を護りきろうと思うのだった。
同じ頃『草原の風』のアリス達は自分達の部屋で黒飛蝗の襲来について話し合いをしていた。
初期魔法を修得をしていた彼女たちだったが黒飛蝗の集団に向かう事は死にに逝く者と思い
ジンに言われた野菜の収穫を頑張るつもりでいた。
「葉野菜の収穫はギリギリ間に合いますね。」
「ジャガイモは早生種から収穫可能だけど・・・。」
「トマトやナスは今日で終わったし・・・。」
「ダイコンやニンジンとか根野菜は収穫までもう少しですね。」
「サラダの材料を優先的に採取しましょうか。」
「それがいいですね。チコさんとリコさんに調理してもらえれば嬉しいです。」
「ジャガイモも初収穫ですし、食卓が豊かになりますね。」
「そうだね、冒険者になってからの方が美味しいものを食べられるとは・・・。」
「野菜の収穫も大事だけど薬草採取も大事なんだけど・・・どうする?」
「ルカさん達にお願いして野菜収穫を早めに終わらせた方がいいかな?」
「んー、明日ジンさんと相談しましょ。」
「それがいいかも。」
「数日後には黒飛蝗が来るし忙しすぎだな。」
「ここに来なかったらどうなっていたか考えると怖いけどね。」
「それはいえてる。」
「ただの冒険者に対抗できる状況じゃないしね・・・。」
「そう考えるとリーナさんに感謝するしかないね。」
「それとジンさん達にね。」
アリスの一言で『草原の風』の四人がコクコクと頷くのだった。
ルカ達五人も『草原の風』の四人と同じく自分達の部屋で同じく相談をしていた。
黒飛蝗襲来の知らせはルカ達には衝撃の事柄だったが
東方からやってくると聞き自分らの山村や農村が心配になったが
街より西部にあると言う事で上冒険者達が無事に倒せば問題無いと思っていた。
「明日からも野菜の収穫をするとして・・・薬草採取はいいのかな?」
「まずは食料の確保が大事なんじゃないの?」
「確かに・・・黒飛蝗の襲来で東部の方では食糧不足になってるだろうしね。」
「ここでの食糧で賄えるとは思えないけど無いよりはましなんじゃ?」
「それに薬草採取か・・・ポーション作成をするにも薬草が無いと困るわな。」
「私たちではポーションの完成は無理ですからね。」
「薬草採取なら任せてもらいたいですが・・・私達だけで採取場所へ行くのは危険でしょうね。」
「アリスさん達やジンさん達と相談しなくてはいけませんね。」
ルカ達のように農業をしていた者にとって
黒飛蝗やイナゴなどの食害には負けたくないという意識があり
自分達に力があれば倒したい駆逐したいと考えていた。
なので力が無い自分達はサポートを全力でする覚悟でいた。
「今は裏方でやれる事頑張りましょう。」
「「「「はい。」」」」
冒険者になり初めての緊急依頼で緊張していたが
少しでもやれる事があるはずと目の前の事を全力で頑張る。
それがジンさん達の力に『開拓村』の手助けになると考えていた。
各々がジンからお願いされた事を実行し『黒飛蝗の襲来』の備えた。
食材や食料を準備しギルドに追加で納品したり
上位冒険者達の陣地へポーションを届けたり
『銀矢』を500本用意し無事に『魔法付加矢』を『開拓村』に配備した。
『魔法弾』Lv1の鏃は『貫通撃ち』と同様の威力があり
『魔法弾』Lv2の鏃は『貫通撃ち』の2倍の効果があり
どちらも範囲攻撃可能な仕様になっていた。
広範囲攻撃とは違い狭い範囲ではあるものの殲滅力はかなりのものになっていた。
また、弓スキルと同時展開では追加の効果があり
リスターとリムルは範囲攻撃にもかかわらず殲滅力が向上していた。
弓スキルが無い『草原の風』の四人やルカ達五人も
『銀矢』の試射で問題無く射る事が出来たので
もしもの時は彼女達にも弓を射る事になりそうだった。
目視で確認できる距離まで黒飛蝗が近づきつつあった。
天災との対面は数時間後の事だった・・・。




