黒飛蝗襲来①。
目覚めは大気を震わすほどの翅の音だった。
ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ・・・・・。
東方より聞こえる音は夜明けと共に聞こえ
ジン達は朝錬を中止し急ぎ東方の様子を確認した。
川辺を越えた東の草原からは黒い塊と思われる黒飛蝗の集団が・・・軍団が空を埋め尽くしていた。
「日の出が遅いと思ったら黒飛蝗が空を覆ってたか・・・。」
『予想以上の数なのかな?』
『撃てば落ちる飛蝗の群れかな?』
「数千の群れは目視で見ると壮観だね。」
ジンはMAPを展開し黒飛蝗の動向を確認すると
東方の黒い塊全てが赤マーカーの表示だったので
暫定で全て黒飛蝗と言う事にしクロに『開拓村』を魔法で覆う用にお願いする。
「少し早いけどクロには魔法で『開拓村』を覆ってもらっていいかな?」
『了解。魔法の範囲は『開拓村』全体とし・・・『茨の森』!!』
クロの魔法発動により地面から『土槍』が数十本生えていく。
高さ5mに達すると土槍から無数の土槍が展開している。
それは『開拓村』を覆う様に展開し土槍で作られた『茨の森』が完成した。
「クロ、お疲れ様。」
『ん、これで進入不可だと思うけど・・・良かったの?』
「何が?」
『後ろでみんな驚いているけど?』
「・・・え。」
ジンは後ろを見るとチコとリコは『土槍』を触れながら
「『土魔法』っぽいけど初めて見る魔法かも。」
「『土槍』・・・?」
「それにしてもクロさん凄いです。」
「範囲魔法・・・いえ、広範囲魔法??」
確かにチコとリコは驚いてはいる。
それに比べてギルド職員のリーナやリンダ達の方が深刻だな・・・。
驚きすぎて動きを止めてるし
「黒亀が広範囲魔法・・・・?」
「それより護り特化の魔法ですか・・・。」
「『土魔法』だと思いますが・・・ギルド職員してますが初めて知ったかも。」
「『土槍』の派生魔法・・・もしくは、上位魔法かな?」
「それよりもクロさんが広範囲魔法を唱えても魔力枯渇してないのが凄いです。」
そう言いながら4人は尊敬の眼差しでクロを見つめるのだった。
『草原の風』のアリス達とルカ達は初めて見る広範囲魔法に
「凄い・・・。」とか「魔法でこんな事出来るのか・・・。」とか話し
「どれ程修練を積めばこんな事出来るんだろ?」とエトナが呟くのだった。
三者三様驚いて動けずにいたので「早いけど朝ご飯にしようか~。」と話し
「ほらいくよ~。」とチコとリコを連れて焚き火の部屋へ向かうのだった。
リーナ達もジン達の後を追う様に焚き火の部屋へ向かうのだった。
ジン達が調理場で朝ご飯の準備をしながら焚き火の部屋へ目を向けると
リーナとリンダ達が地図を広げ黒飛蝗と思われる黒い塊に目印を書いて行く。
遠目だったから数が数千なのか数万なのかは確認できないが無数である事だけは理解出来た。
「黒飛蝗の予想進路はギルドで聞いた進路と同じですね。」
「問題は実際に目視確認すると黒飛蝗の数の多さに・・・逃げたくなりますね。」
「そうですね。ランク上位冒険者達がどれ程倒せるか・・・。」
「あの数を目にして倒しきれると言わしめるかどうか・・・。」
「私なら逃げますね。ハッキリ言って倒せる自信より生き残れる自信がありません。」
焚き火の部屋は黒飛蝗の襲来により『どんより』とした雰囲気になっていた。
アリスやルカ達も同様に黒飛蝗の襲来に絶望を感じ自分の身体を抱きしめていた。
ソラ・シロ・クロだけは何が大変なのかわからないようで首を傾げている。
『広範囲魔法で殲滅しないのかな?』
『クロの魔法で驚いていたし・・・。』
『『茨の森』はやりすぎなのかな?』
『ここを護るには『いらばの森』しか無いでしょ?』
『魔法維持はアリスやルカ達に任せて大丈夫だしね。』
『ジンと一緒に黒飛蝗討伐に行けるね。』
『えへへへ、今度は一緒に戦えるよ。』
ソラ・シロ・クロは黒飛蝗の襲来を何気ない事と理解し
何故かジンと一緒に黒飛蝗討伐に行く気満々である。
確かにMAPを見る限り絶望的な戦力差でありながら
ソラ達は黒飛蝗と闘う気満々ですか・・・。
それ以上にMAPで見る限り上位冒険者達は陣地から東へ移動し
パーティー単位で河を越え東の草原へ展開している。
黒飛蝗からの距離3kmの位置で陣地を作りだし
きちんと逃げ場も確保している。
「まずは朝ご飯にしようか~。」
「食べてから考えましょ。」
「お腹ぺこぺこでは戦えないからね~。」
そう言いジンやチコ・リコは完成した料理を焚き火の部屋へ運び早めの朝ご飯を開始する。
『串焼き』や『焼き魚』を大皿に盛りつけたり
『煮込みスープ』や『野菜スープ』も用意したが
黒飛蝗の襲来で誰一人食の進みが良くないので
「少しは食べた方がいいぞ?」
「早く食べましょ。」
「もうすぐ黒飛蝗の襲撃時間だよ?」
ジン達が食事を促すとリーナ達が食事を始める。
みんなに静かな食事をしていたが次第に食も進み
いつも通りお代わりをしお腹いっぱい食べるのだった。
食後の紅茶を飲みながら今後の事を話し合う。
「東方から黒飛蝗が来るのは目視で確認した。
もうすぐ上位冒険者と黒飛蝗の戦闘が始まると思う・・・。
逃げようにも黒飛蝗から無事に逃げれる可能性は・・・皆無だろうな。」
ジンの一言でリーナは勿論だがリンダ達も驚き
「やはり逃げるのは無理ですよね。」
「私達も戦えますか?」
「数千もの数に対抗できるかどうか・・・。」
「ここを護って下さい。
クロの魔法で黒飛蝗の進入は防げると思いますが・・・やはり少し心配です。」
「ジンさんはどうするんですか?」
「一緒にここにいるんじゃ?」
「あぁ、ソラとシロがやる気を出したみたいで・・・
それにクロも一緒に黒飛蝗を討伐したいと・・・。」
『撃ちまくる!』
『乱れ撃ちです!』
『黒飛蝗討伐です!』
「すっかり東の草原へ行きたそうでして・・・行ってきます。」
「クロさんの魔法があれば黒飛蝗の集団の真ん中にいても大丈夫そうですが・・・。」
「ジンさん危険じゃないですか?」
「チコちゃんとリコちゃんはお留守番?」
リーナがチコとリコに話をすると
紅茶を飲む手を止めニコリと微笑み
「一緒に行きますよ?」
「まさか置いて行く気だったんですか?」
「どうやら同行するみたいです・・・。
今日一日『開拓村』の事はリーナさんに任せていいですか?」
「え、いや、本気で言ってるんですか?」
「私達だけでここを維持出来る訳無いですよ・・・。」
「あの土魔法を維持するのも無理ですよ。」
「クロの土魔法の事ですか?
魔法の維持は『土壁』と同じですよ?」
「土壁の維持と同じやり方でいいの?」
「それなら私達で維持出来るか・・。」
「維持しつつ弓で矢を射る!」
「矢を射るのは・・・もしもの時にしよ?」
「ここには優秀な冒険者が沢山いるんだから大丈夫でしょ。
もしもの時は矢を射るのもいいけど・・・
出来れば焚き火の部屋の地下室に避難してね?」
「そこまで言われたら頑張るしか無いじゃないですか・・・。」
「優秀はさておきやるだけやってみましょ。」
それから数分後、東の草原の方から魔法の炸裂する爆音が響くのだった。
『開拓村』は初めての戦闘と言う事でルカ達は緊張をし
『草原の風』のアリス達は『やれる事をやる』というスタイルでいる。
ギルド職員のリンダ達はジン達を止めるのは無理だなぁと思い
ここを『開拓村』を護る事を優先させた・・・。
「重要なのはクロさんの魔法の維持を最優先に!」
「弓の範囲内の黒飛蝗は積極的に弓で射る事!!」
「そして、誰一人かける事無く戦闘を終える事!!!」
「「「「「「はい!!」」」
「それじゃ、僕らは黒飛蝗討伐に行くね~。」
「「いってきまーす!」」
クロに甲羅のジン達が乗り込みソラとシロがチコとリコが抱きしめ
『開拓村』のリーナ達に手を振りクロは東の草原へ向け駆けて行く。




