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第14話 学食での事件

「朝霧茅! あたしと勝負しなさい! それから蘇芳葵! べたべたとあたしのエリカ様に抱きつかないで!」


 時刻はお昼休み真っ只中の12時30分。お腹を空かせた生徒達で溢れている学食はガヤガヤと騒がしいのにも関わらず、たかが女子生徒1人の声でその場が凍りついたのは彼女の言葉の中に学内で有名人且つ敵に回してはいけない人物の名前が出たからであろう。

 生徒達は何事かとジロジロ渦中の私達がいる二階席を遠巻きに見てくる。


──いやいや、私が何事かと聞きたいのですが!!


 私はただいつもと同じ様に学食で何故か生徒達が寄り付かない二階席でシェフが作った料理を食べていただけだ。私より早く食べ終わった葵君は手持ち無沙汰なのか何なのか知らないが、私を背後から抱き締めるという迷惑極まりない奇行に走り、それを見た茅が葵君を怒る。この光景はよくあることだった。否、よくあるどころかほぼ毎日と訂正しておこう。

 しかしながらそこへ今日はいつもと違う事が起きた。いきなりズカズカと私達のテーブルに現れたミディアムボブの女子生徒はバンッと両手でテーブルを勢いよく叩き、その後茅へ指を差し、更には葵君へも指を差して冒頭の言葉を述べたのであった。

 彼女のその言葉に私は呆けてしまう。後ろを見れば茅も私と同じ様な顔をしていたが、葵君は違った。


──ひいぃぃ。怖っ!


 ぎゅうぎゅうと私を抱き締める力を強めた彼の顔は恐ろしかった。お得意の絶対零度の微笑みである。間違いなく彼女の()()()()()()()()発言に御立腹だ。



「……随分と聞捨てならないこと言ってるけど、君は誰だい? 新しいエリカの下僕? エリカは俺のだよ。下僕同士の醜い争いに俺とエリカを巻き込まないで」


 葵君は茅に目の前の女子生徒を押し付ける気満々だった。尤も、彼女が目の敵にしているのは茅のようだが。彼は私の知らぬ間に何かやらかしていたのだろうか? 彼を見る限り全く身に覚えがないみたいであるが。

 私自身も何故彼女に崇拝されているのか分からない。葵君の言った通り、どこかの親衛隊に新しく所属したメンバーなのかもしれない。そんな私の予想は私にとってはある意味良い方向に外れることになる。


「はぁ? あんたのエリカ様なわけないでしょう! あたしはあんたがエリカ様の婚約者だってまだ認めてないんだから! どの親衛隊もあんたとエリカ様の恋を応援するものばかりで嘔吐が出る。だからあたしは作ったの。蘇芳葵と華京院エリカ様の婚約を破棄し隊を。ちなみに今の所メンバーはあたし1人よ」


 皆も良かったら入ってちょうだいとドヤ顔で学食にいた生徒達に向けて募集を募っている彼女。ジロジロと私達のやり取りを遠巻きに見ていた生徒達は彼女に関わるまいとサッと目を逸らす。当たり前だ。彼女の親衛隊に入れば蘇芳葵を敵に回す事になるのだから。そんな強者いるわけがない。下手すればその人の学園生活が終わる。いや、社会的に潰される可能性が高い。

それなのに葵君に対してこんなに強気に食って掛かる彼女は凄い。そして出来ることなら私がその親衛隊に入りたい。漸く私の味方部隊が結成された。

 彼女こそ葵君に屈しない強い精神を持った私の味方の女の子だ。ひなたちゃんも葵君に屈しないが、私に彼を押し付けてくる時点で味方ではない。ここは是非とも彼女とお友達になりたいものである。まだ名前すら存じていないのだが。


「まぁメンバーは追々増やすとして、話を戻すけど……朝霧茅! あたしと勝負しなさい! 蘇芳葵も憎いけどまずはあんたよ、朝霧茅」

「……失礼ですが、貴方はどちら様ですか? 随分私とこの三男坊を敵視しているようですけど」

「どちら様かですって?! 大門寺(だいもんじ)(まどか)よ! 警察庁長官の娘の大門寺円!」

「ああ、あの超エリート警察一家の。華京院家とは昔から親交があるみたいですね」


 まず彼女が警察庁長官の娘ということに驚いたが、私の家と親交があることにも驚きである。今の今まで1度も彼女と会った覚えがない。昔から親交が会ったなら会っていてもおかしくはないと思うのに。


「そう。私は幼い頃、父の用事でたまたま一緒に華京院家に連れてってもらったの。そこで同い年のエリカ様を遠くでお見掛けしたわ。愛らしいそのお姿に心撃たれ、あたしはエリカ様のお側で彼女をお守りしたいと思ったの。それから警察学校に通って心身を鍛え強くなり、高校生になってやっとエリカ様の護衛が出来ると思ったのに……エリカ様の側にはあんたがいたわ、朝霧茅! 本来なら高等部ではあたしがエリカ様の護衛をする筈だったのに! あたしが複雑骨折で1ヶ月半近く入院している間にその座を奪われたのよ! ここ1週間は苦渋の思いでエリカ様を遠くから見守っていたわ!」


 大門寺円さんは悔しそうに顔を歪めてマシンガントークをしているが、私としては色々と突っ込み所が満載過ぎる。まず幼少期に私を遠目から見て心撃たれたとは何だ。その話をしている彼女は頬を赤らめてまるで恋する乙女である。もしやソッチ系の方なのだろうか……。別に偏見はないが、対象が私かと思うと何も言えない。

 そして高等部から彼女が護衛と知らされていない。なのでいつもの如く茅に頼んだのだ。それに彼女は私と同い年のようだし、別に茅みたく学園側に申請しなくても私の側にいられる。何故茅をそんなに目の敵にしているのか分からない。ライバル意識が高いのだろうか。

 それから複雑骨折も気になる。彼女に一体何があったの。1ヶ月半近くも入院してたということは入学式にすら出席していないではないのか。話に聞く限りやっと退院して私のことをストーカーしてたというわけか。もう間違いなく彼女はエリカ至上主義者の1人だ。


「さぁ朝霧茅、どっちがエリカ様のことをよく知っているか勝負よ!」

「はぁ……。勝手に敵視されても困るんですけどね。しかしここはエリカお嬢様の側近として負けるわけにはいきません」

「優勝は間違いなくエリカの婚約者である俺だよ。エリカ、俺を応援してね」

「ちょ、まっ──」


 私の制止の声は届かず3人は私の誕生日やら好きな食べ物などメジャーな事から下手したら私すら覚えてなかったり、知らないマイナーな事をどんどん上げていく。3人して私のスリーサイズを言おうとした時はその場で止めた。この勝負、明らかに私に被害が及んでいる。罰ゲームだ。大門寺さんと茅の勝負に葵君まで勝負に参戦しているし。私のことを知って得になることは何も無い。だからお前ら張り合うな。


「……いい加減にしないと嫌いになるよ!」


 学食で盛大にどんどん私の個人情報を暴露していく3人に我慢の限界が来た。鶴の一声とはこの事か。ピタリと3人は口を閉じるだけでなく動きまでフリーズ状態だ。


「それは嫌だ!」

「それは困ります!」

「それはやめて下さいエリカ様!」


 この光景デジャヴだよ。前にもあったと私は額に手を当てて溜息を漏らす。もう生徒達の注目の的だ。この場を収めることが出来るのは私しかいないと生徒達から期待の眼差しを向けられているのがひしひしと伝わる。


「じゃあこの勝負は引き分けと言うことで終了。……それから大門寺円さん」

「はいっ何でしょうかエリカ様!」

「茅と張り合わなくてもいいんじゃないかな? ……同い年だし、私としては友達になって欲しいと思う。だから大門寺円さん、私の初めての女友達になってくれませんか?」

「そんなっ畏れ多いっ! でもエリカ様の初めてがあたし……」


 その誤解を生む言い方をやめて頂きたい。頬を染めるな。頬を。

 

 結局お友達兼護衛という形でその場はなんとか収まったが、後から学食での騒動を知ったひなたちゃんが「エリカちゃんの最初の女友達はわたしじゃなかったの?!」と予想外な発言をしたせいでそこでも一悶着があったのだった。




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