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大沢「黛、お前、面白い、拾い物したなぁ・・・・」

黛「はは ははははは はははは・・・・」






大沢「ジュジュ、黛の奴が、泣きながら、電話してきたけど、お前、何か、知っているか?」

ジュジュ「ああ、ええ。・・・・実は、マレーシアで、中国人の、女に、言い寄られたみたいで。」

大沢「・・・・・あいつ、なに、やってんだ?」

ジュジュ「申し訳ありません。報告するまでもないと思ったものですから、・・・・・大沢さん。あの、・・・・・ご報告した方が、よろしかったですか?」

大沢「いや、別に、いい。黛の奴が、ちゃんと仕事、やってりゃあ、それでいいんだ。・・・・・女に、モテて、なにが不満なんだ? 殺される勢いだったぞ?」

ジュジュ「いや、詳しくは、存知あげないので。」

大沢「あいつ、時々、おかしいからな。・・・・いつもか。いつも、おかしいか。」




中堅企業「悪いんだけど、おたくさんとの取引は、今回で、終わりだ。」

下請け企業「・・・え? なにか、不具合でも? 納期も品質も、何も、問題ないと、思いますが? もちろん価格も、それ相応に、ご相談させていただければ・・・・」

中堅企業「そういう事じゃないんだよ。なんて言うか・・・・・・・、そのぉ、お達しっていうか?」

下請け企業「お達し? お達し、とは? あの、課長さん、はっきり、おっしゃって下さい。」

中堅企業「いやね。・・・・・・おたくさんとは、取引しないでくれ、って、取引先の、会社さんに、言われちゃってさぁ」

下請け企業「は? どういう? どういう、事なんですか?」

中堅企業「いや、私も、私の方も、知りたいくらいでさ。・・・・・ま、どっちみち、おたくさんと、取引しているのがバレたら、うちも、危ないのよ? 分かるでしょ?この業界、お互い、長いんだから。」

下請け企業「いや、ちょっと、分からないです! あの、うちに、不備があって、取引が、出来ないなら、分かります。ですが、違う理由で、・・・・うちと取引すると、ダメだとか、そんなの、ちょっと、おかしいですよ!」

中堅企業「おかしいのは、分かってんだ。こっちも。でも、こっちも商売だからね。 悪いね。社長さん。また、違う、会社、当たってみてよ?たぶん、無駄だと、思うけど」

下請け企業「どういう事ですか?」

中堅企業「・・・・・・・おたくさん。あれに、目ぇ付けられちゃったんだよ。あれに。」

下請け企業「あれ?」

中堅企業「ああ、”松柄”に。」



自動車会社役員「おかしいでしょう? どうしてうちだけ、アメリカへの関税が、五十パーセントなんですか! 標的を定めた、完全に、イジメじゃないですか!」

自動車会社役員「いや、我々も、同じ意見だよ。政府に抗議したけど、無駄だった。」

自動車会社役員「はぁ?」

自動車会社役員「これじゃ、アメリカで、うちの車を、売るな!って事じゃないか!」

自動車会社役員「・・・・・その通りだよ」

自動車会社役員「このまま、黙っていて、いいのか! 政府に、もっと、抗議すべきだ!」

自動車会社役員「無駄だ、無駄。もう、八方、手を尽くした。当初は、七十五パーだった、って話だ。でも、五十パーに、負けてくれたそうだ。・・・・・・・・・・・ふざけている。」

自動車会社役員「舐められているんだよ」

自動車会社役員「”松柄”だよ、”松柄”が仕組んだんだ。・・・・・・アメリカの車を売る為に、日本の、我が社を、売ったんだ。」

自動車会社役員「・・・・・・・・”松柄”か・・・・・・」

自動車会社役員「産業界は、奴の、言いなりだ。奴に、逆らえば、生きていけない。・・・・・・・・・我々は、負けたんだ。”松柄”と勝負したって、勝てる、見込みがない。下手をすれば、・・・・部品すら、買えなくなるぞ?」

自動車会社役員「国内需要を見直そう。それが最善策だ。アメリカで売れなければ、ヨーロッパ、インド、中国。別のシェアを探すしかない。・・・・・・”松柄”の好きにさせてたまるか!」

自動車会社役員「いったい何者なんだ、あの、”松柄”っていう男は?」




ジュジュ「・・・・・あの、大沢さん。ご相談したい事がありまして。」

大沢「あ? なんだ」

ジュジュ「黛さんの件で・・・・」

大沢「また黛か・・・・・それで、どうした?」

ジュジュ「ええ。・・・・あの、大沢さんと連絡が取れなくなったものですから、今度は、私に、その、中国人の女のことで、助けてくれと、・・・・事あるごとに、電話をかけて、こられまして・・・・・・正直、私も、自分の仕事があるものですから、黛さんに、構っていられないと、言いますか・・・・・」

大沢「迷惑か?」

ジュジュ「いや、いえ、・・・・黛さんは、先輩でいらっしゃいますから、」

大沢「どうみたって、お前の方が優秀じゃねぇか。言いたい事があるなら、はっきり言え。・・・・黛が、迷惑で、仕事が、できねぇ、そういう、話だろ?」

ジュジュ「・・・・・かいつまんで、申し上げると、はい。その通りです。」

大沢「あの、バカ、マレーシアで、なにやってんだ? それで、ジュジュ。お前、どこまで、その、黛の話、聞いているんだ?」

ジュジュ「ええ。・・・・・現地の、取引先マフィアのボスが、えらく、黛さんを気に入ったらしく、」

大沢「あいつ、・・・・どこ行っても、人たらしだからな。俺も、そういう、能力、欲しいぜ。」

ジュジュ「あの、売春宿に、連れて行ってくれたそうなんです。自分の所の、店に。そこで、中国人の女と、知り合ったんだそうですが、・・・・黛さんから、離れないらしくって。

文字通り、比喩じゃなく、しがみついて、離れないんだ、そうです。」

大沢「離れない?」

ジュジュ「ええ。蹴られても、殴られても、離れないそうです。」

大沢「尋常じゃねぇな。・・・・・・・・・・・・お前、それ、なんで、報告、しなかったんだ?」

ジュジュ「いや、私も、聞いたの、昨日なんで。そんな事態になっているなんて、知らなかったんです。・・・・申し訳ありません。」

大沢「まぁ面白そうな話じゃねぇか、・・・・続けろ。」

ジュジュ「はい。・・・・ま、最初は、マフィアも、気に入った男だから、好きで、離れないだけかと思っていらしいです。ところが、朝になっても、昼になっても、次の夜になっても、黛さんから、離れようとしません。しがみついていますから。・・・・・大沢さんに、その時、助けを求めたって言っていましたけど。」

大沢「あ! ・・・・・あ、あの時か。」

ジュジュ「最初は笑っていた、マフィアも、様子のおかしい女に腹を立て、引き離そうと、さっき言った通り、殴ったりしたそうなんですが、・・・・離さなかった。その時点で、その、女の異常さに、気が付いたそうです。ただ、マフィアも、黛さんの事を気に入っているので、それに、こちらとの取引もあるから、事を荒立てたくなかったので、問題視、しなかったそうです。」

大沢「女、一人、黛にくれてやって、丸く収まればそれでいい、って事か?」

ジュジュ「ええ。・・・・まぁ。そういう、塩梅です。」

大沢「それで、黛の奴は、てめぇの、仕事は、してるのか?」

ジュジュ「ああ、ええ。それは。その、女も、黛さんと一緒にさえいれば、落ち着いているようですが、それでも、・・・・トイレの中まで、ついて来る、とか、言っていました。」

大沢「とんだ女に、見染められたもんだな、黛は。・・・・・ジュジュ、もう少し、詳しく、調べてくれ。黛からは、俺から、電話しておく。」

ジュジュ「了解しました。」

大沢「なんなんだ、その、中国人女は?」




ジュジュ「大沢さん。今、お時間、よろしいですか?」

大沢「あ、いいぜ。」

ジュジュ「マッサージの最中、失礼します。・・・・・・・。」

大沢「どうした?」

ジュジュ「なんて言ったら、いいのか、・・・・・その、黛さんの、中国人の、女性、なんですが?」

大沢「あ、あいつ、昨日も、泣いてたぜ? ずっと離れなくて、怖いって。 一生、くっついてろ!って言ってやったけどな。」

ジュジュ「戸籍上、死んでいる、日本人でした」

大沢「あ?」


大沢「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、ジ゛ュ゛ジ゛ュ゛、続゛き゛を゛話゛せ゛゛゛゛」

ジュジュ「はい。その、中国人の女性なんですが、・・・・・・私達の、取引先である、マレーシア、現地マフィアの、売春宿で、働いています。

その、売春宿で、働いている女性のうち、三分の一は、人身売買で、買ってきた、女性という事でした。名前は、”トゥルーチー”。何人か、まとめて買った、女性の一人で、詳細は、不明。東洋人の顔つきと、カタコトの英語を話すので、中国人とばかり、思っていたそうです。名前も、”トゥルーチー”と名乗っていましたし。

そこで、直接電話で、トゥルーチーと、話してみることにしました。

なぜ、そのような、行いをしているのか? 場合によったら、マフィアの機嫌を損ね、殺されてしまうかもしれない、と。そうしたところ、彼女は、”露木あづさ”、日本人だ、と言うのです。」

大沢「お゛お゛お゛お゛お゛お゛、こ゛り゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛、び゛っ゛く゛り゛だ゛な゛゛゛゛゛!!」

ジュジュ「”露木あづさ”なる人物を、調べました。

七年前、オーストラリアで、旅行中、失踪。・・・・死亡と、なっています。」

大沢「な゛ん゛で゛死゛ん゛だ゛女゛が゛、マ゛レ゛ー゛シ゛ア゛に゛、売゛り゛飛゛ば゛さ゛れ゛て゛き゛て゛ん゛だ゛よ゛゛゛゛゛゛゛?」

ジュジュ「問題は、間違いなく、そこなんです。

オーストラリアで旅行中、失踪というのは、表向き、ニュース報道からの情報です。彼女がいなくなって、すぐ、家族は、捜索願を出しました。ところが、日本政府は、早々に、オーストラリア政府に対し、捜索協力を取り下げ、死亡の認定を行いました。」

大沢「無゛理゛が゛あ゛る゛ん゛じ゛ゃ゛な゛い゛の゛か゛゛゛゛?」

ジュジュ「無理どころの話じゃありません。失踪中の死亡認定。本人の、生死の確認も取れていません。日本政府は、遺体なしで、死亡を受理し、急な幕引きを図ります。それが、表向きの、話。

失踪した彼女の話を聞くと、アメリカ人の女に、誘拐され、アメリカ本土に連れていかれ、そこで、売春を強要されていた、と言います。」

大沢「ヘ゛ビ゛ィ゛じ゛ゃ゛ね゛ぇ゛か゛゛゛゛゛!」

ジュジュ「・・・・・そこの家だか施設には、彼女の様に、誘拐されて連れてこられた女性が、各国から、集められてきていたそうです。白人、黒人、アジア人、言葉も、人種もさまざま。共通言語は、英語。嫌でも、覚えたと、言います。それに、男性客の相手をさせられるのに、言葉は、必要なかった、とも話しています。

よく分からないクスリを飲まされたり、猟奇的な、非人道的な、拷問を受けた経験もある。拷問に耐え切れず死んだ、女性も、数多く、見てきた。その、家の、主の機嫌次第で、生死が、左右され、”露木あづさ”は、運がいいのか、悪いのか、飽きられたのか、犯罪者集団に、売られ、マレーシアに、行きついた。

・・・・たまたま、やってきた日本人。それが、黛さんだった、そうです。

彼女にとって、黛さんは、神様に、見えたそうです。」

大沢「地゛獄゛に゛仏゛、蜘゛蛛゛の゛糸゛か゛゛゛゛゛。そ゛り゛ゃ゛ぁ゛・・・・死゛ん゛で゛も゛、離゛さ゛な゛い゛わ゛な゛、同゛胞゛が゛、目゛の゛前゛に゛、い゛る゛ん゛じ゛ゃ゛、な゛゛゛゛」

ジュジュ「はい。露木あづさは、これが、奇跡だと思ったそうです。どこか分からない世界の片隅で、日本語を、話す、人間に、出会えた、奇跡。これを手放したら、もう、二度と、生きて、日本に帰れないと、思って、黛さんに、抱き着いた、と。」

大沢「泣゛け゛る゛話゛じ゛ゃ゛ね゛ぇ゛か゛゛゛゛゛。」ポチッ「・・・・めでたし、めでたし、とは、いかないよな? うっっし。ジュジュ。・・・・その、黛の女。買い取れ。・・・・向こうの言い値でいい。ちょっと色、つけてやれば、二束三文で買った女なんか、すぐ手放すだろう。それに、黛に、ひっついてんじゃ商売にならねぇ。その、落とし前、半分って、ところだな。」

ジュジュ「分かりました。先方と話をつけます。」

大沢「死んだ人間が、生きていた。・・・・か。・・・・・こりゃぁ面白くなりそうだな。」

ジュジュ「・・・・・。」

大沢「その、ゾンビちゃん。・・・・・いい仕事、してくれそうだな。・・・・・向こうのマフィアと手打ちが出来次第、”早急”に死亡を認定した、政府を洗え。

なぁ、ジュジュ。お前、三百円、持ってる? 持ってたら、貸してくれ。この、古い、マッサージ機。痛くて、気持ちいいんだわぁ・・・・・・」

ジュジュ「申し訳ありません。生憎、札しか、持ち合わせがありません。」

大沢「・・・・なんだよ、おい、使えねぇなぁ」



大沢「黛ぃ、お前、いいもん、拾ったなぁ」

黛「ははは はははは・・・ はは」

大沢「お前の”ツキ”の良さは、うらやましいぐらいだ。裸で、中東の内戦地に、放り出しても、帰りに、金銀財宝、拾ってきそうだもんな。なぁ? 今、生きているありがたみを、ご先祖様と、俺に、感謝しろよ?」

黛「もちろんですぅ大沢さん! 俺、大沢さんについて行きますから、一生、大沢さんの、舎弟ですから、ついて行きますから、助けて下さい! 何でもしますからぁ! 助けてくださいよぉ~! 大沢さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんん!!! お」

大沢「うるせ 死ね バカ」

ガチャ

黛「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!     ひどい、大沢さぁぁぁん!」




皇「死んだ人間が生きてた? ・・・・ハリウッドのB級映画か何かか、悪魔の毒々モンスターか?」

火野「違うの。・・・・最近、しきりに、ネットの掲示板に書き込みがあるのよ」

皇「なんだ、怪談話か、ホラ話の類じゃねぇか」

火野「それが、そうとも、言えないのよ。例えば、死んだ人間が生きてたって、その、四谷怪談とか番町皿屋敷なら、まだ、分かるわ。わりと、最近の、話、らしいのよね?」

皇「らしい、って、なんだよ。お前の話は、いつも”らしい”ばっかで、正確なニュースを持ってきたためしがない。お前の話は、信用できねぇんだ。」

火野「うるさいわねぇ! 掲示板に、そう、書いてあるんだから、そうとしか、言えないでしょ?私、見た、わけじゃないし。行方不明でいなくなると、海の隣の、独裁国家の、拉致事件じゃないか、って言われるけど、この話も、その類の話じゃないか、って。」

皇「拉致された人間が、生きてあ、って事か?」

火野「ま、そう。・・・・・あの国、完全に、国交を断絶している訳じゃないから、もしかしたら、外交の人間が、たまたま、行方不明者を、目撃しちゃったんじゃないか、って話も出てる。・・・・一番、信憑性がある、話だからね。」

皇「あの国の人間じゃないから、分からないけど、・・・・拉致した人間を、・・・町ん中で、勝手に、歩かせとくか?それこそ、逃亡の恐れがあるじゃねぇか。」

火野「知らないわよ、私に聞かれても。マレーシアで、見つかったんだって。女の人が。・・・・死んだと思われてた、人なのよ、その人が。」

皇「うさんくさい話だな、ま、ネットの話なんて、大概、全部、うさんくさいけどな。」

瀬能「あのぉ、・・・・夕飯、食べたら、帰ってくれませんか?」

皇「いいだろ、お前、暇人なんだから」

火野「そうよ」




染脇「・・・・ええ。ここからが、本当の勝負です。真に、良い車は、どこであろうと、アメリカであろうと、必ず、売れます! それには、皆さんの、ご協力、なくして、あり得ない! この窮地をチャンスに変えて、乗り切って参りましょう!」

司会「では、皆さん、盛大に、エイエイ、オー!」

染脇「エイエイ、オー!」

パーティー参加者「エイエイオー!」うぉぉぉぉぉぉぉおおぉおおおぉぉぉおおおおおおぉぉぉぉぉおぉおおおぉおぉおおぉおおおおおおおおおお!!!!


松柄「染脇先生。ご挨拶、痛み入ります。」

染脇「いや、構いませんよ。アメリカ側に尽力を尽くして下さったのは、松柄さんじゃないですか。僕は、党の人間として、ご挨拶をしたに、過ぎない。あとは、皆さんの、力量に、かかっているだけですから。」

松柄「ご謙遜を。・・・・・・若手筆頭、次期総理大臣候補。・・・・・先生、よろしければ、この後、有志による、懇親会が、催されますが、ぜひ、ご出席、いただけたらと、思いますが、いかがでしょうか?」

染脇「そうだねぇ・・・・・・」

秘書「先生。ご予定の方も、ありますから、手短に。」

染脇「わかった。それじゃぁ、松柄さんの顔も立てないと、いけないから、挨拶だけして、それで、失敬するよ。」

松柄「ありがとうございます。ささ、ごちらへ、どうぞ。秘書の方々も、是非。」

秘書「我々は、ホテルの前で、待機しております。」

松柄「・・・・・そうですか、それは、残念だ。先生、是非、一杯。一杯だけ・・・・・」

染脇「一杯だけだよ?」

秘書「先生。・・・・・次のご予定、お忘れなきよう・・・・」

染脇「わかってるって・・・・」

松柄「こちらに、こちらに・・・・・・」




ウィーン

久世「・・・邪魔するよ」

瀬能「あら、・・・・これはこれは、妖怪不死身ババアじゃないですか?」

久世「口の減らない娘だねぇ。・・・・・客人が来たんだ、茶ぐらい、出せないのかい?」

瀬能「どうぞ。適当に。」


久世「ほぉ・・・・・少しは、上等なモン、飲んでるんじゃないか、生意気に。」

瀬能「それで何の用ですか? 老人クラブの帰りでも、ないんでしょう?」

久世「まぁいい。癪に障るが、鳩の小僧の下に、ついたおかげで、大分、いい思いをさせてもらってるからねぇ。」

瀬能「こちらも同じですよ、久世耶慧の名前があるだけで、悪い虫が、寄り付かない。・・・・まるでブラックキャップのようですよ。」

久世「うるさいわ!人をゴキブリホイホイみたいに言うな!」

瀬能「えぇぇ? すごい感謝してるんですよ?」

久世「今日は、小僧に、貸しを、作りに、来たんだ。・・・・・・・小僧んトコの若造。あれに釘を刺しておきな。・・・・・・小さい棘が、あとで、でっかい、杭になることがある。

今は、私も、鳩の小僧と、一蓮托生だ。小僧に、失脚されたら、困るんだよ。わかるだろ?」

瀬能「・・・・それは、私も、」

久世「いいかい? これから、近いうちに政権が傾く、えらい事案が、うごく。 政権幹部、総入れ替えか、下手したら、ガラガラポンだ。

その棘になるのが、”松柄”、元、財務官僚さね。

小僧んトコのお坊ちゃんは、金と女に関しては、清廉潔白。かなりクリーンだ。・・・・まぁ、お前達が、うまくやってんのは、分かってる。だが、”人間”相手には、まるでザルだ。もう少し、付き合う人間の、身体検査を、慎重に行うべきだ。」

瀬能「・・・・してますけど。」

久世「それがザルだ、って言ってんだよ。人間関係は、女だけじゃない。」

瀬能「その、松柄、っていうのが、なにか、しでかしたんですか?」

久世「ああ。・・・・・大衆を敵に回すタイプの、えらい、問題だ。近頃、その松柄っていうのは、これから政権を担うであろう、若手優良株に、手を出している。お坊ちゃんに、手垢を、つけられたら、終いだ。」

瀬能「ワイドショーネタは、ちょっと、勘弁してもらいたいですねぇ・・・・・簡単に、世論が、ひっくり返っちゃうから。」

久世「いいかい? 瀬能の娘。これは貸しだよ。」

瀬能「妖怪ババアのご忠告、ありがたく、賜りさせて、いただきまぁす! ・・・あ、ほら、最中、持っていきなさいよ?出したんだから。遠慮しないで」

久世「遠慮なんかするか! 今、食うんだよ! 茶、出しな!」




チッカ、チッカ、チッカ、チッカ、・・・・・・

軛「墨宇先生。お時間をいただきまして、ありがとうございます。」

墨宇「前置きはいいから。・・・・それで、何の御用かしら?」

軛「調べていただきたい、件が、ございまして。」

墨宇「なに? 改まって。」

軛「数年前に、オーストラリアで失踪した女性がいるのですが、家族から捜索願が出されている最中に、日本政府から、死亡と、認定された、事案についてです。」

墨宇「・・・・・なにそれ?」

軛「先生は、ご存知、ありませんか?」

墨宇「・・・・・いいえ。」

軛「行方不明者の数を考えれば、気に留める様なことはないと思います。私も、当時、知りませんでしたから。」

墨宇「特別な事案なわけ? まぁ・・・・失踪自体、ふつうに考えれば、異常な事は異常だけど。・・・・・異常を異常と思えない時点で異常なわけだけれども。」

軛「ええ。日本政府が、はやばやと、死亡として、取り扱った。わざわざオーストラリア政府に捜索協力をお願いしていたのにも関わらず、死亡認定をして、捜索を打ち切らせたんです。」

墨宇「・・・・・・それも、おかしい、わね・・・・」

軛「ところが、・・・・・その女性、最近、マレーシアで、生存が確認されました」

墨宇「!  生きてったってこと?」

軛「ええ。 賢い先生なら、お気づきかと思いますが、政府が死亡とした女性が、生きていたんです。言い換えれば、政府が、殺した、女性が、生きていた・・・・・」

墨宇「大問題じゃない!」

軛「ここ最近だと、一番、大きなスキャンダルじゃないでしょうか?」

墨宇「・・・・・・・・・」

軛「墨宇先生。人権派の先生なら、ことの重大性が、お分かりだと思います。”政府”が主導して、死亡を、認定したわけです。親族でもなく、先方のオーストラリアでもなく、我が国、日本が。」

墨宇「・・・・なにか、ある・のね?」

軛「それを、墨宇先生の、手腕で、調べていただきたいのです。私達も、独自のネットワークで、調べておりますが、多分に、政府内部の動きに関しては、なかなか、手が出せないものでして。・・・・ご協力、いただけると、助かります。」

墨宇「・・・・・・」

軛「・・・・・・名前は」

墨宇「待って! 待って、樹々さん! 聞いたら、後戻り、出来なくなる・・・・・ 待って。待ってぇぇぇぇぇぇぇ。・・・・・ええ、いいわ。どうぞ。」

軛「腹はくくられましたか?」

墨宇「ええ。私とあなたの仲だもの。」

軛「”露木あづさ”、露木あづさです。」

墨宇「・・・・・とんでもない爆弾を、背負わせてくれたわね。」

軛「・・・・・・先生と私の、仲じゃ、ありませんか。」


墨宇「本当にここで、いいの?」

軛「貴重なお時間、ありがとうございました。」

墨宇「じゃ。また、連絡するわ。・・・・・・・・・・出して。」

チッカ、チッカ、チッカ、チッカ・・・・・・・・・ブゥブゥ ブブブブブブブブ・・・・・・ ブゥウゥゥゥゥゥッゥゥッゥン






火野「・・・・あんた、なに、読んでんの? ああ、それ。」

皇「お前が言っていた、妄想話。ゴシップ週刊誌が、取り上げてるぞ。『私は殺された! 行方不明隠匿の謎!』『逃亡の末に!!!海外逃避行!!!』他にも、ゴロツキ記事だと、『ワーホリの闇!日本人奴隷労働!』だとよ。・・・・他に書くことないのか?」

火野「あのねぇ、ゴシップって分かっいて、読んで、その言い草はないでしょ?」

皇「どうせろくな取材もしないで、ネットの、面白ろそうなネタ、そのまま、書いてるだけだろ?」

火野「・・・・・・・・それがぁ、そうとも、言えないのよ、これが」

皇「なんだ?その勿体ぶった、言い方は? お前、なんか、知ってんのか?」

火野「ちょっとねぇ・・・・・」

皇「教えろよ」

火野「なんでよ、部外者である、あんたに、教えるわけないでしょ! あたま、おかしいの? あたまおかしいのは、杏子だけにしなさいよ!」

瀬能「あのぉ・・・・・・家人の前で、ちょっと、酷くないですか?それぇ?」

皇「おい、この前、コンビニの、レジの、変な、おもちゃの、くじ、小銭がないから、貸してくれって、金、貸したよな?」

火野「フィギュアよ、フィギュア!」瀬能「フィギュアです」

皇「どっちでもいいんだよ、しかも、ハズレて。百円で買えそうな、お手拭きみたいなやつ、貰ってたよな? 五千円、返せよ。今、ここで、すぐに、五千円、返せよ。」

火野「ちょ・・・・ま・・・・・お金、の話、今するぅ?」

皇「別にいいんだぜ?うちの風俗で、今日から、働かせてやっても?」

火野「やめてよぉ、重たいぃ・・・・」

皇「お前ぇ、キャバクラとか風俗とか、向かない女だもんな。気が利かないし。・・・・まぁ、中には、そういう女が好きな男もいるんだよ。・・・・お前、童貞に好かれそうなツラ、してるし。」

火野「なんでよ?」

瀬能「あ、わかります。」

火野「なんでよ!」

皇「お前、ツラだけは、いいモンな。」

火野「わかった、わかった、わかりましたよ! 言えば、いいんでしょ?言えばぁ!」

皇「いいよ、もう。金、返せよ。」

瀬能「あ、うちで飲み食いした分の、食費も、返して下さい。御影、あなた、食べて、寝て、お風呂はいって、また帰って来て、うち、ホテルじゃありませんよ?」

火野「いいじゃない! 友達でしょ!」

皇「お前、都合わるくなると、すぐ、友達発言で、お茶、濁すよな。」

火野「・・・・・・・ぅぅぅう」

皇「よし、ひん剥くか!」

瀬能「ひん剥きましょう!」

皇「きひひひひひひひ・・・・・・・」 瀬能「あはははははははははははは・・・・」

火野「やめてぇやめてぇやめてぇやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


火野「・・・・うぅ」

皇「なんだ、金、もってんじゃねぇか! 返してもらうぜ?」

瀬能「食費、光熱費、通信費、宿泊費、・・・・・ま、いいです。五千円で、手を打ちましょう。」

火野「・・・・もういいでしょ!オッパイ魔人と、性格ゴリラ!」

皇「酷い言われようだな」

瀬能「酷い言われようです」

火野「やめてよ!もう、何にも、出ないわよ! 出ないからぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

皇「きひひひひひひ・・・・・・」 瀬能「あは あははははははは あははははは・・・・・」


皇「んで?」

火野「・・・・・・さっき、編集部で聞いたんだけど、編集部に、その、生きてた人の話、積極的に、もってくる人がいるんだって。」

皇「持ち込みなのか?」

火野「いや、そういう事じゃないんだけど。・・・・編集部の、上の方から、ゴリ押しで、ねじ込んでくるんだって。」

皇「上の方?」

火野「ま、スポンサーとか、そっち関係って、事よ。」

皇「じゃなにか? いくら、ゴシップとは言え、作られてる話って事か?」

火野「誘導されているって言うか、情報操作されているって言うか・・・・・だから、ちょっと、そのスジを、調べようと、思って・・・・・」

皇「へぇ。・・・・うさんくさい話から、きな臭い話に、なってきたな。

お前さぁ、そんな事よりさぁ、もうちょっと、パンツ、気ぃつかえよ?いつ、男と寝るか、分かんねぇだろ? ・・・・ま、あれか、童貞が好きそうなパンツ、履いてるもんな、童貞、狙いか?」

火野「童貞童貞うるさいわっ!」




コツコツ・・ ウィーン

墨宇「・・・・どうぞ」

軛「ありがとうございます。」

ガチャ バダン ドゥン

軛「随分お早いご連絡ですね。」

墨宇「ええ。・・・・官僚の保身には頭が下がるわ。七年前の事案とはいえ、記憶が、残っていたわ。・・・・はい。これ。」

軛「ありがとうございます。」

墨宇「段ボール、二、三個分、あったかしら? それ。写真だけ。

・・・・・・・本丸から言うと、”沢井屋”、元ワシントン領事館総領事。・・・・・沢井屋王国の王様よ。」

軛「アメリカ? 本件は、オーストラリアですよね? しかも、ワシントン総領事?」

墨宇「日本の流れはそう。沢井屋が、外務省に、圧力をかけ、捜索は打ち切り。正式な死亡が決定された。後生大事に取ってあったメモと議事録を、時系列で、追いかけると、沢井屋に辿り着く。

ただ、問題は、沢井屋より、上流部にある。」

軛「沢井屋を動かした人間がいる」

墨宇「そう。・・・・・アメリカ自由経済のフィクサー。闇の中の、闇。・・・・”エクリプス”よ。」

軛「・・・・・とんだ大物が、出てきましたね。」

墨宇「ええ、その世界じゃわりと有名な話。自らを、アメリカ貴族と言い、合衆国大統領になりたければ、彼に、頭を下げなければならない、とまで言われている人物。」

軛「私も聞いたことがあります。表向き、政財界の顔利きですが、クスリ、武器、傭兵。ブラックマーケットの重鎮。CIAとマフィアが、最も恐れる人物と、言われている。」

墨宇「人身売買なんて彼にしてみたら、おままごとよ。どういう理由で、”露木あづさ”が選ばれたのかは分からない。でも、選ばれた以上、彼女は、表の世界から、消えるしかない。」

軛「露木あづさは、エクリプスに誘拐された、って事ですか?」

墨宇「証拠はない。けれど、話を追っていくと、どうしても、そうなる。・・・・考えてみて?ワシントン総領事が、動くことなんて、ある? ないわ。あり得ない。」

軛「エクリプスと、沢井屋に、繋がりは、あるんですか?」

墨宇「表向きの繋がりは、嫌ってほど、あるわ。裏までは、分からないけど。証拠がない、だけで。

私から言える事は、あなたのボス? あまり欲をかかない方がいいわ。国をけしかけて戦争を起こすような相手よ?日本のヤクザ風情が、喧嘩できる相手だと思って?」

軛「・・・・・。」

墨宇「利口なあなたなら、分かると思うけど。

それからもう一人。アメリカのネズミ・・・・、今の大統領なんて、エクリプスの傀儡なんだから、エクリプスなんでしょうけど、その、ネズミがいるわ。最近、やたらめったら、アメリカに擦り寄って、経産省、財務相に、外圧をかけている人物。」

軛「・・・・・・”松柄”元、財務省事務次官。」

墨宇「あたり。露木あづさの件だって、沢井屋だけでなく、その、松柄からも、外務省に、揺さぶりがかけられたのよ。」

軛「二人は、グル」

墨宇「グルって言うか、仲間・・・・・エクリプスの、日本の、子飼い、って所かしら。今だって、アメリカの後ろ盾があるから、好き放題、やってるじゃない。奴は、要注意よ。

・・・・・喧嘩する相手は、選びなさい。」

軛「貴重なお時間を、ありがとうございました。墨宇先生。」

墨宇「いいのよ。私もその情報、じゅうぶんに、使わせてもらうから。」

バタン

軛「ありがとうございました。」

墨宇「・・・・・じゃ、出して」

ドライバー「かしこまりました」

ドゥドゥドゥドゥドゥ・・・・・ドォドドドドドドォドドォォォォオオ・・・・・ ・・・ ・・






皇「『捜索打ち切りに政府の関与か?!!』『日本政府は失踪者を何故見殺しにしたのか?!』、極めつけは『政府に殺された女!』、いやいやいや。・・・・・ネタを小出しにしてるな。」

火野「政府が関与しているっていうのを、仄めかしているからね。・・・・・ま、実際、打ち切り決めたのは、政府だし。」

皇「相変わらず、どこの誰か、分からない、スポンサーの意図を汲んで、ゴシップ週刊誌が、掲載しているのか?」

火野「ええ。・・・・・・書いているライターも、ゴースト。」

皇「はぁ?」

火野「出来上がっている原稿を、アルバイトに、丸写し、させているだけ。批判があれば、お詫びの広告をだして、また、違う、アルバイトに書かせる。まるで昭和のやり方よ。」

皇「・・・・・・徹底してるな。・・・・・いよいよ、この、ボンクラ記事に、真実味が出てきた、ってわけか。」

火野「そうよ。大手新聞社は、こんな、ウラが取れない記事に時間も労力も割けないけど、スキャンダル大好き、イデオロギー誘発週刊誌は、もう動いている。もう、恰好の的よ、イデオロギー砲の。」

皇「・・・売れる臭いがするもんな。特に、政府が絡んだ、スキャンダルじゃ。」

火野「でも危ないのよ、この手の記事は。・・・・今のところ、ただの噂話を乗せているだけ。信憑性がない。逆に、イデオロギー砲週刊誌は、大衆に、火をつけやすい。」

皇「・・・・・正常な思考の人間なら、まず、手を出さないわな。」

火野「そう。何の根拠もないのに、火をつけて、煽って、煽って、・・・・・・最後に、何も、出て来なかったら、どうするつもり? 煽り方、火のくべ方、コントロールできなきゃ意味がない。・・・・・・これ、簡単に、火がついて、大炎上よ。可燃性が強いネタだから。」

皇「お前は、心中は、ごめんってことか。」

火野「当然じゃない。臆病くらいで丁度いい。政府相手に記事を書く時はね。

だってこれ、完全に、政府の人間を、名指ししているのと、同じよ?」




大沢「ジュジュ、上手く書けてるじゃねぇか。この週刊誌! なぁ!」

ジュジュ「はい、ありがとうございます。」

大沢「まだまだ・・・・もう少し、焦らせぇ。世間が、よろめき立った時に、次の一手を、出せ。・・・・・・・一度、火がついた噂は、なかなか、消えない。消えなくていいんだ。噂が、噂を呼べばいい。

今は、噂話程度でいいんだ。『死んだ人間が生きていた?』『捜索を打ち切ったのは政府だ!』『政府に殺された女』、まぁ、これだけでいい。『政府に圧力をかけた元官僚』『生きていられたら困る誰か!』『政府は人身売買を黙殺!』まだまだネタはあるんだぜぇ? なぁ?

あいつ等、動きはあるのか?」

ジュジュ「いえ、まだ。目立った動きはありません。・・・・ゴシップ週刊誌だと高を括っているものと、思われます。」

大沢「じゃぁ、次は、軽く、証拠を出すか。・・・・・手書きのメモか、なんか、あるだろ?あえて、手書きのメモを出せ。いかにもぉ~って感じのな。

世間は、またバカ話が書いてあるって思うが、分かる人間には、戦々恐々モンだろ? ホントの事が、書いてあるんだから。」

ジュジュ「分かりました。精査して、掲載させます。」

大沢「まったくお前も、墨宇ちゃんも、いい仕事、してくれるわぁ なぁ? ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」




染脇「出たねぇ、週刊誌、まさに政界スキャンダルだよ、『人殺し政府! 捜索打ち切り要請に官僚の影!!!!』、影だってさぁ?あっはっはっは!」

議員「笑い事じゃないですよ、染脇さん。」

染脇「だって可笑しいでしょう? 人殺し政府だって。」

議員「人聞きが悪い記事、書きやがって・・・・」

染脇「僕、七年前は、政府にいませんでしたからねぇ。関係ないっちゃぁ関係ないんで。まあ、あの時、太臣やってた、皆さんは、さぞ、大変でしょうなぁ。心痛、お察し、いたしますよぉ。あっはっはっは!」

議員「そりゃぁ私もそうですけど。でも、一派の幹部が、疑惑の渦中にいれば、いやでも、私のような、下っ端まで、影響が出る。」

染脇「皆さんも、僕のように、派閥に属さず、活動すればいいじゃないですか! ・・・・組閣に呼ばれませんけどね? あっはっはっはっは!!」

議員「染脇さんはいいですよ、そうは言っても、先代先生からの縁故がある。私のような、地方出身とは、わけが違う。」

議員「私なんか、党の、党員の募集組、出身ですから、嫌でも、派閥に属さないと、やっていけません。」

染脇「いやいやいや。・・・・・書類選考、面接選考を抜けて、議員になられたわけじゃないですか? 僕のような、お坊ちゃん、世襲議員とは、面構えが違いますよ。先生方は。」

議員「地盤を持ってらっしゃる染脇さんの方が、強いじゃないですか、事実上。」

議員「若手ナンバーワンですからね。派閥に入らなくても、大臣に、お声がかかるじゃないですか。」

染脇「僕なんかまだまだですよ。親父には、まだ、総理大臣は、早いって、言われていますから。僕が、総理大臣になると、よく思っていない、親父の仇敵連中が、まだ、のさばっていますからね。そういうのは、親父とやってくれと思う。僕は関係ないじゃないですか。ほんと、ジジイ同士の喧嘩は、迷惑ですよ。」

議員「いや、役員先生方にそんな、事、私達は、言えませんよ。染脇さんだから、言えるんであって。」

染脇「まあ、そうね。そうかも、知れませんね。あっはっはっはっはっは!」

議員「その、外務省に、強く影響力のある、官僚っていうのは、誰なんでしょうね? 七年前だから、まだ、記憶に残っている人だって、いるでしょうに。」

議員「不祥事は不祥事でしょうからね。・・・・済んだ事ととは言え。」

染脇「ええ。週刊誌は、昔の事を、ほじくり返すのが、好きだから。わざわざ、お墓を、掘り起こさなくても、いいでしょうに。ねぇ。」

議員「墨宇先生は、どう思いますか?この、記事。」

染脇「そりゃぁ決まっているでしょう。我が党きっての、人権派。・・・・・許せるはずが、ない。でしょ?墨宇先生。」

墨宇「・・・・その話が、事実ならば、・・・・日本政府は、邦人を、文字通り、見殺しにしたことになる。もし、仮に、それが、本当だったら、ですよ?」

議員「それは当然ですよ。私も、そう思います。」

議員「ただ、野党に、とんでもないエサを与えてしまうことになる。・・・・・・場合に寄ったら、政権が保ちませんよ?」

染脇「事実、持ちこたえられないでしょうね。人を、殺しているんだし。そんな政府に、政権を、任せようなんて、国民が、思うと思いますか?思いませんよ。・・・・・政府は、即刻、解散するしかない。」

議員「そうなったら、染脇さん。染脇さんの、出番じゃないですか?」

染脇「いや、まだ、僕の出番ではない。もう少し、先ですよ。ただ、今の政権は、早々に、幕引きを願いたいですがね。」

墨宇「染脇先生。党内政治は、あまり、よろしくありませんよ。足を引っ張るより、協調性を、大事にしていかないと、野党に、そこを突かれる。」

染脇「いやぁ、墨宇先生には、敵わないなぁ。」


染脇「ねぇ墨宇ちゃん。・・・・外務省の死亡関与、もう調べがついているんだろ? 僕も、ひとくち、乗せて、欲しいなぁ・・・・」

墨宇「さあどうでしょう?」

染脇「さっき見ていただろ?脇の甘い地方議会出身と違って、僕は、種馬に乗っかっていたいだけなんだよ。」

墨宇「勝ち馬です、先生。・・・・先生の場合は、種馬が正しいとは、思いますけど。」

染脇「墨宇ちゃんだって僕の子種、欲しいだろ?そうすれば、君の、立場は、安泰だ。」

墨宇「ご冗談を。先生にはもっと相応しい、先代先生が見染めた、女性陣が、いらっしゃるんじゃないんですか?」

染脇「・・・・・・。はぁ。まったく、その通りだよ。今の日本の法律じゃ妻は、一人だけ。・・・・僕の家みたいな所は、血筋が大事だからね。こんな、バカでも、血筋だけは、重宝される。女が、欲しいのは、僕じゃない。血筋の方さ。・・・・・・・・・でもね、墨宇ちゃん。遊びだったら、好きなだけ遊んでいいって言われているんだ。」

墨宇「では先生は、種馬ではなく、当て馬の方ですね。」

染脇「面白い事を言うねぇ。僕もそう思うさ。・・・・・当て馬の人生だったら、さぞ楽だった、ろうって。

本題だ。・・・・・墨宇ちゃん。犯人、知ってんだろう?」

墨宇「犯罪者じゃありませんから、犯人って言い方は、語弊がありますよ。」

染脇「食えない女だねぇ、君は。」

墨宇「お褒めのお言葉、痛み入ります。」




染脇「どうだ? 調べはついているのか?」

秘書「ええ、それが、・・・・・・」

染脇「なんだ? 分からなかったのか?」

秘書「申し訳ありません。週刊誌編集部を探ってみましたが、話の出所が、・・・・・隠ぺいされていました。」

染脇「ほぉ。・・・このご時世?そんな律儀なやり方をする連中がいるんだ?」

秘書「記事自体、持ち込み企画で、更に、その持ち込んで来た人間は、アルバイトで雇った大学生。その大学生を雇った会社は、ペーパーカンパニー。FAXだけ、送られてきて、その内容を、データに、移し替えるだけ。」

染脇「話の出所自体は、ネットだろ?」

秘書「そこが少々、不明でして。ネットに、情報を流したのも、そのペーパーカンパニーの可能性があります。」

染脇「仕組まれていた、って話か?」

秘書「はい。その一方で、内容の真偽については、・・・・・同様の事案が、確かに、七年前、ございました。オーストラリアで、ワーキングホリデー中の女性が、行方不明。日本政府が、捜索打ち切りを打診。直後、遺体なしで、死亡確定。」

染脇「誰が聞いても乱暴な話だよ。死体もないのに、死亡だろう?」

秘書「はい。正式な議事録では外務省大臣がサインして決済を受けています。手続き的には何ら問題はありません。」

染脇「表向きはな。・・・ま、それだって、叩かれる要因だけど。なんで失踪者の打ち切りを決めたんだ!って言う。」

秘書「その件で、外務省に働きかけた人物が記録されています。あくまで電話での、助言、という事で。”沢井屋”ワシントン総領事、”松柄”財務省事務次官のお二人です、共に、当時の肩書ですが。」

染脇「松柄? ・・・・沢井屋?」

秘書「沢井屋総領事、松柄事務次官の助言後、方針が変わり、くだんの女性の、オーストラリア捜索の打ち切り。死亡の届けが出されました。」

染脇「じゃ、犯人は、そいつらじゃないか。」

秘書「先生。ここは慎重に。彼等は、限りなく、この件に関わっている人間であることは、確かですが、”白”です。彼等は、助言を行ったに、過ぎない。決定したのは、外務大臣です。責任は、外務大臣にある。」

染脇「沢井屋は、今、国連大使だぞ? 軽々、呼びつけられる話でもない。それに松柄か。・・・・どっちが本命だ?両方か?」

秘書「ええ、今の所、両氏ともに、中心人物であると、言えます。」

染脇「・・・・・・・どうして、ワシントン総領事と、財務省の事務次官が、オーストラリアの失踪に、口を、挟むんだ? おかしいだろ?」

秘書「残念ながら、そこまでは、分かっておりません。申し訳ありません。」

染脇「いや、いい。理由なんか、別に、どうだっていい。僕が知りたいのは、これから、お友達として、続けて行けるかどうかって所だけだ。松柄は友達、失格だ。沢井屋さんとも、な。

いいか、松柄との関りは、ゼロクリアしろ。・・・最悪、表向きの、誰が見ても差し支えないものは、第三者を、噛ませ。他は全部、消去だ。いいな?」

秘書「かしこまりました。」




野党議員「週刊誌報道によりますと、数年前、オーストラリアに旅行中の女性がぁ、失踪した際、ニッポン政府がぁ、その捜索を打ち切らせたと、ありますがぁ、これは、本当ですか?」

外務省大臣「はい。お答えします。ですから、先程来、申し上げておりますように、週刊誌報道を、鵜呑みにされても、困ります。」

野党議員「委員長!

じゃぁ、この報道は、嘘、という事で、よろしいですね?」

外務大臣「はい。お答えします。まずですね、我が方、外務省といたしましても、週刊誌とか新聞とか、ネットとか、全部、書かれた事を、質問されても、困ると言っているんです。嘘とか、ホントとか、言われても、困りますし、ここは、あなた、国会ですよ? 国会の真偽の場ですよ? 半分デマみたいな話を、されても、困る。よろしいですか?」

野党議員「委員長!

週刊誌報道によると、”沢井屋”元、ワシントン総領事、それからぁ、”松柄”元、財務省事務次官の、関与を示唆した、記事が載っています。これぇ、本当ですか?」

外務大臣「はい。お答えします。あの、ですから、本当とか、聞かれても、困ると言っているんです。週刊誌に直接、聞けば、いいじゃないですか?本当か、どうか? 私、知りませんよ」

あははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!! 笑ってないで大臣は答えろ! 嘘をつくな! まじめにやれぇぇぇぇぇ!!! まじめにやるのはそっちの方だ!!!!

染脇「墨宇ちゃん、こりゃぁ分が悪いねぇ、いつまでごまかし続けられるかどうか」

墨宇「・・・・・。染脇先生。外務大臣がおっしゃてる事の方が、今は、正しいですよ。週刊誌ベースの、根拠のない話をされても、困ります。」

染脇「そ。”今は”ね」

墨宇「・・・・・・」

染脇「次、スキャンダルを出されたら、こうはいかなくなるよ?」

墨宇「先生。なにかご存知なのですか?」

染脇「いぃいや。・・・墨宇ちゃんこそ、なにか、知ってんじゃないの? あ、あああ、ホコリがついてるから、取ってあげるよ」

墨宇「・・・・。先生。・・・・・・手に蚊が、ついておられますよ?」

染脇「いたい、いたい、いたい、いたい、いたいよ、もう、つねんないでよ、いたいなぁ」






社長「松柄さん。まぁ今回、輸出分の仕事が終わったら、おたくとの、取り引きを、解消しようと、思う。」

松柄「・・・・・何故です、社長?」

社長「おたくには大分、世話になった。コンサル以上のコンサルだよ。」

松柄「もしかして、あの、週刊誌の? あんなの、嘘ですよ、ヤラセですよ」

社長「それはそれで構わないんだ。うちとしては。週刊誌がどうこうじゃなくてね。松柄さん。悪いことは言わない。何事にも、潮時ってもんが、あるんだ。」

松柄「・・・・・・・。」



社長「しばらく、おたくの、契約を解除しようと、思う。」

松柄「ええ、」

社長「大分、儲けさせてもらったよ。ただ。・・・・・業界の中じゃぁ、浮いてしまってねぇ。吊し上げだ。仕事して、儲けて、逆に、吊し上げ。・・・・・クソッ

あの週刊誌が出てから、周りの見方が変わった。

おたくと、組んでいると、納品、出来ないんだ。」

松柄「それは私とは、関係ない話でしょ? おたくの会社の問題だ」

社長「ああ、そうだ。うちの会社の問題だ。おたくと、組んだばっかりに、・・・・・今更、こんな目にあうなんてなぁ。」



社長「色々、便宜はかってもらって、申し訳ないんだけど、松江さん。・・・・・・うちは、もう、おたくと取引できる、余力がないかも知れない。」

松柄「・・・・・・」

社長「原因は、あんたも、分かっているだろう? あの、デマカセ週刊誌だ。あれのおかげで、あんたがうちの会社に携わっている、ってだけで、取り引き、できなくなるんだ。

海外相手の商売ならいい。うちみたいな、日本国内の会社は、だめだ。

あんたに義理を通そうとしても、・・・・うちの社員にも、飯を、食わしてやらなきゃならない。ここまでだよ。松柄さん。」



社長「あんた、悪い事してんなぁ松柄さんよぉ!

聞いたぜ? あそこの、会社。ええぇなんだっけ? あそこの社長に言われたわ。うちの会社にだけ関税髙く吊り上げて、俺んとこは、低く抑えたって。そんなわけあるかぁ!って言ってやったんだけど、裏から手ぇまわしてぇ、そういうの、やったんだろ?

コンサルタントなんて、名ばかりで、悪ぃ商売してんなぁ。

まぁ、うちは、おたくのおかげで、儲かってるから、いいけどさ。まぁ、もうちょっと、がんばってくれよ、なぁ、松柄さんよぉ!」



社長「あんたのやり口は分かってんだ! 気に入らない会社を踏み絵にして、踏んだ会社だけ、生き残らせる。うまいコンサルタントだよなぁ?

あああああ、そうやって、粗利を、儲けてんだろ! それで、利益が出せなくなった会社は、おさらばポイだ。なぁ? みんな、あんたの手駒になるって、寸法だ。あんたに逆らわない限り、うまく、やっていけるんだからなぁ?」

松柄「それが商売ってやつじゃないのか?社長? あんただって、私と組んで、儲けただろ?それを忘れて、なに、言ってんだ?」

社長「忘れちゃいねぇよ! カッスカスなうちみたいな、会社は、お払い箱だろうが! 助けてくれよ、松柄さんよぉ?なぁ? 金がねぇけど、助けてくれよぉ、なぁ?」

松柄「ふざけんな!こっちも商売だ、カスにかまってる暇なんかねぇんだよ!」

議員「まあまあ、社長も松江さんも、落ち着いて」

社長「もうあんたの顔をみる事もねぇわ、あれだろ? 今度、逮捕されるんだろ?」

松柄「あああ? 悪いこともしてないのに逮捕されるわけないだろ?」

社長「人殺しが!」

議員「まあまあ、社長!社長!」

松柄「貧乏会社ともこれでおさらばだ!」




議員「最近、おかしな記事が出回っているようですね。松柄さん。」

松柄「ええ。商売あがったりですよ。まったく。」

議員「・・・・・・言っちゃなんだけど、松柄さん。本当に、やってないの?」

松柄「はぁ?」

議員「怒んない。怒んない。事務次官様でしょ?民間での最高峰、事務次官まで上り詰めた男が、そんな、事、するわけ、ないですよね?」

松柄「ええ、まぁ。」

議員「我々も、官民、一体の、事業すから。」

松柄「産官民です、先生。」

議員「そうだってけ?まぁ、いいんですけど。まあ、我々も、気を付けると、しましょう。変な、噂が、立たないように。」




与党議員「証拠を出しなさいよ!証拠を!」

野党議員「委員長! では、我々は、外務省に、当時の、オーストラリア失踪の、件、文書の開示を請求しますよ! これなら文句ないでしょ? 出せないなんて言わせませんよ!」

外務大臣「委員長! はい、お答えします。ですが、外務省の、文書、保管期限は、五年と、決まっております。七年前の文書なんて、残っている訳、ないじゃないですか! 無理言わないで下さい!」

野党議員「委員長! ほぁらぁ!都合よく、廃棄したんでしょ! 松柄事務次官と、沢井屋総領事を守るために! 隠ぺいだ! 政府は隠ぺいしている!」

外務大臣「委員長、黙らせて下さい! お答えします! 保存期間は、五年と、決まっていると、言っているでしょうが!」

野党議員「委員長、だったら、七年前から在籍している職員が、いるでしょう?覚えてますよ、その職員を、召喚します、召喚要請します!」

外務大臣「委員長! お答えします! あのねぇ、職員だって、同じ部署に、ずっと、いるわけじゃないんですよ? 課をぐるぐる、ぐるぐる、回るんだから!いい加減な事を言うな!」

野党議員「委員長、そうだ。松柄元事務次官を召喚すればいいじゃないか! 本人を呼べば、済む話じゃないか! これは、与党も、政府も、反対させませんよ!」

与党議員「委員長! 私も賛成です! 本人の口から、弁明させればいいじゃないですか!話はすぐ済む!」

外務大臣「委員長、お答えします!ちょっと待って、乱暴に、話をすすめるなぁ!」

野党議員「委員長! 百条委員会でもなんでもいいよ! 松柄事務次官を呼んでよ!」

与党議員「委員長 元、事務次官です!元!」




野党議員「委員長! その、失踪した女性。生きているんだったら、日本政府として、救出すべきなんじゃないんですか! また見殺しにするんですか!」

外務大臣「委員長 お答えします! さっきから、連日、答弁しています通り、真実かそうでないか分からない話で、だいたい、その女性の失踪だって、本当かどうかも分からないのに、生きているか死んでいるのか、だから、その、・・・・救出もなにも、ないわけです、分かります? あなた、議論が、破綻しているんですよ!」

野党議員「委員長! 大臣いいですか、マレーシア政府に、連絡すれば済む話でしょ?」

外務大臣「委員長 お答えします。 その、誰だか分からない人間を、確認、しようがないでしょう? どこの誰なんですか?それぇ?」

野党議員「委員長! 日本人なら、戸籍があるはずです、戸籍を確認すればいいじゃないですか? ちがいますか?」

外務大臣「委員長 お答えします だから、よく分からない人間の証明を、日本政府は、出来ないって、言っているんですよ!」

野党議員「委員長 総理の意見を伺いと思います。」

委員長「内閣、総理大臣!」

総理大臣「ええ、お答えします。ええ、我が国といたしましてはぁ。もし、仮に、本当に、我が国の、国民だった場合、その場合は、なんらかの手段をもって、帰国させるべきぃだと、考えてぇ、おります。」

野党議員「委員長 ほらぁ!総理は今、そう、言いましたよ!帰国させるべきだって! 大臣、聞きましたよね?」

外務大臣「委員長 お答えします 総理がおっしゃったのは、日本人だと、確認された場合であって、日本人かどうかも分からない人間を、日本政府が、帰国させるなんて、出来る訳ないでしょう? バカなのか、あんたは?」

野党議員「委員長! バカなのは、お前だ!」

委員長「休憩! 休憩! 休憩! 一旦休憩! 委員会を一時、休憩します!」トントン!

外務大臣「委員長、お答えします! 出直してこい、この野郎!」




野党議員「ええ、ここに、くだんのオーストラリアで失踪した、女性への、オーストラリア政府に向けた、捜索打ち切りの要望書、その、やりとりの記録があります。我々は、独自のルートで、入手しました。」

そんなもん、証拠になるか! でっちあげだ! 私文書偽造!

野党議員「これは、ええ、先日、大臣は、文書の保管期限は、五年だから、外務省には残っていないと、おっしゃっていました。間違いないですね?」

委員長「大臣」

外務大臣「委員長、お答えします、間違いありません」

野党議員「では、これは、どこから入手したかと言えば、怪文書でも何でもなく、オーストラリア大使館に、保管してあった、文書です。

いいですか? 皆さん、オーストラリア大使館に、保管されていた文書を、よもや、偽物とは、おっしゃいませんよねぇ? これには、当時の、外務大臣のサインが入っています。正式に、捜索願いの打ち切りを申し出る旨の内容です。

外務大臣。・・・・これは、外務省が、捜索願いの打ち切りを要請した、これで、間違いありませんよね? 認めますか?」

外務大臣「委員長 お答えします・・・・・・・・認めます!」

バチン! バチン! ピカ バチン! 外務大臣が認めたぞ! 新聞一面だ! 外務大臣が、失踪女性の捜索願い打ち切りを要請を、認めた! バチン パチン!!!

野党議員「委員長。では、総理大臣にお伺いします。外務大臣は、お認めになられました。この件は、日本政府として、オーストラリアに要請した事ですか? 間違いないですか?」

委員長「内閣、総理大臣」

総理大臣「ええ。我が国といたしましては、適切に処理するよう、外務大臣に、指示、しております。でぇあるからしてぇ、それに伴って、適切に、処理したものと、考えてぇおります」

野党議員「総理、日本政府が指示したんで、間違いありませんよね?」

委員長「内閣総理大臣」

総理大臣「ええ、ですから、外務大臣に、適切に、処理するよう、指示した、と、考えております」

野党議員「答えになってない! 外務省が勝手に、やったんですか? 総理の判断ではなく、勝手に、やったんですか? そうだったとしたら、外務省の暴走ですよ? 許されるんですか? どうなんですか、外務大臣?」

外務大臣「委員長、お答えします。個別事案につきましては、省内で、検討実施する場合もございます。・・・・ですので、外務省が、独自の判断で、行った、と、記憶しております」

バチン! バチン! 外務省単独! 一面書き換えろ、外務省の暴走だ! 政府は外務省をコントロールできていないのか! バチン!バチン! ピカピカ!

野党議員「これは問題ですよ。いち省庁が、政府の指示を聞かず、暴走した。しかも、邦人を、見殺しにした、許されるわけがない! 政府も同罪だ! ちがいますか!」

委員長「内閣、総理大臣」

総理大臣「ええ、外務大臣。当時の外務大臣であられますが、任命した責任は、組閣した、総理大臣に、あると、思っております。」

野党議員「詭弁だ!詭弁、総理、いいですか、それじゃぁ、当時の総理大臣が、悪いと、そう、おっしゃてるようにしか、聞こえませんが?」

委員長「内閣総理大臣」

総理大臣「ええ、ですから、そう、お答えしております。前前、総理大臣に、責任が、あると、考えております。現、内閣には、まるで、関係ない、問題だと、考えております!」

野党議員「委員長、総理の発言には、問題があります! これは、不信任決議を取る、必要があると、考えますが、皆さん、いかがですか!」

委員長「休憩! 休憩! 本委員会を、一時、休憩いたします! 休憩!」トントン!!




大沢「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ! いよいよ、国会中継も、プロレス並みに、面白くなってきたなぁ。真偽不明の、ネット記事からはじまった、露木あづさの話が、いよいよ、政府が、認めるところまで来た。面白くなってきたぜぇ!」

ジュジュ「松柄まわりは、かなり、警戒している模様です。」

大沢「そりゃぁ警戒もするわなぁ。日本中、敵、だらけだ。好き放題やってきたんだから、刺されても、悔いないだろう? あ、刺されたら、金の、回収が、できねぇなぁ。・・・・こっちも、慎重に、やれぇ?いいなぁ?」

ジュジュ「・・・・ええ、心得ております。」




染脇「国会も、テレビも、捜索打切り、死亡認定の話題で、持ちきりだ。・・・・総理大臣も運がない。悪い時に、総理大臣になんか、なっちゃうから。」

墨宇「・・・・そうですね」

染脇「墨宇ちゃんさぁ、僕の下で、働く気ぃない?」

墨宇「随分と、単刀直入ですね」

染脇「そりゃそうだよ、僕は、昔から、墨宇ちゃんの能力を高く、買っているんだから。・・・・一人でやるたって、限界があるだろう? 若手ナンバーワンの僕の派閥に入るべきだと、思うけど」

墨宇「先生。・・・・まだ先生には力不足だと思いますよ」

染脇「当然だよ。まだ、総理の椅子に座る気はない。今はタイミングも悪いし、仲間も少ない。でも、十年の間には、椅子には、座る気だ。その為の準備を、今からしておかないと、間に合わないからね。」

墨宇「それは、気の長い、話で。」

染脇「悪いようには、しないからさ。」

墨宇「お茶、ごちそうさまでした。・・・・・考えておきましょう。」

染脇「くれぐれも、墨宇ちゃん。山鳩の方に、着くなんて事の、ないように、ね。」

墨宇「染脇先生でも、気にかける、先生が、いらっしゃるんですね」

染脇「意外かい? ハト君はね、まるっきり素性がおんなじだから、好きじゃないんだよ。世襲だし、男だし、・・・・なに考えてるか分からないし、古参の先生に、気に入られているし、腹、立つだろ?」

墨宇「先生と違って、生意気じゃないからじゃ、ないですか? でも人気だけなら、染脇先生の方が、上でしょうし。」

染脇「ま、人気だけ、ならね。ほら、僕、顔が、いいじゃない? ハト君はさぁ、地味だからさぁ。」

墨宇「・・・・その時、考えますよ。もしかしたら、私が、山鳩先生、染脇先生を、使っている可能性だって、ありますからね。」

染脇「怖い怖い。・・・・そん時は、役職、つけてくれよ?」

墨宇「ごちそうさまでした。」

染脇「今、外じゃぁ爺さん連中が、七年前の、墓起こしで、ドタバタやっているから、落ち着くまで、ここで、避難していると、いいよ。」

墨宇「どこもかしこも、静かな所は、ありませんね。」




大沢「・・・・・そもそも、そのぉ、”松柄”って奴ぁ、なんなんだ?何者なんだ? なんでそんなに偉いんだ?」

ジュジュ「事務次官っていう立場もありますが、元ですけど。その、元、事務次官という立場を最大限利用して、資本主義経済を、裏から、動かしている人物。でしょうか。松柄は、現在、企業コンサルタントを生業としております。コンサルタントなんていうのは方便で、実際には、企業から、上納金を、収めさせて、利益を得ています。」

大沢「やってる事は、ヤクザじゃねぇか」

ジュジュ「・・・・ヤクザより、質が悪いんですよ、大沢さん。ヤクザは、ヤクザなりに、仁義を通されていらっしゃると、思います。仁義を通さないヤクザ稼業なんて、チンピラ以下だと、思います。」

大沢「お前も言うように、なったねぇ。ええ?」

ジュジュ「松柄の最大の後ろ盾は、アメリカ。日本の産業の、七割は、輸入、輸出問わず、海外との貿易。・・・・松柄は、その七割の産業を、自分の意のままに、操る事が出来る。言わば、日本の、産業、資本主義は、松柄に握られていると言っても過言ではありません。利益の高い企業から、上納金を納めさせ、離反する企業は、貿易不均衡で、経営不振に陥らせまた、同業他社に便宜を図り、経営破綻させる。・・・・利口な経営者なら、奴に、尻尾を振るでしょう。

墨宇先生の調べによれば、政治家の何人かは、既に、傀儡されている模様です。奴のバックアップで、当選した、議員も、少なくないでしょうから。

言わば、この国の、王様です。」

大沢「大様ねぇ・・・・」

ジュジュ「”露木あづさ”の件でもあるように、エクリプスとの繋がりは、明白でしょう。・・・・・だから余計に、強気なんです。誰も、奴を、止める人間が、いない。止める、術がない。

ただ。我々の工作により・・・・・・・週刊誌報道、国会での追及で、潮目が、変わりつつあります。いくら、企業を自由に動かせようが、世論の正論には、敵うはずがありません。良識的な、経営者、株主も、少なからず、存在すると言う事でしょう。」

大沢「なぁジュジュ・・・・。俺達、チンピラヤクザは正義の味方でも何でもねぇ。”松柄”が何者だろうと、構わねぇ。ニッポンの王様だろうが、な。

俺達の目的は、ビジネスだ。たんまり、金を、いただくことだ。その為に、”露木あづさ”を買ったんだ。・・・・・・・これから次のフェーズに入るぞ。松柄から、金を、ふんだくる。ビタ一文、残さず、ふんだくれ。いいな?」

ジュジュ「・・・・・・かしこまりました。」

大沢「どっちが、本物の、チンピラ稼業か、勝負しようぜ、なぁ?」






ポァン ポァン ポァンポァン ・・・・

ウィィィィィィン

社長「・・・・・・松柄さん、一人で来ただろうな?」

松柄「あんた何の用件があって、私を、こんな、所に、呼び出したんだ? 私を、殺す気か? すぐに警察を呼べるようにしてあるぞ? あ?」

社長「違う。あんたを殺すなんて、大そうなこと、私に、できるか!」

松柄「じゃ、なんだ? 金、出して、また、仕事、やらせて、もらいたいのか? だったら頭を下げろ。そして、金を出せ。そうしたら、許してやる。」

社長「・・・・・・あんたは、本当のクズだ。・・・・・でも、残念だ。私には、もう、金がない。仕事を続けるだけの余力がない。・・・・・・この前のが、手切れ金だ。」

松柄「・・・・・・・。じゃ、何の用だ?私は、貧乏人と違って、暇じゃないんだ。帰らせてもらう」ウィィィィ・・・・

社長「待て! 私は、頼まれたんだ。伝言を。」

松柄「伝言だとぉ・・・?」

社長「ああ。あんたを、人気のない所に呼び出して、伝言を、頼まれたんだ。」

松柄「あんたも、早々、暇人だな・・・・・?伝言係りか? それで幾ら、もらったんだ?あ? 私をハメて、幾ら、もらったんだ?」

社長「そんな事はどうでもいい。もう、あんたと会う事もない。いいか、よく聞け、『次の週刊誌で、お前が、外務省に、口添えした、証拠をさらす。これは決定的な証拠だ。お前は人殺しとして、世論に断罪され、すべてを失う。方法は一つ。俺に金を払え。身代金だ。金額は、三十億円。お前にとっては安い金だろう。それで全てが許されるんだからな。』、だとよ。」

松柄「・・・・・・・」

社長「あんた、聞いていたのか?」

松柄「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

私に、命令するなぁぁぁぁぁぁああああぁああぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!なにが、三十億だ! バカか! バカなのか!

誰が払う、そんな金えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!!!

おい、お前ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! その、犯人と、お前は、繋がってんのか! なぁ、おい! いいか!今すぐ、警察に、通報してやる! お前もろとも、逮捕してやる! いいか、すぐ、警察がくるぞ! お前は終わりだ!お前の先にいる、おかしな連中も、お終いだ!

どうした? 私に、許しを請わないのか? なぁ? 許して下さい、ごめんなさいと言え! そうすれば許してやる! 警察に連絡しないでおいてやる! ほら、どうした! 言え!」

社長「あんたは、つくづく、バカだなぁ。・・・・・・私には、失うものなんか、何もないんだ。だから、誰か、知らないが、あんたに、言伝を頼まれたのを、了承したんだ。別に、今更、警察に、捕まろうが、なんだろうが、関係ない。警察が来て、困るのは、あんたの方だろ? 私を散々、恐喝してきたんだ、ふん。・・・・・捕まるのは、あんただ!」

松柄「知るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!!! 私を捕まえる事が出来る人間なんて、ニッポンにいるわけないんだよぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!」

社長「あんたは、終わりだ。」

松柄「お前こそ、終わりだ!」




松柄「・・・・・あれもフェイク、これも、フェイク。どれもこれも、全部、かたちだけの、ペーパーカンパニー。まるで、中国の企業と、同じ、やり方じゃないか!」

バァン!!!

部下「・・・・・。」

松柄「週刊誌に、記事を、書かせている会社は、しらみつぶしに全部、当たったんだろうな?」

部下「はい。それは、せんぶ。・・・・しかし、ぜんぶ、登記してある住所は、三畳間のアパートだったり、私書箱であったり、・・・・・コンテナ倉庫の場合もありました。そして、代表者名も、どこで調べたのか、老人ホームに入所している老人であったり、意識不明の入院患者。個人の飼っている、犬、もいました。」

松柄「犬だと? ふざけんのか!」

部下「ふざけておりません。そういう結果だった、という、報告です。松柄社長。・・・・・相手は、我々より、上手です。」

松柄「上手だから、なんだ? 引き下げれっていうのか?お前は?」

部下「いえ、そういう、わけでは・・・・・」

松柄「お前はクビだ。今すぐ消えろ。・・・・消えなければ、消すぞ。私には、そういう、力だって、持っているんだ。」

部下「・・・・・・。」

部下「しかし、松柄社長」

松柄「お前も、私に、意見をする気か? お前も消すぞ! 今すぐ、消えろ!失せろ!」

部下「・・・・・・・」

松柄「どいつもこいつも、使えない奴ばかりだ・・・・・。何者なんだ、三十億、払え? この、私に、向かって。・・・・・・腹の立つ、野郎だ。」




松柄「ああ!染脇先生! お久しぶりです、あの、企業の、パーティー以来ですね。こんな所で、ご昼食ですか?」

染脇「こんな所? ・・・・松柄さん。あなたにとっては、こんな所かも、知れませんが、僕にとっては、大変、落ち着いて食事のできる、よい、店だよ。」

松柄「・・・・これは、大変失礼いたしました。お詫びに、是非、一杯・・・・」

染脇「いや、結構。政治家たるもの、不明瞭な、献金は、受け付けないようにしているものでね。」

松柄「・・・・左様で、ございますか。」

染脇「いやぁ、連日の、外務省まわりの、話、・・・・我が党も、いよいよ、政権が維持できないかも、知れなくてね。政界再編かも、知れないんだよ。・・・・・ある意味、松江さん。あなたは、火中の栗だな。」

松柄「染脇先生。その件については、私も甚だ、迷惑しているんですよ! 根も葉もない噂で。 私と、沢井屋さんの名前が、勝手に、一人歩き、している。私は、週刊誌を、訴える! 訴えることにしました!」

染脇「ほぉ。・・・・訴える。法廷で、争う、って事ですか? ・・・・・・法廷で争うことになれば、・・・・・・痛くもない腹を、探られるようになりませんかねぇ? ま、僕には、関係ない、話ですが。」

松柄「いえ、ですが、こちらは、名誉を傷つけられたんです! 名誉回復の為にも、週刊誌を、・・・・場合に寄っては、あの、野党議員だって、訴えますよ! 私は怒っているんだ!」

染脇「それは当然でしょうねぇ。・・・・・怒っているのは、私もですよ。党を、めちゃくちゃにしてくれた、根も葉もない、噂である、あなたと、沢井屋さんにねぇ。」

松柄「・・・・・・・」

染脇「根拠のない話ですらかねぇ。あなたと、沢井屋さんに、怒りの矛先を向けるっていうのも、おかしな話ですけど。まぁ、現外務大臣、現総理大臣は、非常に、お怒りですよ。」

松柄「私も、このままで、終わるつもりはありません。・・・必ず、この、屈辱を、晴らしてみせますよ。」

染脇「あなたに、次が、あれば、の話ですけどね。・・・・・・前前外務大臣が、証人で召喚されれば、嫌でも、あなたの名前を、出す事になるでしょう。そうなれば、あなたと、外務省の関係は、明瞭だ。これ以上なく、明瞭だ。・・・・・もう、言い逃れは、出来なくなりますよ?

ま、それが、法的に、何の罪になるのか?と言われれば、そんな、罪状はない。あなたは、潔白だ。あなたの名前に、傷はつかない。しかし、経歴には、痛い程、傷がつくでしょうな。

もう、僕と、対等に、しゃべる事なんて、出来なくなりますよ? 松柄さん?」

松柄「そんな証拠は、どこにもない! 外務大臣と、私との繋がりなんて、何もない!」

染脇「・・・・・だったら、いいですけどね。

僕の場合、政権が、ガラガラポンしてくれた方が、出世できるんで、その方が、助かるんですよ。総理大臣が、失脚してくれれば、万々歳だ。ひひひひひひひ、ひひひひひひひひ、ひーっひひひひひひひひひひひひひひひ!!!」






ピーガー ガー

大沢「テステステス テステステス 聞こえるか? 事務次官様よぉ?」

松柄「・・・・・」

大沢「壊れてんのか?この無線機?」

松柄「聞こえている・・・・・・あんたが、犯人か?」

大沢「犯人? 犯人はお前だろう?殺人犯が! お前が、オーストラリア誘拐の、犯人だろうが!」

松柄「なに言ってんだ強盗犯!!」

大沢「強盗?強盗じゃねぇなぁ?詐欺・・・詐欺でもねぇなぁ、どっちかと言えば、正義の味方だ」

松柄「・・・・・・・ふざけんな! 強盗野郎!」

ガー ガーガー

大沢「悪い奴から、金を奪い返す、・・・・昔の言い方でいいなら、ネズミ小僧か、キャッツアイか、そんな所だろ? おい、自己紹介はどうだっていいんだよ、金は、持ってきたんだろうなぁ?」

松柄「・・・・・・・・。ああ。」

大沢「じゃ、見せろ。」

松柄「金は本物だ。この、車に、積んである。」

大沢「取り引きだ。」

松柄「・・・・・・・・・・・・・・待て! 私は、金を出すが、お前が、証拠を消す、信用がない。・・・・・・・・・・・取り引きが、成立しない。」

大沢「あんがい、あたまがいいな、おたく。・・・・・・これが、データだ。」

松柄「おい、今時、そんなメモリごときで、金を、渡すと、思っているのか? 大元を、お前が持っている可能性だってある。金を渡しても、証拠を、出す可能性もある。・・・・・・・金だけ、取られて、信用も失う。こんな、取り引き、成立するわけないだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

ガー ピー

大沢「そこは、信用してもらうしか、ねぇんだけどなぁ。」

松柄「取引不成立だ、クソ野郎!」

大沢「いいのか、殺人犯? 俺にはメリットしかないが、お前には、デメリットしかない。」

松柄「私こそ、メリットしかないんだよ、泥棒野郎!」

警察官「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

うおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

大沢「あらあら。・・・・警察官の皆さん、命懸けでんがな。・・・・・車に、轢かれるんなよ、轢いた方が、悪モンになっちまう。」

バタン

大沢「いくぞ」

ブルルルルゥゥゥン・・・・どぅるるるるるる・ブロオロロロォォォォオロロオロー ブロォオロォオロオー

警察官「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 逃げるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」




チッカ、チッカ、チッカ・・・・・・

部下「まさか、警察とつるんでいるとは、思ってもいませんでした。」

大沢「警察だって、あいつにとっちゃぁ、コマの一つだろ。怖い怖い。・・・・悪い奴が、権力もつと、とんでもねぇことになるな。」

部下「交渉は、不成立ですね」

大沢「まったく、延命のチャンスをくれてやったのに。もったいねぇ。なぁ?」

部下「まったくです。」

ブロロロロロォォォ・・・・ ブロロォォォ・・・・






愛川「・・・・・・なにか、見つかりましたか?」

阿久津「あ、警視正。・・・・・・・警視正も大変ですね。わざわざ現場まで。」

愛川「ええ。・・・・・・・縦割りの悪いところですよ。」

阿久津「失礼ですが、警視正より、上の方の、ご指示、なんですか?」

愛川「ええ、まあ。・・・・・・・・警視総監も、保育園の、送迎とか、お忙しいみたいですからねぇ。」

阿久津「はぁ。

犯人? 強盗? 恐喝犯も、なんでまた、こんな所に、被害者を、呼び出したんでしょうか? こんな、危ない。・・・・・・危ないですよ。」

愛川「それが目的でしょう。阿久津刑事、君、誘拐事件で、一番、リスクが高い。言い換えれば、我々が、犯人を検挙しやすいところは、どこだと、思いますか?」

阿久津「いえ、すみません。勉強不足で。」

愛川「犯人と接触する時ですよ。ですから、今回の様に、身代金?、今回、身代金って言うのか分かりませんが、金の受け渡し時、犯人を検挙しやすいんです。犯人からしてれば、こういう金の受け渡しは、リスクが高く、失敗する確率が高い、犯罪なんです。」

阿久津「今回も、失敗しましたしね。被害がなくて、なによりです。」

愛川「阿久津君。君は、おめでたい。・・・・・我々、警察が、機動隊を含めて、地元警察、高速警ら隊。いくら、税金が、使われた、分かりますか? それも、私設軍隊みたいに、警察を、コマで動かす。私は、非常に、腹立たしい限りですよ。」

阿久津「・・・・・・・。そうです、よね」

愛川「・・・・・・・、今のは、オフレコでお願いしますよ。署内で聞かれたらまずいので、こうやって、外の空気を吸いにきたんですから。」

阿久津「あ、わかります。それにしても、高速道路ですか? 奪ったら、ビューンって逃げちゃう、気だったんでしょうか?」

愛川「・・・・・・。阿久津君。『新幹線大爆破』みたこと、ありませんか?」

阿久津「いえ」

愛川「見るなら高倉健版を見た方がいいでしょう。犯人が、それを模したかどうかは分かりませんが、たぶん、現金を、高架下に、投下する方法で、奪う、つもりだったんでしょう。下を、見て下さい。うまい具合に、河川敷になっている。・・・・・地元警察の話だと、複数の、タイヤ痕があったようです。おそらく、バイク。・・・・・車一台で、逃走するよりも、複数のバイクで、ちりぢりになって逃げた方が、捕まえにくい。

敵も然るものです。」

阿久津「じゃ、本気で、三十億円を、受け取るつもりだった、って事ですか?」

愛川「そうでしょうね。」

阿久津「警視正。・・・・その、被害者。・・・・・世間で注目を浴びている、この、週刊誌の人物だと、思いますが、何者なんですか? 一般人が、三十億円なんて、用意、・・・・持っているはずがない。この人だって、何らかの、犯罪者か何かなんじゃないんですか?」

愛川「今現在、彼は、一般人で、コンサルタント会社経営者。そして、恐喝され、現金、三十億円を要求された、被害者でもある。・・・・それだけですよ。」

阿久津「それだけ? 警察を、・・・・・警視総監を動かせる人物が、一般人なわけ、ないでしょう?」

愛川「阿久津君。これ以上のオフレコは、君の為に、ならない。我々は、警察官であり、警察組織の一員であることを、忘れてはいけません。

仮に、彼が、何者であるにせよ、明確な犯罪であるならば、我々が、捕まえるまで、です。今は、その時では、ありません。」






火野「まったく、白けた、話ね。・・・・・けっきょく、なにも、証拠も証言も出てこなかった。例の元官僚と、外務大臣をつなぐパイプは、電話だけ。」

皇「それだけ出れば、問題ないんだろう。現政権は、支持率低下で、解散だ。今回の、邦人女性失踪打切り事件だって、野党が、仕組んだ、って噂すら、出ている。それも本当かどうかも、怪しい、話だけどな。」

火野「野党から出るなら、とっくの昔に、出しているわよ。・・・・疑惑の、元官僚。元事務次官、法的には、何ら、抵触していない、真っ白。おまけに言えば、その前、外務大臣だって、総理大臣だって、法的に、何かを問われる言われはない。すべてが、正式な手順を踏んだ、正式な行動。」

皇「法律的には、セーフかも知れないけど、人道的には、アウトだ。だから、そこを突っつかれて、事実上の、解散だろ?

野党も野党だ。前外務大臣を証人喚問で呼んでおいて、追及、しきれなかったんだからな。」

火野「事務次官から、電話があって、すぐ、捜索打切り、死亡認定。どう考えても、誰が聞いても、事務次官が怪しいけど、それ以上の、証拠がない以上、シロ。・・・・疑わしきは罰せず。」

皇「現政権が、倒れたんだ、野党与党ともに、それが、落としどころだ。あとは、選挙で、また決着をつけるしか、ない。」

火野「その、オーストラリアで失踪した女性だって、政府が、正式に捜索を打ち切ったから、今後改めて、捜索を行うか、と言えば、行わない。決定したことを、覆す事をしない。行政の、悪い、ところよ。」

皇「冤罪事件で、再捜査しないのと、同じ理由だ。冤罪になった人間を、犯人にすることばかり命題になっていて、真犯人を、見つけようとはしない。・・・・疑わしい人間が、疑わしくないっていうのが、半世紀かかって立証されただけで、事件は、なにも、解決していないんだ。その、オーストラリアでいなくなった女だって、同じだ。」

火野「・・・・ホントね。マレーシアで見つかった、っていう話は、どこに、行っちゃったのかしら?本当に、マレーシアにいるのかしら?」

皇「政府の疑惑ばっかりで、真に救うべく、相手の、失踪者が、不在。・・・・・いかにも、日本っぽい、感じだよな。」

火野「生きているのかしら?本当に。」

皇「さぁな。・・・・週刊誌も、続報を、出さないし。・・・・・・また、時間に、埋もれていくんだろう。彼女は、二度、殺されたんだ。」




ジュジュ「はじめまして。・・・直接、会うのは、初めてよね。私は、ジュジュ。ジュジュでいいわ。」

露木「あづさ・・・・露木あづさ、です。」

黛「怖がらなくていいよ。俺の仲間だ。」

ジュジュ「あづさ。あなたは、運がいい。肌や骨の、傷は、時間が経てば治る。・・・・・死ぬような病気を感染させられなかったのは、本当に、運がいい。・・・・・・歯は、あとで、治しましょう。全部、抜いて、綺麗に。火傷のあとは、皮膚を移植すれば、元には戻らなくても、今よりは、良くなる。」

露木「・・・・・ありがとう・・・」

ジュジュ「あなたは、・・・・我々の組織が買った、商品だっていう事を忘れないで。それなりに、見てくれが良くないと、困るのよ。私も、あなたも、ね。だから、お金をかけて、治すの。いい? これは救済じゃない、奉仕なのよ。」

露木「・・・・・・・」

黛「ジュジュちゃん、怖い顔、しないで・・・・・トゥルチも、ちょっと、怖がってるじゃないか」

ジュジュ「・・・・・・。

単刀直入に言うわ。あづさ。・・・・あなたは、日本に、帰る事は、出来ない。あなたは、殺された。」

露木「・・・・・・・・・・・・。・・・・そうです、よね。」

ジュジュ「・・・・・・・あなたには、新しい名前と戸籍を用意する。露木あづさ、あなたは、死んだ。

あなたは、本当に、運がいい。こんな、田舎町の、売春ホテルで、黛さんに会わなければ、このまま、野垂れ死んでいたでしょう。変に、誰かに、復讐しようなんて考えず、助けてもらった、恩を、返しなさい。我々、組織に、恩を返しなさい。

一生、あなたは、我々組織の為に、働くのです。

あなたも、私も、ね。」

黛「よ、よかった、よかったなぁ、トゥルチ! お前、良かったなぁ! これで堂々と、生きていけるんだぞ! お、お、大沢さんに感謝しろ! いいな、トゥルチ! いやぁよかった、ジュジュちゃん、ほんと、良かった、良かったよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

露木「・・・・・・・・・・マユヂュミ、マユジュミィ・・・・・・」

ジュジュ「・・・・出会ったのが、本当に、黛さんで良かった。こんな、甘い人じゃなかったら、死んでいましたよ。」

黛「お前、運がいいんだよ、お前、生きてるんだよ! 好きなもん、食って、いい暮らしするぞ! なぁ?」

露木「マユヂュミ、マユヅミ、マユデュミィィィィ!!!」

ジュジュ「・・・・・・・・・・・・・いつか、別人として、日本の地を、踏めるかも、知れませんね。それは、あなた次第ですよ、あづさ。・・・・・黛さんもですよ。」

黛「わかってるって!」






???「あんた、大沢さん?」

大沢「ああぁ?」サクッ「 ! 」

キィー バタン

客「え? あ、失礼しました」

???「便所の中で、抱き合ってると、そっち関係の人って、思われちゃうからなぁ、・・・・・あっ、ションベン、汚ぇなぁ」

大沢「・・・・・あぁ、あぁ、あ・・・・・クソォ・・・・・動けねぇ・・・・・・・くそ、・・・・・痛てぇ・・・・・・痛てぇよぉぉ・・・・・・・・・・・痛てぇぇ・・・・・・・・・・・・・」

???「あんた、チンピラやってりゃぁ命までは、取られなかったんだ。・・・・・・喧嘩するなら、相手を選べよ。ナイフで、戦車には勝てねぇと思うけどな。

ああ、サービスだ。・・・・・・・警察を呼んでおいてやる。早めに見つかった方が、葬式も、早く、済むだろ。じゃな。」

大沢「痛てぇ・・・・・待てぇ・・・・・・おい、待てぇぇぇぇぇぇ、痛てぇよぉぉぉぉ、ああああ、あああああああああああああああ、痛てぇよ・・・・・・・・・・・・・・」

バタン

客「え? あ、あ、あ、大丈夫ですか? ええええ! え! おい!誰か! 救急車、救急車、呼んでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええ!!!!!!」






松柄「・・・・ったく。・・・・・・虫ケラを潰したところで、面白くも何ともない。手間をかけさせやがって。」

沢井屋「あんたは、エクリプスさんの、威光を笠に、好き勝手やってるだけの、虫ケラだ。」

松柄「誰が虫ケラだ、お前だって、そうだろうが。」

沢井屋「・・・・・いいか、お前も俺も、エクリプスさんの気まぐれ一つで、消される。・・・・・今回は、たまたま、運が良かった。それだけだ。消される前に、消せ。」

松柄「お前に言われるまでもないわ。お前も気をつけろ。自分の首をな。」






【蛇足】


部長「おい。カーネル」

カーネル「はい」

部長「お前、結婚してたか?」

カーネル「いや、していませんが?」

部長「・・・・・・東洋人のフィアンセがいるんじゃなかったか?」

カーネル「・・・・・・ええ、まぁ」

部長「別に隠す必要はないだろ。誰が誰と付き合おうが、俺には関係ない。・・・・宗教とか、思想とか、・・・まぁ、いろいろあるだろうけど、興味もない。結局、最後は、人間と人間の付き合いだ。」

カーネル「はぁ」

部長「・・・ま、ただな。ふぅ。・・・・・・その彼女に、残してやれるモンがあるんだったら、残しておいといて、やれよ。例えば、保険金とか、な。

それにお前、お袋さんや親父さんも、元気なんだろう?そっちにも、金、かけておけよ? お前が残せるモンなんて、金しか、ないんだからな。」

カーネル「・・・・・・・・それは事実ですけど。こんな安月給じゃぁ、ろくに、金も、残してやれないですよ。部長。」

部長「それは、お互い様だけどな。 カミさんも俺と結婚したのが運の尽き、だったのかも知れないけどな。

ふぅ。

それでな。・・・・・・・こいつだ。」

カーネル「”エクリプス”・・・・。」

部長「こいつのおかげで、人生、滅茶苦茶だ。」


部長「いくらニュースみないお前でも、毎ん日、毎ん日、こいつの顔ばっかり、テレビで見ていると、うんざりするだろう? 西側最大の闇、政財界のブラックホール。”エクリプス”だ。」

カーネル「いよいよ判決が出るんですか?」

部長「出さないわけには、いかないだろう?

出た瞬間、世界は終わる。・・・・俺の人生っていうか、俺達の人生が、終わるんだ。・・・・・・・はぁ。」

カーネル「・・・・・。」


部長「ことの始まりは、些細な交通事故だった。

プラザホテルの前を、黒人の子供が、飛び出し、自動車と衝突。いわゆる人身事故だ。・・・・・アンビュランスを呼べば、何の変哲もない、ただの、交通事故だったんだ。ところがその自動車に乗っていたのが、大富豪、エクリプスだった。奴は、よりによって、救急車も呼ばず、その場で、その被害にあった子供に、持ち合わせていた手持ちの現金、五十万ドルを、つかませ、去って行った。当然、交通事故の目撃者が、マンハッタン警察に、通報し、事件が公のものとなった。

交通事故にあった子供は、幸いな事に、大きな怪我はなく、大事には至らなかった。

この交通事故が、エクリプスの名前と、秘密倶楽部の存在を、世に広めるきっかけと、なった。

まず、道義的な問題だ。交通事故を犯したなら、しかも、人身事故だ。人をはねたんだ。人命救助が優先事項だろう?それはどこの国であっても、同じはずだ。しかしエクリプスはそれを行わなかった。

車のオーナーはエクリプスだったが、運転してたのは、おかかえの運転者だ。エクリプス本人に、交通事故、そのものの、非は認められない。だが、自分が雇っている運転手が、人をはねたんだ。同乗者として救急車を要請するのは当然の事だろう。そもそも、その運転手自身が、救急車を呼ぶ、必要があるはずだ。

エクリプスはそれを行わなかった。運転手にもそれをさせなかった。

被害にあった、はねた子供が、黒人の子供だったからだ。・・・・・アメリカ社会じゃぁよく聞く話だしよく見る光景だ。白人は、それ以外の人種の人間を、人間と思っちゃいない。良い悪いじゃない、そういうもんだからだ。運が悪かったのは、エクリプスの方だ。その子供は、下院議員の、セニファ議員の子供だった。

たぶんエクリプスは、そこがマンハッタンで、プラザホテルの前だったという事を忘れていた、としても、労働者階級の貧困層の、黒人の、子供だと、高をくくってしまったのだと思われる。

セニファ議員は即刻、抗議を行った。もちろん所属政党からも、エクリプスに対して、抗議が、行われた。

五十万ドルを、出せば、交通事故も、許されるのか? 富豪は何をしても、許されるのか? 至極真っ当な抗議だ。こういう、金持ちに対する、スキャンダルは、民衆の好物だ。

富豪の、センセーショナルなスキャンダルが、交通事故をきっかけに、ニュースで、流れ出した。ゴシップ記事も含めて、な。」

カーネル「ええ。嫌っていうほど、見ましたよ。」

部長「金持ちっていう奴の、心境っていう奴は、世間には理解できない。こういう、スキャンダラスな事件が報じられれば、火消しに、奔走するのが普通だろう?エクリプスはそれをしなかった。余裕なんだ。

しっぽ切りされた運転手は、逮捕された。自動車運転の義務を怠ったからだ。だが、この運転手は、三億ドルの、手切れ金をもらった、と報じられる。子供の怪我は大した事なかったし、ひき逃げだ。しかも目撃者も多い。おまけに自ら出頭してきたという。いくら外野が騒いで刑務所に五年入ろうが、十年入ろうが、三億ドルだ。こんな手厚い、手切れ金はないだろう?

運転手を、金で、切り捨てたっていうのも、含めて、エクリプスという人間に、注目が集まる。アメリカ全土が、エクリプスの話題で持ち切りになった。

富豪。エクリプス。」

カーネル「毎夜、毎夜、おんなじ話の繰り返しでしたからね。」

部長「・・・・エクリプスがただの金持ちじゃない事は、すぐに、分かった。奴の、交友関係の異様さからだ。奴の周りには、エリートしか、いなかった。政界、財界のニューフェイス、各国の要人。これから新しい世界を作るであろう、ニューエリートが、何故か、エクリプスの周りにいた。・・・・古い秩序、しきたり、ルール、しがらみ。奴等には、そんなものは、通用しない。

奴等が、新しい世界をつくる。ニューワールド、ニューオーダー、ニューエリート。・・・・・まさに世界の主役が、集まっていた。

おかしいだろう? それとも、おかしくないのか? 世界の新しいトップリーダーになる奴等が、一同に、介しているんだ。

おかしいのはそれだけじゃない。・・・・・クリーンなんだ。ホコリひとつない、クリーンな連中なんだ。人間、ひとつくらい、やましい所があって、当然だろう?叩けば、誰だって、ホコリの一つや二つ、舞い上がる。

なのに、奴等には、ホコリがまるで立たない。綺麗なまんまだ。

クリーンなんだよ。クリーン過ぎる。・・・・・・・・そんな異常な事、あるか? ある訳がない。」

カーネル「その、異様なまでの、クリーンさが、逆に、疑惑を、呼んだわけですね?」

部長「そうだ。西側、最大のブラックホール。

・・・・・・セニファ議員の息子をひいた、交通事故の一件もそうだ。運転手のみ、罰せられ、エクリプスの道義的責任は、一切、問われなかった。何故か。簡単な話だ。弁護士、検察官、陪審員、裁判官、全員、エクリプスの息のかかった人間だからだ。それを不審に思った、有名メディアが報じようとしたが、メディア自体が、取り潰された。・・・・そのメディアのスポンサーが、エクリプスの息のかかった人間だったからだ。奴のその手のニュースを報じるのは、三流以下のゴシップメディアばかり。・・・・・誰が信じる?芸能パパラッチの三面記事を。

その、パパラッチが面白い記事を書いていたなぁ。・・・・・交通事故を起こしたその日の、マンハッタン周辺の、防犯カメラ映像が、ごっそり、消えていたそうだ。エクリプスの車が、セニファ議員の息子を、はねた瞬間の、映像は、存在しない。目撃者はいっぱいいたのに、カメラの映像だけ、この世から、無くなる事なんて、あるのか?

・・・・・俺には信じられないね。女のケツしか追いかけていない、パパラッチを、今回ばっかりは、信じる気になったけどな。」

カーネル「・・・部長。信じたところで、証拠がないんじゃぁ、どうしようも、ありませんよ?おまけに、・・・・・・大統領が、異例の、コメントを発表。どこの馬の骨だか、わからない、只の金持ちに、大統領が、わざわざ、擁護するコメントを発表しますか? 意味がわかりませんよ?」

部長「ああ。この時点で、大統領も、エクリプスに取り込まれていたっていうことが、ゴシップ記事によって、語られる。

そのパパラッチ共さえ、単純処罰で、逮捕、拘留。アメリカのメディアが、一斉に、沈黙した。・・・・・・・エクリプスに関わると、命の保証がない。メディアの大小、問わず、消されるんだ。表立って、口にしないが、情報統制ならまだしも、身の安全も脅かされる事態になった。エクリプスには、関わるな。

このインターネットの時代でさえ、アメリカで、エクリプスと、その関連キーワードが、検索禁止ワードになった。要するに、検閲だよ。検閲。

それでも、海外のサーバーを経由して、細々と、エクリプスのニュースを、伝えているが、・・・・ほぼ海賊通信だ。この二十一世紀に、海賊放送とか、信じられるか?」

カーネル「エクリプスは元々、北部の田舎町出身の、学校の先生だった、みたいですね?地元では。」

部長「父親は牧師。生活は豊かではなかったそうだ。両親の影響を受け、教諭時代は、生真面目な人間だった、という記録がある。」

カーネル「どうして、そんな男が、国を動かすエリート集団と、交友を、持つように、なるんですから、不思議ですよね」

部長「保険組合を乗っ取った、という噂がある。どこまで本当かどうかは分からない。海賊放送のパパラッチが、調べたネタだからな。信憑性は怪しいが、たぶん、そうなんだろう。

田舎町の学校の先生なんざ、給料は、たかが知れている。だから、結婚式やら葬式。家を買うとか、何にしても、町に互助会があったそうだ。お互いに、金を融通しあって、必要な時に、必要な分だけ、金を利用する。どこにでもある話だ。ところが、学校長の汚職が噂になる。ちっちゃい田舎町の汚職事件だ、目新しい話じゃない。ただ、それを処理したのが、エクリプス、という男だった。

汚職の件を内々に処理する代わりに、多額の、賄賂を互助会に求めた。田舎町の互助会が、州規模になり、北部から、アメリカ全土へ。爆発的に、保険組合の規模が拡大していったと言う。金の力で、だいたいの事は、解決できる事を、エクリプスは学んだんだ。田舎町の、学校の先生が、アメリカ全土を、金の力で、動かすようになった。エクリプスの前では、白い物が、黒くなり、黒い物も、白くなる。

そして、誰も、奴に、逆らわなくなった。逆らっても、無意味だからだ。

奴が話すことが、すべて、真実になるからだ。・・・・・・・・・エクリプスの、アメリカ政府が持っているIDだって、本当かどうかは、あやしい所だ。奴の好きなように、書き換えている可能性だってある。

普段、クソみたいな芸能スキャンダルしか書かない、パパラッチ共が、・・・・・ジャーナリズムに芽生えて、調べた記事だ。」

カーネル「そうなれば、当然、主義主張、思想信条、犯罪歴、学歴、いかなるものも、意味を失う。思うがままに、書き換えられる。」

部長「・・・・・エクリプスっていう名前自体、あやしいものだ。もう、何処の誰かも、素性を、調べようがない。ただ、我々の目の前に、モンスターがいる、それだけだ。」

カーネル「我々は、エクリプスを、追うんですか?」

部長「いや。エクリプスを、司法の場に、いや、警察に連れて来ることも不可能だろう。我々が追うのは、ロシアで、九人の、未成年女性が、行方不明になった事件を捜査する。・・・・・ロシア政府は、捜査打ち切りを決定したそうだ。ロシア政府が、正式に、捜査打ち切りを決定した事件を、我々、インターポールが、捜査することになった。

バカが藪を、突きたくなったんだろう? おかげで、こっちは、・・・・・生命保険が、アレに、支払われることになるだろう。」

カーネル「・・・・奥さんですか?」

部長「お前はどうするんだ? その、東洋人のフィアンセに、保険金、払ってやるように、手続きくらい、しておけよ?

最近、日本で、同様の事案が、墓から、掘り返されたらしい。それを知った、上層部が、九人の行方不明と、エクリプスを、繋げたらしい。・・・・・まったく、いい迷惑だ。死ぬなら、自分一人で、死ね。」

カーネル「・・・・・・・部長。」

部長「俺は上司だ。お前は部下だ。俺は、お前に、命令しか、出来ない。上司と、部下の関係だから、命令しか、出来ない。上司と、部下じゃなくなれば、関係なくなる。

カーネル。俺に、命令を、させないでくれ。」

カーネル「・・・・・・部長。」

部長「こんなモンは正義じゃない。俺は、命を粗末にしたくない。・・・・・それだけだ。」

カーネル「まったく、部長も、バカですね」

部長「ああ。・・・・・・学がないからな。お前と一緒で。」


※全編会話劇

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