待ちに待った採掘
朝食を食べ終えて用意しておいた道具類や旅の準備をすませた俺たちは
「よし!準備は出来た出発しよう!」
『『『『了解!』』』』
と意気揚々に鉱山に向けて出発するのであった、道中魔獣が出たが、魔法を覚えたガビンたちの敵ではなく、蜘蛛の魔獣には火魔法で、蝙蝠や鳥の魔獣には風魔法と俺の魔石の魔法で対処した、途中蛾っぽい魔獣がいたが、攻撃してくる様子がないので放置したが、サーシャ曰くこの島でも希少なその蛾はグウランドモスと言うらしい、その蛾はあまり飛ばずに繭に篭って生活しているらしく、その糸は布製品を作るのに適しているとの事だったので、場所を記録して後で取りに来ることにした、
二日かかって鉱山にたどり着いた俺たちは、とりあえず荷物を置いて、作っておいた石組みのピッケルを持って坑道に入った、俺が光魔法であたりを照らし奥に進みつつ、鑑定魔法で鉱石の反応を探っていく、まずは希少な鉱物よりも道具作りに欠かせない鉄鉱石を探す、ははり魔獣もまた棲みついていたので、ガビンたちに排除を頼む、これまでは鉱石の反応は芳しくなかったしばらく進みサーシャが囚われていた大きな空間にたどり着いた、今は扉が開け放たれており中は蝙蝠が棲みついていた
「コラルド、ジャイアントバットの排除を頼む!」
獣人のコラルドのジャイアントバットの掃討を頼む
「了解です!」
コラルドとエギルがウインドカッターで仕留める、仕留め損なって地面に落ちたジャイアントバットをガビンがとどめを刺す
「任務完了!」
汗を拭いつつコラルドが報告してくる
「ありがとうみんな!」
「サーシャ様のおかげで魔法が使えるようになったので容易い事です」
魔法を使いこなすようになってガビンたち魔物は格段に強くなったのだという、サーシャにお礼を言っているコラルドを横目に俺は鑑定作業に入る
気を集中して、浄化の時にやった探知をベースに鑑定を上乗せする、この空間いっぱいならやれるはずだ、すると・・・
「なんだこれ?」
鑑定結果に驚いているとサーシャたちが寄ってきた
「どうした?鉄の材料はあったか?」
サーシャが鑑定魔法を使えないと言うのは驚いたが、鑑定スキルというのは魔法とは違いその個人のスキルによるものらしい、足が早い者、泳ぎがうまい者といった具合に個人差が激しいらしい
「いや、あるにはあるんだが、鉄鉱石よりも金や銀それからミスリルやらがちらほらある・・・」
ミスリルと言うのは銀が魔力を持った状態の金属でファンタジーならお馴染みの超希少鉱石だ、それがこんなにあるなんて、とんでもない希少な鉱石の集まった空間だ
「ミスリルか、人間たちはその希少金属を奪い合っておったな」
サーシャが言うにミスリルは浄化作用もあるので武器だけでなく教会のような聖職者も欲しがっているという、その昔そのミスリルをこの島の対岸と言っても簡単に渡れる海峡のような距離ではないそうだが、その対岸の国が独占していたようだ、その独占支配のを嫌った各国がその国と周辺国とで激しく争っていたそうだ、その周辺国の一つが、ミスリルが手に入らないのであれば、独占されるよりもミスリル自体手に入らなくしてしまえと、禁断呪法を使って昔からこの世界を特にこの島の瘴気を中和していたドラゴン、つまりサーシャをミスリルと共に封印してしまえと行った呪法によりその頃、偶然力が落ちる時期の一瞬を本当に偶然、封印呪法が効いて今に至ると言うわけらしい、
「その後、人間社会はどうなったのかな?」
とサーシャに尋ねると
「まだ、しぶとく生き残っておるよ、数は減らしておるが奴らは放っておくといつの間にか増えておる、まだ何やら各国で争っておるようじゃ」
サーシャのその言葉には憂なのか怒気なのかわからない感情がこちらに伝わってきた、まぁ仕方ないよな人間たちの勝手な都合で封印され管理も出来なければ、その島に生きる者たちが瘴気に犯されて行くのをただ見ていることしか出来なかったのだから、しかしサーシャの能力って世界全体なのか?
「まぁ人間たちのことは気にしても始まるまい、今は人間たちの管理はしておらんしその内、瘴気に犯されるか、清浄すぎて気が狂うかして人間同士で争って絶滅するのではないか?」
サーシャは今浄化の管理をしているのはこの島限定らしい、人間たちの管理までしてやることもないとの事だった、やはり人間たちに同情の余地はない、しかしその人間たちの中にも善良な者もいるだろうに、しかし今はそれで良いとも思える、その内、話でもしてもみよう
「じゃあ早速採掘するか!」
と気分を変えて明るく言った俺にみんなも明るく答えた
しかし採掘しようと石組みのピッケルを振るったが、とんでもなく硬い岩盤で石のピッケルでは歯が立たなかった、なので採掘方法を別に編み出した
俺の土魔法と鑑定スキルを組み合わせて採掘ポイントに発動してみた
「よし、なんとかなりそうだ」
とそのまま皆が見ている中、鉄とそうでないものを分離して純粋な鉄塊が出来た
「お主・・・器用だとは思っておったが、それは錬金術だぞ?」
今俺がやった作業は錬金術に該当するらしい、錬金術は太古の昔は盛んに行われていたようだがその技術は秘匿され現在には伝わっていないらしい
「そうなのか?まぁ出来たものは利用するぞ?」
と軽く答えると
「まぁそれもそうじゃな?」
とサーシャも答えるのであったが、この能力のせいでこの先にとんでもない事態にこの島が巻き込まれる事になるとは、今のタケシたちは知る由もなかった
どんどんと鉄塊を作り出しガビンたちが洞窟の外へ運び出していく、ついでに金と銀とミスリルも分離しておくが今は必要ないので、洞窟内に置いておく、ある程度の時間になったので外に出てみると、とんでもない量の鉄塊が積み上がっていた
「調子に乗って作りすぎた・・・」
ガビンたちはヘトヘトになってその場に倒れ込んでいる
「しかし、この量をどうやって運ぶのじゃ?我にもこの量を持って飛べはせんぞ?」
とサーシャも困惑していた
「まぁ使う分だけ少量ずつ運ぶしかないな・・・」
この日の夜は洞窟の入り口付近にキャンプを張りその場で休んだ、皆も疲れたのだろう食事をして少ししゃべると横になって寝息をたて始めた
「みんな、すまないオーバーワークすぎたな・・・反省せねば」
一人猛省しているとサーシャが声をかけてくる
「タケシお主は先ほど人間たちの事を話していた時、何か思っておったじゃろ?」
サーシャが鋭いことを言ってきた、時々だが心を読まれているのではないかと思う時があるほどサーシャは時々鋭い事を言う
「あぁ、人間たちの都合で封印されてしまったサーシャの気持ちもよくわかるし、人間たちの中にも善良な者もいるから、管理していないと聞いてちょっと複雑になっただけだ、気にするな」
俺は思っていたことをそのまま伝えた
「善良な人間か、いるにはいるだろうが、その者のみを避けるように瘴気を調整することは出来んしなぁ、人間たちを管理しない事についてはどうなのだ?」
サーシャも色々と考えているのだろうと思い
「人間を管理しないと言うのは、感情的に考えればそうなると思う、人間はいつまでも自分達本意で物事を見る、この島の魔物だってこんなにいい奴らなのに昔は、魔物と見れば容赦無く殺されていたそうだ、だから俺も人間たちをこの島に近づけたくないし、皆もサーシャも笑って暮らして欲しいと思っている、だけどいつになるかは分からないけど人間たちが心改めて争いがなくなって善良な者が増えた時、この島で共存できると思えた時は管理を再会して欲しいと思っている」
たぶんそんな日はいつになっても訪れないだろうとタケシは思った・・・・
「そうか」と呟いたサーシャはその後黙ったまま横になった。




