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寂滅のニルバーナ ~神に定められた『戦いの輪廻』からの解放~  作者: Shirasu
第二章 城塞都市・王都シャンポール
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第二章37 ララと月の精霊ルナ


 王都防衛会議が終わり、すぐに王城に居るマール宰相へ【王都防衛計画】として正式申請した。

 王都防衛計画は稟議として翌日には王の決裁を受け、勅命としてソーテルヌ卿に一任された。

 ⦅申請して翌日にはOKって…… これで本当に良いのか陛下!?⦆



 まぁ反対されるよりは余程いい。

 俺は『王都防御のために町の改革を行う』事を、王より全王都民に対し御触れを出してもらった。



 そして、王都の大改造工事が始まった。

 正直、水の都として名高いこのシャンポール王都の改造工事、王都民からの大反対を受けるのではないかと、少し心配していた。


 しかし、王から直々のお触れを出してもらった事と、自分で言うのもなんだが……

 総責任者がソーテルヌ辺境伯になっている事で、王都民からの反発は無かった。


 王都民もやはり、人族滅亡の危機を目の当たりにした今、美しさより安全を選んだのかもしれない。

 シャンポール王都への移民申請の多さがそれを証明している。


 だがしかし、俺はこの改造で王都の美しさを壊すつもりは毛頭ない、いやむしろさらに美しい都にしてみせると意気込んでいる。

 それは図面の時点で、多くの女性の意見を十分に聞いて取り入れて、マナの流れと美観を十分に考慮して作ったからだ。



 軍の皆がローテーションを組んで訓練組と治水工事組と植樹組に分かれる。

 図面を元に、景観を崩さないように職人の指示のもと、井戸を掘り、水路を作り替え、適切な場所に植樹をする。


 精霊使い達は、ソーテルヌ邸でずっと訓練だ。

 騎士団の訓練組も一緒に訓練をする。


 水場の魔法陣と精霊結晶設置、あと各所ゴーレム設置は俺じゃないと出来ないので、俺が街中を歩いて回って設置していく。

 なぜ歩いて回るかと言うと、王都全体を隅々まで見たいからだ。

 俺は王都全体をこの機会に全て把握するつもりだ。



 差し迫って今大変なのは…… 神獣の卵だったが、ウンディーネから卵が俺のマナの色に染まったので、もう随時持っていなくても大丈夫とお墨付きをいただいた。

 あとは俺の部屋に置いておいて、朝と夜にマナを流せばいいとの事だった。

 子供を持つ親の大変さが、少しわかった気がする。

 ⦅子を持つ親からは、卵なんて楽だろう! と怒られそうだが⦆


 ちなみに卵が、どれくらいで孵化するのかウンディーネに聞いても……

 『分からぬ、1年後かもしれぬし、100年後かもしれぬ』と言われた。

 100年後って、おれ多分死んでるって!

 産まれてすぐに親が居ないとか、可哀相すぎる。



 卵を家に置いて、俺は最初王城に来た。

 俺が城に来ると、城の中から皆がこちらを見ているのがわかる。

 事前に今日、王城に防衛用のクリスタルドラゴンを設置することを伝えておいたからだ。


 俺が王城正門を通り、設置場所を考えていると、ミュジニ王子とフュエ王女がマール宰相と一緒に来る。


「これはミュジニ王子、フュエ王女。 本日はお騒がせして申し訳ありません」


「いや、ソーテルヌ卿が国の為におこなってくれている事は聞いている。 今日はただフュエと興味本位で来ただけだ、邪魔になるようだったらすぐに帰るが……」


「大丈夫です…… ですがゴーレムはかなり大きいので、少々遠くから見て頂けますと助かります」


 マール宰相が二人を下げたところで、俺はルナを顕現(けんげん)させる。

 ミュジニ王子はルナを見るのが初めて、フュエ王女は精霊を見たのが初めてらしく興奮している。


 俺はルナに命じ、クリスタルドラゴンを二体作り出す。

 それを城の中庭に設置する、いろいろ場所と向きポーズを微調整して決定する。

 大きなドラゴンが、微調整で動く様は、とてもシュールな光景だっただろう。


 だが、城門をくぐった中庭の左右に、巨大なクリスタルのドラゴンが2体。

 自分で言うのもなんだが、とても綺麗で荘厳で王城としての威厳のあるドラゴンの彫像が完成した。


 ひと仕事終え、俺は満足して王子、王女、宰相に挨拶をして次の場所に向かう。

 王子たちは俺と少し話したそうだったが…… ゆっくりしている時間はない、少しでも早く王都の防備を完成させるのは急務なのだ。



 俺は今後の防衛の為に、地図と町を照らし合わせながら、全て歩いて確認して回る。

 そして水場に魔法陣と精霊結晶、あとゴーレムを置いていく。


 このクリスタルゴーレム、街の風景を壊さないように天使、女神、騎士、馬の戦車 などデザインを考えるのが大変だった。

 噴水の近くで俺がクリスタルの彫像を作っていると、子供たちが寄ってくる。

 透明な水晶が色々な形に変化していく様は、見ていてとても楽しいらしい。


 俺は毎日毎日、街を歩いて回り、魔法陣と精霊結晶とゴーレムを設置していく、そしていつの間にか俺の周りには子供たちを中心に多くの人たちが集まるようになった。

 正直、危険も伴うのでついて来てはいけないと言っているが…… 気づけば遠目で俺の後をついてくる。

 今ではちょっとした町の名物みたいになっている。




 今日は、ララがゴーレムの設置を見てみたいという事で、1日付き合ってくれる。

 いつも後について来る町の人達も、今日は気を使ってくれているようだ。


「こうやってディケムと一緒に歩くの久しぶりだね」

「ああ、この頃少しやる事多かったからな」


「ディケム凄い忙しいもんね……」

「でも、この結界張り終わったら、少しひと段落つくかな。 あくまで希望だけどね」


 ⦅ララが何か言いたそうにしているが…… なんだろう?⦆


「あ、あのね! ディケム」

「うん」


「ディケム、結界張り終わったら、ご両親を王都に呼ぶって言ってたでしょ?」

「うん。 ラスさんにも言われてたからね」


「あの…… そしたらさ、私たち邪魔だよね?」

「は? なんでそうなる? 今まで一緒にやってきたじゃないか」


「でも…… ご両親来たら、やっぱ親子水入らずで過ごしたくない?」

「それはお前たちが居たって、同じじゃないか? ララは出ていきたいのか?」


「わ、私はずっとディケムと…… 居たい」

「なら一緒に居れば良い。 変な気を使わなくていいよ」


 俺はなんとなく、ララが本当は何が言いたかったのか少し分かったけど……

 先延ばしにする形で、ごまかしたのかもしれない。


 ⦅ララごめんな、俺まだ色々一生懸命で、余裕が無いんだ⦆



 よし、中央公園の噴水に来た。

 ララに見られて緊張するが、なにかゴーレムを作らないといけない。


 そんな事考えながら、羽の生えた女神像を作っていると………

 顔がララになってしまった。


「あうっ! こ、これは―――」

「わ~ ディケム。 私の像作ってくれたの!! 嬉しい♪」


 もう変えられないな…… ま~良いか、ララの整った顔を女神と崇めよう。


 『どうせなら――』と俺は水晶の彫像ゴーレムに精霊ルナとウンディーネのマナを注ぎ込み、精霊結晶を彫像の中心に作りだす。 

 それを噴水から流れ出るマナにつなぐ。


「俺がララに贈る特注品だ!」


 すると――! 彫像が一瞬光り、マナのラインが俺と繋がる!

 そしてさらに、マナのラインがララへと繋がった……


「え? な、何が起きた………?」


 ウンディーネがひょこりと出てくる。


「ほほ~、ララのお前への思いが相当強いらしい!」


 ララが真っ赤な顔で『ッ――っな! い、いや違うから! そんなんじゃないから!』とワタワタしている。


「ララのその思いがその彫像の精霊結晶に宿り、お前と繋がり、ルナに繋がっておる。 ララお前、精霊ルナを呼び出せるかもしれぬぞ! やってみろ!」


 『っえ!?』とワタワタしているが、ウンディーネに促されララが祈りだす。


「精霊ルナ様! 私に力をお貸しください――!」


 すると…… ララの祈っている手の中が光だし、中から精霊ルナが顕現(けんげん)する。


「おぉ―――! 成功した!」

「やりおったのララ!!  お前は明日から精霊使い特訓組に合流じゃ!」

「は、はい!」


「なぁウンディーネ。 ちなみに聞きたいんだが、ララがルナを呼んでいる時って、俺呼べるの?」


「あたりまえじゃ、前も言ったであろう精霊は個ではない。 二人がいくらでも呼び出すことが可能じゃ」


「おぉ! 凄い!」


「だがララは注意が必要じゃ! ララの召喚は、ディケムとのつながりからの召喚じゃから、もしディケムに何かあれば、ルナは呼べなくなる…… まぁその時は妾たちも同じじゃから考えても仕方がない。 そんな心配よりも、これでディケムとララの組み合わせは、戦いで色々出来るぞ! でかしたぞララ!」


 ちなみに、ララが祈るとララの彫像が動いた。 精霊結晶を組み込んでいるのでかなり強力なゴーレムになるらしい。



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