第88章 封印の洞窟
寝静まった夜にアリシナは布団で寝れずにうーんと言いながらごろごろと布団の中で動いていた。
ずっとエレナが頭から離れずに浮かんでは消してを繰り返すとバッと起き上がり部屋を出た。
夜風に当たろうと滝の見える自慢の庭に歩いていく。
アリシナが庭に出ると誰かが座って滝を見ていた。
(あ! 誰かいる……)
アリシナが残念そうに部屋に戻ろうとすると呼び止められた。
『あ、ごめんお気に入りの場所取っちゃったみたいだね。もう戻るから』
アリシナはその声にドキ! っと心臓が飛び跳ねた、寝れない原因の人がそこにいたからだ。
エレナが庭から出ようとするとアリシナは思わず呼び止めてしまった。
「あ、あの! 少しお話ししたいです……」
エレナは少し微笑んで椅子に座るとアリシナも緊張した面持ちで隣に座る。
少し長い椅子に並んで座るとアリシナは少し間隔を空けて座った。
滝からくる冷たい風をうけたアリシナは何か毛布でも持ってくれば良かったと後悔して体を震わせていると温かい物が体を覆った。
『どうぞ』
横を見るとエレナと同じ毛布にくるまっていて少し離れた距離も縮まっていた。
カァー‼︎
顔が急激に熱くなっているのが自分でもよくわかるとアリシナは戸惑っていた。
(この感情は何? お父さん、お母さんとかおじいちゃんに向けるものと同じようで違うこの気持ちは何かな?)
生まれて初めての感情にアリシナは幸せを感じていた。
ふたりは長い椅子に座って黙って滝を見ていた。
アリシナは何を話そうか悩んでいると隣から声が聞こえた。
『寝れないの?』
「はい、明日上手くできるか心配で……それに」
アリシナは死ぬかもしれないという言葉を飲み込んだ。
『大丈夫、君は絶対に死なせないよ』
アリシナは何故かその言葉が嘘でないと思えた。
するとエレナは温かいハーブティーを出すとアリシナに渡した。
『これを飲むとよく眠れるよ』
「ありがとうございます」
アリシナは一口飲むと体全体がポカポカと温かくなっていき心地よかった。
「美味しい……」
『大変な使命を背負っているんだね』
エレナは滝を見ながら話しかけた。
「私のお父さんとお母さんは10年前に洞窟に向かったまま帰って来なかったんです。まだ私は5歳で何も分からなかったけど今はふたりがやろうとしていた事が分かるんです。だから私がふたりの代わりに使命を果たしたい」
アリシナは両親の事を思い出し涙が浮かんでくると顔を下に向けて顔を見せないようにしたがエレナに頭を撫でられると堪えきれずにエレナに抱きついて泣いた。
しばらくそのままでいるとアリシナは急に恥ずかしくなって離れた。
「ごめんなさい!」
『ううん、そろそろ寝ようか』
「はい、お陰でよく眠れそうです」
『良かった。おやすみ』
「おやすみなさい」
アリシナは部屋に戻ると布団に潜り込んで顔を赤くしてジタバタし始めた。
エレナに抱きつくという自分の行為に驚いていた。
(私ったらあんな大胆な事をするなんて! でも……何か幸せというか心地よかったな……)
次の日エレナ達はアリシナの案内で洞窟に向かっていた。
オオー‼︎
ゴォォー‼︎
その途中で遠くの方から多くの魔物の声が響き渡った。
「間に合わなかったか⁉︎」
アルトが叫んだ。
「急ごう‼︎ まだ諦めちゃダメだよ‼︎」
「ああ! そうだな!」
ロイズとカイジスは走り出した。
「任せときな! アリシナちゃんは俺達が守るぜ‼︎」
ハラントもアルト達の後を追いかけた。
『さあ僕から離れないでね?』
「はい、絶対に離れません‼︎」
エレナとアリシナは皆の後を追った。
洞窟の周辺には魔物が多く展開してエレナ達の行手を阻んでいた。
すでにアルト達は戦闘を始めており次々と魔物を倒していく。
「エレナさん達は洞窟へ‼︎ アルトも行って‼︎」
「分かった‼︎」
『皆んな! 任せます‼︎ 絶対に死なないで下さい‼︎』
「こんなところで終わる俺たちじゃないですよ‼︎」
ハラントはエレナにウインクすると魔物に向かって行った。
洞窟の入り口から魔物が次々と溢れて出てくるとエレナはマナで一掃した。
『行こう‼︎』
洞窟は魔物が通るとあってかなりの広さをしており薄暗く天井が見えない程の空間だった。
エレナはまるでここが異空間のように感じられた。
どんどん魔物を無視して中へ進んでいくが門は見つけられずにいた。
「来たか……」
ある場所まで来た時だった。
昨日襲ってきた魔物が目の前に現れた。
アルトはエレナに声をかけた。
「先に行け、アイツは俺が引き受けた」
『え?』
エレナは少し心配だったがアルトの顔は真剣だった。
「俺を信じてくれ」
『分かった。気を付けてね』
「ああ」
エレナとアリシナは出口に走り出すとアルトは魔物に向かって行った。
洞窟の外では王子達とフェイが魔物を蹴散らしていくがだんだんとスタミナが切れ始めていた。
「くそ‼︎ コイツらいつまで湧いてくるんだよ‼︎」
ドン‼︎
「く‼︎」
カイジスは魔物の攻撃を受けて倒れた。
「カイジス‼︎ 大丈夫か‼︎」
「フン、ちょっと足がつまずいただけだ……」
段々と王子達は魔物に包囲されていき、やがて何百という数が周りを取り囲んだ。
「参ったな……」
「はあはあ!」
「ここまでか……」
ヒュン‼︎
ドス‼︎
グガァー‼︎
物凄い勢いで矢のような物が飛んでくると魔物が次々と倒れていった。
王子達を取り囲んでいた魔物は一瞬で消えて行った。
「何だ‼︎ 何が起こった⁉︎」
「間に合ったみたいね」




