第9章 マナ使いの装備
「宿屋ロールへようこそ!」
冒険者ギルドを出て宿屋に入ると女性が元気で弾んだ声を響かせエレナ達を迎えた。
『あの、この子と10日程泊まりたいのですが』
「10日ですね! 前金で2000ラナです!」
エレナは袋から貨幣を取り出す。
(えーとこれが1000ラナの金貨だよな)
冒険者ギルドから出る前に貨幣の事を職員らしき人に聞いていたエレナは金貨を2枚置いた。
女性は長期のお客に嬉しそうに「有難う御座います!」と笑顔を見せた。
「部屋まで案内しますね!」
案内された部屋に入るとエレナは精神的に疲れていたのでベッドに寝転んで一息ついた。
『ステラ〜少し休も疲れちゃったよ』
そう言うとステラもエレナの方に寝転んでくる。
エレナはこれからどうするか考えていた。
(まずは買い物だよな2人の服と日用品に食材も気になるしギルドの登録もしたいな)
『ステラここにしばらくいようか、もしかしたらステラの両親もいるかもしれないし』
「うん、ありがとう」
そう言うとゴロゴロとベッドの上を回ってエレナに近づき抱きついてくる。
「わたしお父さんとお母さんがいないけどエレナお姉ちゃんがそばに居てくれるから寂しくないよ」
ステラはエレナの胸に顔を埋めて言った。
その言葉にエレナは微笑むとステラの頭を撫でた。
『ステラのお父さんとお母さんが見つかるまでずっと一緒にいるから安心して甘えてな』
「うん!」
少しベッドに横になってからステラを連れて宿屋を出て行った。
(ほんと広いなこの街……誰かに案内してほしいくらいだ、何処かにマップでもないかな〜まあ歩いていればその内見つかるか)
相変わらず注目の的だがエレナは疲れるだけだと気にしない方向でいくと心に決めていた。
(お!あの店武器や防具が飾られている寄ってみよう)
中に入ると短剣、大剣、弓矢、槍など色々な武器や防具類が並んでいる。
(護身用にナイフと軽装備でも見ようかな)
エレナはナイフが並んでいる棚を見るがどれがいいかサッパリ分からなかった。
悩んでいると店員らしき立派な髭をした中年の大きな男が痺れを切らしたのか声を掛けてくる。
「お嬢ちゃんどういう武器をお探しかい?」
『えーと護身用の武器を探していて』
「それだとここのナイフがいいな」
エレナはナイフが並んでいる棚に案内されるとおじさんに話しかけた。
『いっぱい種類があってどれがいいのかわからないんですよね』
「そうだな値段で決まるのは使われている素材くらいによるもので切れ味と耐久性の違いだ」
(まあ特別な効果が無いなら悩まなくていいか。1番高いので2万ラナか、これでいいかな)
『これください』
「お! 毎度」
買うと思っていなかったのか男は満面の笑みでカウンターにナイフを持っていく。
『あの、マナ使いの人ってどんな装備をしているんですか?』
お金を払う時に聞いてみる。
「そうだなこの店の3件隣りにマナ使いの装備が売っているぞ、そこで聞いてみな」
お礼を言うと早速そのお店に向かった。
武器屋のおじさんに言われた店に入ると年配の女性がカウンターに座って本を読んでいた。
「おや? いらっしゃい」
エレナ達が入ってくるのを見て顔を上げる。
『こんにちは、お邪魔します』
「この店にお客さんが来るのも久しぶりじゃのう」
お婆さんはシワをクシャクシャにした笑顔で迎えた。
(俺はマナを使えるけどマナ使いの事を知らないからどこかで教えて貰おうと思っていた所なんだよね、このお婆さんもきっとマナ使いだと思うし色々聞いてみたいな……うーん何て言おうかな?)
『すいません、最近マナを使えるのに気づいたんで色々分からない事が多いいんです』
そう切り出すとお婆さんはこちらを不思議そうな顔で首を傾げる。
「この国ではマナの事は授業で習うはずじゃが?」
『異国から来たんで教わってないんです』
「異国とは別の大陸から来たのかい?」
『そうですね』
「ほぉー!それはすごいのう!余程運が良かったんじゃな」
(凄い驚いてるけど船で大陸を渡るのって意外と珍しいのかな?)
「まあ客もいないしな、何を知りたいんじゃ?」
『マナ使いの人はどんな装備を持っているんですか? 武器とか防具とか』
「基本的にここの大陸のマナ使いは武器を使わないがマナの威力を上げる杖を使っておる、しかしそれは高価で効果も大きいものから小さいものまで様々じゃ、だから持ってない者もおるな、だが手ぶらだと接近された時に不利になるから何かしら武器を持っているかの」
「それはここにあるんですか?」
「残念じゃが高価すぎて街には無くてのう、商会か冒険者ギルドを通さないと手に入らないのじゃ」
(そうなんだ、まあ高いみたいだしいいか)
エレナは魔物と戦う冒険者になるつもりはなかったので高価と聞いてやめようと決めた。
「最近では剣と合わせて使う者もおるが体力とマナ両方を使うとなるとすぐにスタミナ切れを起こすから臨機応変に使い分けしている者が大抵じゃな」
(じゃあ俺も何かメインとなる武器を考えなきゃな)
「防具に関してじゃが戦闘でマナを使う時というのはどうしても隙ができるのはわかるな?」
(確かにマナを使う時は溜めであったりマナを変化するイメージをしたり強力だけど隙が多いな)
「だから重い装備は相手の接近を許す事になる。誰かとパーティを組めばそれもある程度緩和できるがの」
(なるほどねぇ、でもマナを纏えば大丈夫そうだけどな)
「だからマナ使いは軽装備が主流じゃな、この店にある装備は特殊でなマナを使い防御性能を上げる事ができるんじゃ」
(流石マナ使い専用の店だ、マナを纏えば更に硬くなるな)
「他にも沢山あるぞ、ここにはマナ使いでないと動かない道具や防具を揃えているから後でよく見て行くがええ」
(便利な道具か、非常に気になるから後で見てみよう)
『あとマナの結晶石について何ですがどう使うのですか?』
エレナは洞窟で手に入れた虹色の結晶石をを自分用に使おうとしてたので使い方を聞いた。
「マナの結晶石はただ持っていても効果はなくてな、それにマナを流さないといかんのじゃ、だから身につけていつでもマナを流せるのが理想じゃな」
『分かりました。色々とありがとうございます』
話が終わると周りにある道具や防具を物色していった……
「お前さんどこかの貴族様か王族のものだったりするのかい?」
(あれから色々道具を見ていたら沢山買ってしまった)
お婆さんはまたも驚いて呆気に取られていた。
防具は白に近い色をした白銀のマントと白を基調とした水色のリボンが付いた薄手のジャケットに淡い水色のスカートの見た目がおしゃれな高校生の学生服に見えるものを買った。
(やっぱり見た目は大事だよね)
エレナは見た目重視で好みのデザインを選んでいたが見た目に反してマナを全身に纏えば防御力がかなり上がるらしい。
全て特注品で使える者が少ないのもあってか全体的に高い値段だった。
(合計100万ラナ使ってしまった! よくよく考えるとそりゃ驚くわ!)
支払いを終えるとお婆さんに話しかけた。
『あの、またマナの事を教えて下さい』
「お客は全然来ないからいつでも来るがええ、いい暇つぶしになるしの」
笑顔で応えてくれたお婆さんにお礼を言って店を出ると荷物を影に隠れて収納し隣のステラに話しかけた。
『ごめんね色々連れ回しちゃって、つまんないでしょ?』
「大丈夫だよ」
『いい子だね、夕食は美味しいものいっぱい食べさせてあげるからもう少し付き合ってね』
「うん!」
(あとは日用品に2人の服と食材か時間がないから今日は外食にして明日から自炊にするかな、お婆さんにこの辺りの店の情報は聞いたから場所は大体わかるし早く済ませよう)
日用品売り場で洗剤や石鹸等を買い女性専用の服が売っている店へ行った。
(うぅ、地獄だったよあの服屋め人をマネキンの様に色々着せやがって〜酷い目にあったよ)
店からぐったりした様子で出てきたエレナはこの店に入ったことを後悔した。
店員の女性につかまると次々と服を着せられもうめんどくさいとコーディネートされた服を全て買ってしまったのだった。
その後アクセサリーを売っている店にも少し寄った。
(マナの結晶石を身につける為のネックレスのチェーンが欲しかったんだよね)
買い物も終わりご飯を食べに高そうな店に入っていく、理由は個室がありそうだからだ。
(ゆっくり食べたいし、しょうがないな)
案の定個室があるというのでそこに決めて中に入る。
メニューを持ってくる女性にエレナはおすすめを聞くと見事に一番高いコースを勧められた。
エレナは迷ったが写真がないのでどんな料理か分からず高いから美味しいだろうとそれに決める。
(今日でかなりのお金を使った気がするな、あんな大金を貰って金銭感覚が狂いそうだ)
いきなり1000万ラナを受け取り1日で150万を使ったのを確認するとエレナは少し反省した。
(明日は食材を色々見ようかな沢山の発見がありそうで楽しみだ! 最近は好きな料理ができる状況じゃなかったからなぁ)
食事を終えて宿屋に帰ると早速さっき買った寝巻きを2人で着て支度をするとベッドに入る。
ステラは疲れていたようですぐに寝てしまった。
ステラの頭を撫でながら明日の予定を頭で整理する。
(まずは冒険者登録してステラを連れて行ける仕事を探そう、終わったら食材をみてそれから……zzz)