第75章 大会前夜祭 前編
大会前日の朝にエレナ達はデュアルに呼ばれていた。
「おお! 来たな!」
デュアルの鍛冶屋にアルトと行くとデュアルと他に同じく鍛冶仲間のガダンとゴルスタもいて、「よう!」と手を上げた。
「どうだ? 大会の方は?」
ゴルスタはニヤニヤと笑いながらエレナ達に聞いてきた。
『大丈夫だよアルトと出場する事になったから。で、剣は直りそうなの?』
デュアルは奥から剣を持ってきた。
折れていた剣は見事にくっついていて綺麗に磨かれていた。
「直ったのか⁉︎」
アルトは剣を見て嬉しそうに言ったがデュアルは首を横に振った。
「いや、まだだ。あれから3人でずっとこの剣を直そうと頑張っていたんだが壁にぶつかってな」
『壁?』
「言っても分からないと思うが輝きが無いんだよ。人間で言うと体が元気でも心が死んでいるっていうか無いみたいなものか」
ゴルスタはそう説明した。
「だが安心しろ俺達の師匠が大会を見に来るそうだ。今日ここに寄るらしいからその時にこの剣を見てもらうつもりだ」
「そうか、直ればいいが……」
アルトは剣を見て呟く。
『用ってそれだけ?』
「いや明日の大会に出るのにいい剣を持ってないんじゃないかと思ってな」
デュアルは近くに置いてあった剣を取るとアルトに渡した。
「この店で一番いい剣だ使え」
「すまない、正直困ってたんだ」
アルトは剣を受け取ると鞘から抜いて剣を見た。
淡い青色をした剣は装飾が施されていた。
「用はそれだけだ時間を取らせて悪かったな」
「今日は祭りだ楽しんでこい‼︎」
エレナとアルトは宿に行ってレナとルトに合流して祭りに出掛けた。
街は最大のイベントとあって人がいつもより多く普段歩いている道が人で溢れていた。
『うわー凄い人だね! はぐれないように気をつけないとね』
「そうだな、フェイが子供達を見ていてくれるから安心はしているが」
フェイはレナとルトに両手を引かれていた。
エレナ達は露店で買い物をしたり祭りを楽しんでいたが周りの視線はエレナに釘付けになっていた。
「見ろよあれ……」
「すげー可愛い」
「あんな子いたっけ?」
「楽しそうな笑顔がたまらん!」
別の場所ではハラント、ロイズ、カイジスが祭りに来ていた。
「何で男3人で祭りなんて行かなきゃならないんだぁ!」
ハラントは頭に両手を置いて空を見ながら嘆いた。
「しょうがないじゃん俺達は王子なんだから」
「嫌なら帰っていいんだぞ」
ロイズとカイジスはガックリと肩を落とすハラントを見て冷たくあしらう。
「でもいいじゃんこう言う雰囲気好きだよ俺」
ロイズは周りを見渡して祭りを楽しんでいた。
「まあな平和である証だ」
カイジスも満更ではないようだ。
「これで可愛い女の子がいたら最高なんだけどな!」
そう話しているハラント達の耳にある会話が聞こえてきた。
「おい! 3番街の方でめちゃくちゃ可愛い女の子がいるらしいぞ‼︎ 行こうぜ!」
「それってもしかして最近話題のあの子か⁉︎」
ハラントは先ほどの暗い顔がパァ! っと明るくなりロイズ達の方を向いた。
「おい‼︎ お前達も聞いたか‼︎」
「……ほんとハラントは好きだね。うわ!」
「分かったから離せ‼︎」
ハラントはロイズとカイジスの腕を掴み強引に引っ張る。
3人の足は3番街へ向かうのであった。
別の場所ではリット、マリナ、ナナが仲良く歩いて祭りを楽しんでいた。
「本当に信じられないわ……まさかこんな日が来るなんて」
マリナは涙を浮かべて祭りで飾られた街並みを見ていた。
「そうだね、僕もこの瞬間を何度夢で見た事か……」
リットはマリナの手を握るとマリナの涙をハンカチで拭った。
ナナはそんなふたりを見てクスッと笑う。
「さあ祭りはまだこれからだよ! 今までの分もいっぱい楽しもう!」
「はい!」
3人は賑やかな街の人混みに紛れていった。
空が暗くなってきた頃エレナはアルト達とはぐれてしまった。
『おかしいな何処いったのかな?』
エレナはしょうがなく歩いているとカップルばかりの公園に来てしまったようだ。
ムーディーな雰囲気に気まずくなっていた。
早く出ようと思い早足で歩いていると泣いている子供の声がエレナの耳に入った。
ハラント達はカップルばかりがいる公園に着いた。
「お前達はこれを見て羨ましいとか思わないの?」
ハラントは気まずそうなロイズといつものスカした顔をしているカイジスを見た。
「まあ確かに分かるよ? いいなとは思うけど……」
ロイズは周りのカップルをチラチラと見て答えた。
「俺達は将来この大陸の各国の王になって忙しい毎日を送るんだ。今くらい羽目を外してもいいと思うけどな」
「痛いよー!」
ハラント達の視線がその声の方に向かうと少し離れた所で子供が転んだのか倒れて泣いていた。
近くにいた両親は子供を立たせて足の傷を見ると表情が厳しいものに変わった。
「思ったより酷い傷だ……」
「早く病院に行きましょう!」
「えー今来たばかりなのに……グスン」
子供は痛みとは別の涙が出てこようとしていたがそこへ少女の声がした。
『あの、治しましょうか?』
ハラント達からは後ろ姿しか見えなかったが同じ年くらいの少女が歩いて親子に近づいて行く。
「あなたは?」
母親がそう聞くと少女はしゃがんで子供の足を見た。
『この街の学生です、すぐ治るからね』
少女の手から光が発して子供の足を包み込んだ。
光が消えると傷が跡形もなく消えていたのを親子は信じられない様子で見ていた。
「凄い……あの傷が綺麗に治っている!」
「ありがとうございます!」
「綺麗なお姉ちゃんありがとう!」
『さあ祭りを楽しんで来てください』
両親は頭を下げ子供は大きく手を振って少女から離れて行った。
少女は子供に手を振り返すとハラント達の方へ振り向いた。
ハラント達は少女の顔を見た瞬間雷に撃たれたような衝撃を受けその美しい顔をじっと見ていた。




