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第61章 辺境の地

 エレナが意識を失った後聖剣から光が溢れ出し闇を打ち払うと光に包まれたエレナはゆっくりと地上へ降りていったのだった。




「アルト! 船の道具を片付けておいてくれ!」


「ああ、分かった!」


 いつものように船で漁をした後アルトは大人達が引き上げると船の道具を点検し片付けていた。


 ふと視界に動く物が目に入った。


(何だ?)


 よく見てみると小さな動物の様だった。


 見た事がない生き物に自然に目がいくとその生き物は何かを海から浜辺に引っ張っていた。


「あれは……人か?」


 よく見ると人が倒れているのが分かり急いでそこに向かうと小さな生き物はアルトに気付いた。


 小さな生き物は警戒しているらしくアルトの様子を伺っていた。


「大丈夫だ、俺は敵ではないよ」


 言葉が分かるのか小さな生き物は再び人を引っ張り始めた。


 倒れている人をよく見るとアルトと同じ歳くらいの少女だった。


「手伝おう」


 アルトは少女を抱き上げると小さな生き物は心配そうに見ていた。


「この近くに俺が住んでいる村がある。そこに運ぼう、医者もいるから安心しろ」


 アルトはそう言うと少女を村まで運んで行った。


 後ろを振り返ると小さな生き物も後をついてきている。


 村に着くとアルトが少女を抱えていた為騒ぎになっていた。


「その子はどうした?」


「浜辺で倒れていたんだ。誰かヤトウさんを呼んでくれ!」


 アルトは自分の家に連れて行くと小さな男の子と女の子がドタドタと玄関まで競うように走っていた。


「お兄ちゃんおかえり!」


「あれ? 誰?」


「浜辺で倒れていたんだ。ふたりとも布団を用意してくれ」


「分かったわ!」


 そう言うとふたりは奥の部屋に走って行った。


 少女を布団に寝かすと小さな生き物は少女を心配そうに見ている。


「この子はお姉ちゃんが飼っているのかな?」


 男の子はそう言って小さな生き物に触りたそうにしていた。


「そうみたいだな」


「お兄ちゃん! 綺麗なお姉ちゃんね!」


 女の子がそう言うとアルトはあらためて少女の顔を見た。


(確かに……綺麗だ)


 アルトは美しい少女を見ながら考えていた。


(それにしても何処から来たんだ? もしかすると乗っていた船が魔物に襲われて沈んだかもしれないな)


 やがて医者がやって来ると少女の状態を観てホッとした表情を浮かべてアルトに言った。


「大丈夫じゃ、気を失っておるだけでじきに目覚めるよ」


「そうか、ヤトウさんありがとう」


「それにしても綺麗なおなごじゃな〜」


 医者のヤトウは少女の顔をまじまじと見ていた。


 ヤトウが帰った後夕食を食べて子供達を寝かせた。


 小さな生き物は少女の側からずっと離れず布団の上に丸まっていた。


 そして夜も更けて漁の仕掛けを作っていたアルトがそろそろ寝ようとした時


 少女が寝ている部屋から微かに声が聞こえた。





『うぅん』


 目を覚ますとエレナは布団に寝かされていた。


(どこかの家みたいだけど……)


 周りは家具が無く布団だけが敷いてあった。


『ここは……』


 ゆっくり上半身を起こすとお腹で寝ているフェイを見てエレナは嬉しくなった。


『フェイ……』


 フェイの頭を撫でるとフェイは目を覚ました。


 エレナに気付くと嬉しそうに肩に乗って頬をペロペロと舐め始めた。


『ちょっとくすぐったいよ! ありがとうフェイ助けようとしてくれたんだね』




 カチャ!


 ドアが開く音がしてエレナは視線を動かすと同じ歳くらいの青年が立っていた。


 エレナは青年を見た、日焼けをしているのか肌は黒く体格も良かった。


(顔もイケメンだしモテそうだな)


 青年はエレナをじっと見つめていた。


『あの、もしかして助けてくれたの?』


「あ、ああ、浜辺で倒れていたんだ」


『助かったよありがとう』


「君は何処から来たんだ?」


『そうだ! ここって何処なの?』


「ここは南西の端にあるナタラ村だ」


『近くにハーデルト王国があるな……』


「ん? 何だその国は? この大陸にそんな国はないぞ」


(あれ?おかしいな……)


『地図とか無いの?』


「こんな小さな村にはないな」


『参ったな〜どうしよ』


「まあ明日にでも村長に会えばいい」


『そうだね』


「じゃあ俺は寝る」


『おやすみ』


 部屋を出るとアルトは不思議な気持ちになった。


(何か話しやすい奴だな、言葉遣いのせいか……)


 エレナは部屋の窓から外を見ていた。


 外は真っ暗で何も見えないが空には微かに光が漏れていた。


(皆んなは無事に帰れたのかな……)


『みんな元気かな……ちょっと寂しいな』



 アルトは目が覚めるといい匂いがしている事に気付いた。


 台所の方が何やら騒がしくドアを開けると弟と妹があの少女と楽しそうに話をしていた。


「お姉ちゃんこれなに?」


『それはね料理する道具だよ』


「凄くいい匂いがする!」


『もうすぐ出来るからフェイと遊んで来な』


「フェイちゃん遊ぼう‼︎」


 フェイが子供達の所に行くと夢中になって遊び始めた。


 エレナはそれを見て微笑むとアルトに気付いて挨拶をする。


『あ、おはよう!』


「ああ」


『もうすぐご飯出来るから座ってて!』


 あまりの手際の良さにアルトは椅子に座ってその姿を見ていた。


 次々といい匂いがする料理がテーブルに並んでいく。


『皆んな出来たからこっちにおいで!』


 子供達が席につくと食べ始めた。


「「美味しい!!」」


 子供達は夢中にご飯を頬張っている。


 アルトもスープを一口食べるとその美味しさに手が止まらなくなっていた。


『まだいっぱいあるからね。おかわりしてね』


「おかわり‼︎」


「私も‼︎」


『はは、ゆっくり食べないとお腹痛くなっちゃうよ?』


「だって美味しいんだもん!」


『ありがと、嬉しいな』


 エレナは男の子の口元を布で拭く。


 アルトは知らないうちに口元が緩んでいた。


(いつの日以来だろうかこんなに温かい朝を迎えたのは)


『自己紹介がまだだったね。僕はエレナよろしくね。この子はフェイって言うんだ』


「俺はアルトだ、こいつは……」


『あ、さっき聞いたよ! ルトとレナだよね』


 エレナは最初に会った時女の子の方はレナ、歳は10歳で男の子はルトで8歳と聞いていた。


「そうか」


『ご飯食べたら村長さんの家に連れて行ってくれない?』


「分かった」


「僕も行く!」


「私も!」


『じゃあ皆んなで行こう!』





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