第40章 巨大な味方
(あれ?)
エレナ達はあれからコテージに入って眠っていた。
(意識があるのに周りがボヤけてるって事は……)
『サラさん?』
「そうよ」
サラはエレナの目の前に現れると先日の礼を言った。
「妹を解放してくれてありがとう」
『妹さんに会えたんですね』
「ええ、あの子は当時使命を聞いた時からか生きる意味がないような事をよく言っていたわ。でも記憶が無かったおかげで使命を忘れていい人生を送ったみたい、顔を見てすぐに分かったわ」
サラは自分の事のように嬉しそうに話す。
『サラさん何かあって僕を呼んだんですか?』
「うん……カダル王国がついに戦争を始めたのね」
『はい』
「戦いになったら私を呼んで」
『え?』
「結晶石にマナを流してね、力になるわ」
『分かりました』
「私にはお母さんとクレイの力があるわ、きっと大丈夫」
サラは自分に言い聞かせるように言うとエレナに微笑みかけた。
「じゃあおやすみなさい」
エレナはまた意識が薄れて眠りに戻った。
エレナは皆より早く起きると朝ごはんを作っていた。
「聖女殿おはようございます。早いですね」
シャクトも朝早く起きて出かける準備を終わらせ外に出ると料理をしているエレナに声をかけた。
『シャクトさんおはようございます。みんなの朝ごはんを作ってました。もう出発ですか?』
「はい、いち早く応援を呼ばなければ……」
『じゃあこれを』
エレナは包んだサンドイッチを渡した。
「ありがとうございます。では行ってきます」
『よろしくお願いします』
シャクトはポーラトールに向かって走って行った。
馬車に乗りハーデルト王国に向かっていた馬はものすごい勢いで走っていた。
窓からの景色の変わりようはいつもより早く、電車に乗っているようだとエレナは感じていた。
マイナが出発前に馬にマナを流して強化したのだった。
マイナは治療の他に他人を多少強化出来るそうだ。
だが治療にも限界があり傷や内臓修復が限界で手足の再生などは無理だと言っていた。
『マイナ王女、王国にはどのくらいで着きますか?』
「明日の朝には着くと思います」
道中カダル王国の馬車に遭遇したが強化したこちらの馬車にはついて行けなかった。
そうして夜になると馬車を岩陰に置き野宿の準備を始めた。
エレナはコテージを指輪に収納しているので普通に生活できていた。
「聖女様は凄いですねこんなに大きな物を……」
マイナはコテージを出すエレナに改めて驚いていた。
エレナはコテージの前で料理を始めた。
その間皆はテーブルを囲み話をしていた。
「ハーデルト王国はどうなっているのかしら……」
マイナは心配そうな顔で俯いていた。
「ハーデルト王国はこの大陸屈指の軍事国家だ、そう簡単には落ちないと思うが」
ユギルは剣の手入れをしながらマイナに言った。
「そうですよ! きっと持ち堪えて助けを待っていると思います」
セリアは王女のカップにお茶を注ぎながらユギルに続いてマイナを元気付けようとしていた。
「ありがとうございます」
マイナは少し表情を明るくするとお茶を一口飲んでカップを見つめていた。
『今ここで心配しても仕方ないですよ、ゆっくり休んで明日に備えましょう』
エレナは出来た料理を並べ始める。
「そうですね、皆を信じて明日に備えます」
次の日の朝早く起きるとすぐに馬車を走らせた。
しばらくすると遠くに城が見えてくるとエレナは望遠鏡を覗いた。
城のあちこちが損傷しており煙が上がって周りには空を飛んでいる魔物が鳴き声を上げてグルグルと城を監視するように飛んでいる。
エレナ達は馬車を近くの森に隠して城の方へ向かった。
城下町に近づくと周りにも魔物が多くうろついているのが視界に入った。
『皆んな準備はいい?』
エレナはみんなを見て声をかける。
「大丈夫よ」
セリアは弓を手にユギルは剣を構えて頷く。
「あんな数をこの人数で……危険です! 何か他の方法を……」
マイナは心配そうな顔で止めようとしたがエレナは迷いのない顔でマイナに話す。
『でもこのまま応援を待っていたら。もしかしたら助からない命があるかもしれない、後悔しない選択を僕は選びます』
マイナ王女は国民の為に命を懸けてくれるエレナ達に涙を流した。
「聖女様はそこまでしてくれるのですね、この恩は忘れません……みなさんにお願いがあります。私を城の方まで連れて行って下さい。中には兵がまだいるはず」
マイナは王国にいるだろう王に応援を求めるつもりでいた。
『分かりました。まず王女様を城の近くまで護衛します』
エレナはサラが昨日言った事を思い出しネックレスの結晶石にマナを流した。
『サラさん時が来たよ……力を貸して‼︎」
その瞬間結晶石から大きな光が飛び出して空に放たれた。
「……これは⁉︎」
「凄い……」
「サラ……」
空には大きな白竜が翼をはばたかせて浮いている、そうエレナが最初に森の洞窟で戦った白竜だった。
(……あの時よりデカくないか)
白竜はエレナ達を見ると鳴き声をあげて城に物凄い勢いで飛んで行った。
『行こうみんな!』
力強い仲間の参戦にエレナ達はテンションが上がり飛ぶように魔物に向かって走って行った。
ハーデルト王国の近くで野営をしていたカダル王国の幹部のテントに兵士が慌ててやって来る。
「申し上げます! 今ハーデルト王国の魔物が次々と倒されています」
「なんだと! リンドラ王国からの援軍か!!」
「馬鹿な! 早すぎる!」
幹部達は椅子から立ち上がり外へ出ると大きな望遠鏡を覗き込んで城の方を見た。
城の周りでは炎がいかずちがほとばしり。大きな白竜が暴れ回っていた。
魔物が次々と散っている先にはたった3人の姿が見える。
見えないほどの速さで魔物を切り捨てていく剣士に一度に多くの矢を飛ばし魔物を仕留めていく弓手、そして物凄い威力のマナで複数の魔物を葬るマナ使い。
もはや力の差は圧倒的に魔物が負けており数を持ってしてもその差は歴然だった。
ある幹部は考えた。
(今ここには1万の兵がいる……)
明日には更に5万の兵が合流しハーデルト王国に攻め込む予定であった。
「今攻め込んで魔物と闘っている者を葬れば明日には増援で何とかなるだろう」
他の幹部も同じ事を考えていたのか異論は出なかった。
「よし!今すぐ兵を連れて進軍だ!」
「は!」




