第31章 救出
話を聞いたエレナは早速メアリナがいる寝室へ向かった。
ベッドで傷だらけになっていたメアリナをマナで傷を治していく。
「まさか! 重傷だった傷が癒えて……く!」
みるみる傷が癒えていくのを見たソーンは驚くと同時に涙を流していた。
『これでもう大丈夫です』
「聖女様ありがとうございます!」
ソーンは涙で赤くなった顔を拭くとエレナに頭を下げた。
場所を応接室に戻したエレナ達はソーンに質問する。
『盗賊のアジトは何処にあるんですか?』
「アシュレイ様が調査した手帳があります」
ソーンは奥の部屋から手帳を持って来るとエレナの前に置いた。
ユギルは手帳をパラパラとめくるとある場所で手を止めた。
「アジトは深海の森の近くだな……ここから北に行った所だ」
ユギルが手帳を見ながら言った。
『今から行こう、早く助けなきゃ』
ユギルは頷くとエレナ達は立ち上がった。
外へ出てアトスに事情を説明すると驚いた表情をしていた。
「何とそんな事になっていたとは……」
『アジトまで行ってきます』
「王国に応援を要請してはどうでしょうか?」
『大丈夫です、ユギルもいますし時間がないんです』
「では私達もお連れ下さい。力になれると思います。リンドラ王国にもこの屋敷の誰かを送って報告しておきましょう」
『ありがとうございます』
アトスの手際の良さにエレナは安心して馬車に乗り込み北に向かって馬は走り出した。
北に向かって2日が経とうとしていた頃、馬車の窓から前方に大きな森が見えた。
「あれが深海の森だ。アジトはここから東の山と手帳には記してある」
ユギルは一旦馬車を止めるとアトスに行き先を指示した。
馬車は東に方向を変え走って行くと山が幾つか姿を見せていた。
「あれか……」
ユギルが見た先には洞窟があり、そこにはガラの悪い大きな男が手にサーベルを持ち立っていた。
『よし、行こう正面突破だ!』
エレナはロッドを出すと馬車から飛び降りた。
「面白い!」
ユギルも剣を出して馬車から大きくジャンプすると一番先を走って行った。
『兵士の皆さんは入り口から逃げる盗賊の対処をお願いします!」
そう言ってエレナは返事を聞く間も無くマナを纏いユギルを追いかけて洞窟へ走っていった。
追いつくエレナにユギルは走りながら言った。
「盗賊など躊躇するなよ逃してもまた同じ事をするだけだ、それに捕らえても死刑確定だ」
『あんまり殺したくないけど降伏しない人には容赦しないよ』
ユギルは入り口にいる男を切り捨て奥に入って行く。
中は入り組んでいたが奥の広い場所には多くの盗賊がいた。
「誰だ!」
「殺せ!」
武器を持った男達が一斉に襲ってくるとユギルは次々と盗賊を切り捨てていった。
その後ろではエレナがマナでいかずちを辺りに落としていった。
「つ、強い‼︎」
「ぐああ‼︎」
広い広間には男達の悲鳴が鳴り響いていたが段々とそれも止んで行った。
この部屋の盗賊を全て倒すと周辺の部屋をエレナはユギルと手分けして調べていった。
そして左奥にあった部屋にエレナが入ると男2人と子供1人が檻に入れられていた。
『酷い……』
エレナはその惨状に言葉が出なかった。
ひとりの男は傷だらけで倒れており、他の親子と思われるふたりも意識が朦朧としているようで目が虚だった。
エレナは檻をマナでこじ開ける。
「うぅ……誰だ?」
倒れている男が目を覚ました。
『助けに来ました』
「盗賊にやられて目が見えないんだ……」
エレナはその男に触れマナを流し傷を癒していく。
「おお! 体が……目が!」
男は起こった奇跡のような出来事に驚くと共に痛みがなくなり治った体を確認するとエレナに頭を下げた。
「ありがとうございます、まさか目まで治せるとは! あなたは?」
『とにかくここを出ましょう』
ユギルを呼び傷を治した男と一緒に他に捕らえられていた人を運んでいった。
エレナはその間他の部屋を探索し宝物庫を探し出すと指輪に全て収納した。
エレナが洞窟を出ると何人か盗賊が倒れているのが目に入る。
「聖女様お見事です! ここから逃げ出そうとした輩は全員倒しましたので」
そばにいた兵士が声をかけてくるとエレナは『お疲れ様です』と返した。
兵士達は嬉しそうに「光栄です!」と聖女と共に大仕事をしたと仲間と大いにを喜んだ。
『ボスは何処に行ったんだろ?』
エレナはそれが気になっていたのだがユギルがあっさりした口調で答えた。
「ああ、それなら俺が倒した、奥の部屋にいたな」
(まあボスを倒したんなら大丈夫だろう)
「アシュレイ殿!」
エレナ達の後ろでアトスの声が聞こえた、エレナが振り返るとアトスと会話をしていたのは先程エレナが助けた傷だらけだった男だった。
「アトス殿ではないか‼︎ もしやリンドラ王国が助けに来てくれたのか?」
「いえ違います、あちらにいる聖女様です」
アシュレイはエレナを見て驚きの顔に変わった。
「まさか、あの方が噂の聖女様……」
アシュレイはエレナに跪いて頭を下げた。
「この度は本当にありがとうございます。私などのために」
『約束ですから』
「約束?」
『とにかく屋敷に戻りましょう』
馬車の中で捕らえられた人を馬車の中で治療していたが精神的にも安定しておらず栄養が足りないようで寝たきりの状態だった。アシュレイの話でアシュレイが捕まった時には既に2人共捕まっていたといい、リンドラ王国で保護するとアトスが言った。
馬車はまた2日をかけて戻り、屋敷に近づくとアシュレイは懐かしそうに屋敷周辺を馬車から眺めていた。
屋敷に入るとそこにはメアリナが泣きそうな顔をしてソーンと並んで立っていた。
「メアリナ!」
「あなた!」
二人は抱き合い涙を流して再会を喜んだ。
後ろでソーンも涙を流しながらふたりの再会を喜んでいる。
アシュレイの腕の中で泣いていたメアリナは落ち着くとエレナに頭を下げた。
「ソーンより聞きました……私の傷を治してくれたそうですね、ありがとうございます聖女様」
エレナは微笑んで頷くと盗賊のアジトから持ってきた宝をその場に次々と出していった。
『この中に家宝はありますか?』
アシュレイは沢山の宝の山から木できた箱を手に取る。
「これです!」
「よかった……これで長い戦いが終わるのね」
アシュレイとメアリナは長い戦いの終わった事で力が抜けてその場に座り込んだ。
やっと終わる過酷な旅を思い返していたのか肩を震わせ啜り泣いていた。
エレナはそれを見てこれまで家宝を取り戻す為の旅がどれほど辛いものだったか……そう思うとやりきれない気持ちになった。
(もうそれも終わりだ、後はまた幸せな生活を取り戻せばいい)
エレナはふたりの幸せに欠かせない人物の名前を口に出した。
『これでセリアを迎えに行けますね』
エレナの言葉にふたりは顔を見合わせると2年前家宝の為に置き去りにした愛娘の顔が浮かび申し訳ない気持ちになり黙ってしまう。
ふたりは何も言わずにポーラトールにセリアを置いていった事を毎日のように思い出しては自分を責めていたがもう後には引き返せなくなっていた。
ふたりがこれまで頑張って来れたのも家宝を取り戻しセリアを迎えに行く事を目標にしていたからだ。
夜になるとセリアの顔を思い出しては涙を流す日があればセリアはもう自分達を見限ってしまったのでは?と思うこともあり心はボロボロになっていた。
「セリアは許してくれるだろうか……」
アシュレイは自信のない表情を浮かべる。
エレナはセリアから借りたペンダントを外しアシュレイに渡した。
「こ、これはセリアに渡した……』
『セリアと約束したんです両親に会わせるって、そう言ったらセリアは泣いてました、待っていますよあなた達のことを』
「セリア……」
「うぅ……」
ふたりはその場で泣き崩れいつまでも泣いていた。




