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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第二歴 勇者の盾、その転職。
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第三話

「え?」


 いや、え? じゃねーよ。もしかしてテメー、おしべとめしべの違いから教えなきゃならねーレベルか? いくら危険だっつっても、うら若き乙女たちの前で、むくつけき男の全裸はダメだろうよ……ほら、軽い身体検査なら、村から誰か男の人呼んできてやればいいし……


「え、あ、そう、そうなの? え、でもここであたしとかこの子たちがやったほうが早くない?」


 こい、……こいつ……いや、うん、もう、もういい。こいつにはいくら話しても無駄だってことがわかったし……


「……なぁ」


「え、はい……なんですか?」


「とりあえず、検査ならいくらでも受けるから、男の人、呼んできてくれないか?」


「……はい」


 言うに早いか門番の片割れが、ささっと素早く村の中に入っていく──話が早い。


 いや、この子たちもこの事態にどう対応したものかと頭を悩ませていたのだろう。そしてそこの全裸要求女、疑問たっぷりの顔と目をこちらに向けるんじゃない──これは当然の反応であり真っ当な対応だからな? 非常識なのお前のほうだからな?


 誰だよこいつの情操の教育を担当したヤツは……ツラ見せろよ、一回全力で殴ってやるから……


「おーい、一体なん──うおわにんげ……人間!? なんで……」

 

 っと、どうやら来たみたいだな。やれやれ、これでようやく、村に入れそうだぜ──





 さて、村に入ったあとの行動はといえば……大方の予想通り、まずは村長、を任されている、壮年(あくまでも見た目は、だが)の男性の家まで案内され……まあ、そこまではいい、いいんだが……なんか、知らんけど、村の住人のほとんどが、その周囲を取り囲み、……やっばい、すっげえ視線感じる、なにこの針のむしろ……


 ああ、いや、考えてみりゃ当然か……何せ危険が無い、と前もって知らされていたからって、猛獣を目の前にしたら、誰だって警戒するし、そうでなくても物珍しさからそりゃあ一目見に来るわな。でも、この、この……視線の槍衾やりぶすまは、ちょっと……いや、大分……きっつ……


「……それで、きみ、えっと……」


「あ、ライトっす。ライト・サンド……」


 びく、と。あちらから聞いてきたにも関わらず、俺の声を聞いた村長が、ビビったのか難なのか知らないが、とにかく目を見開き、身を竦ませ強ばらせる。


 うん、うん、まあ気持ちは、分からんでもないけどさあ……一言の度にこれじゃあ、会話が滞ってしゃーないんだが……どうしようかなあ……と、


「ん、何よ……っとと、何ですか?」


 居た。都合のいい緩衝材フィルター居たわ。こいつならこの、その、……ナイスミドルな村長の腹や心の臓に負担掛けずに済むだろうし……よし、


「すまん。なんか知らんが、お前んとこの村長、俺に怯えてるみたいで……そっちの方で事情説明してくんないか?」


 顔を寄せ、その横に手を添えて、小さな声でこそこそと。


 聞いた彼女はちら、と、改めて自身の長の様子を確認、そして俺と同じ感想を抱くと、不承不承といった感じで軽く頷き、


「えっと、村長……どうやらこの人間、その……そう、説明とか、ちょっと、いえ少々苦手らしいので、あたしから話させていただきます」


 あ、あからさまにほっとした。わりかし聞こえる音量で安心の息を吐きやがった。


 いや、うん、まあいいや。とりあえずこれで事情を分かってもらえれば……別にここでどう思われようと、ぶっちゃけ居座るつもりではあったし。


「ほう、ほう……なるほど……人手……門番……」


 お、どうやら本題を話し終えたみたいだな。ここまで来た経緯、目的、ついでにちょっとしたわがまま、それに対する報酬、いや大げさか。精々ご褒美ってとこだな。

さて、それらを踏まえて、どう出るか。出てくれるか……


「……ここに来たいきさつ、そして希望は分かった。こちらとしても人手は、特にきみのような男手は、是が非にでも欲しいところではあったし、こちらとしては、諸手を上げて歓迎したい、ところ……なのだが……」


 顔が、曇る。その理由は……まあ、分かっていた。


 というのも、この話、俺が村に居着きたい、というくだりに入った瞬間、こちらを見つめる目線に、多少ながらも負の感情が入り雑じったのを、肌が感じ取ったからだ。


 負の感情、とわざわざ称したのは、それらが殺意やら敵意やら、といった害意ばかりではなく、恐れ、怖気おぞけ……そういった、いわば自分達の身を案ずる自己防衛も孕んでいたから。


 まあ、当たり前、か。こんな突然にすぎる来訪をしたあげく、その上自分達の縄張りに入って、さらに仲間にしてくれと半ば強引に座り込んだ異物おれを、そう簡単に受け入れられるはずもない。


 加えて言えば、俺はこいつらの同胞を、直接的に殺して回った、言ってしまえば怨敵。まあ知らないだろうが、少なくとも自身達の没落の一途、それを辿らせた種族であると、認識している。そんな俺を、どうして素直に迎えられようか。


 だが、こっちだって、それなりに覚悟してきた……こんな事態になる事も、まあそもそも村から迫害される事も、全て分かってここまで来たんだ。そんな簡単に退くわけには……いや、別に退いてもいいけど、とりあえずせっかく拠点が出来そうだし、粘れるだけは粘る。うん、そうしよう。

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