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勇者の盾は、もう要らず。  作者: あんころもち
第二歴 勇者の盾、その転職。
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第一話

あのあと。あの奇妙な取引と偶然の一致の……多分、一月(ひとつき)後、あたり。俺と彼女(あれ? 名前聞いたっけ? だとしてなんだったっけ? まあいいか問題ないし)はどうにか魔の大陸までやっとこたどり着き、現在そのただ中をてくてくと歩いていた。


 いや……まあ……どうにかって言葉で雑に省いたけど、まあまあ結構な大冒険だった。何せそもそも現在地自体が分からなかったから、とりあえず直感で方角決めて歩いて、でも実はそれ王都に向かっちゃってて、そんで遅れて追い付いてきた勇者一行に発見されて一日中追いかけ回されて、頑張って撒いたと思ったらまた現在地不明になって……あそこで星から方角を知る方法を思い出したのは俺のファインプレイだったな、うん。で、そっからは……記憶力との勝負だった。一応あの大陸から徒歩で帰った記憶は……なんとかあったから、あとはそれを逆算していけばイケる! と頑張って、手繰り寄せ、て……当然それもあやふやだったから、そこから、散々、迷いに迷って……迷ったあげくに……ここまで……


「……あのさ」


「おう……」


「言いたいことは、うん、たくさんあるんだけど……とりあえず、一つだけ。


──もう、あんたの直感とやらには、ぜっっっっっっっったいに従わないわ」


「……はい……」


 何も言えねえ……返事しかできねえ……むしろ謝りたい……心の底から謝りたい……


「いや、まあ? 確かにあんたのおかげでここまで来れた、来れたわよ? でも、でもねぇ……」


 はい……すいません……もう直感には頼りません……頼りにならない直感ですいません……むしろこんなクソザコ当てずっぽうマンでごめんなさい……生きててごめんなさい……死んで詫びます……


「いや、生きててもらわないと困るんだけど……せっかくの貴重な、しかもとびきりの人手が無くなっちゃうじゃない」


 あ、はい……せめて死ぬなら役に立ってから死にます……っと、いつまでもネガネガしてる場合じゃない、つかこの話題が続くとこっちの気が滅入りっぱなしになるし……えっと、なにか、なにか別の……あ、


「そ、そうだ! これから向かう村ってのは、一体どんなところなんだ?」


 少し不自然な話題転換だったが、彼女もこちらの気持ちを察してくれたらしく、一度大きく、聞こえよがしにため息を吐くと、


「あたしたちの村は……まあ、元々はあの大戦での軍事拠点を改造して作った小さなとこでね……」


 そこから彼女は、ぽつり、ぽつりと、初めは村の興りを語り始める。


 元々そこはあの大戦で乱立した拠点の一つを、そこにいた将兵たちで改造した、非戦闘員用簡易シェルターであり、本来であれば大戦が終わるまでの一時的な対処であったが、……あちらにとっては運悪く、人間側が勝利してしまったため、そのまま──なんら力を持たないものたちが残されたまま、放置されてしまったのだ。


 ……彼女たち現村人が、その事実に気付いたのは、大戦が終わってから十数日経ってからであり、その頃には水も、食料も、……物資の何もかもが足りなくなってしまっていた。


 だが、彼らも存外たくましいもので、救援が来ないのだ、と理解すると、積極的に外へ出、その周りから野草や動物(といっても野うさぎみたいな小さなそればかりだったらしいが)を採取し、そこらの木を切り倒してそれぞれの家を建て、そして村人それぞれの知識や技術を生かしつつ、どうにか生活圏を確保していき──


「で、今に至るってわけ。まあ、生活は貧しいけど、それなりに楽しくやってるわ。

まあ、それでも満足できないときは、あーやって人間とか妖精とかの街に降りて買い出ししたりしてるけど……」


 村長への言いわけどうしよー、なんてぼやいてる彼女を横目に、先ほど得た情報を噛み砕いていく──なるほど、もっと貧困してるイメージがあったが、これなら少なくとも、すぐに食いっぱぐれるってことは無さそうだ。


 しかし……さっきの話の中で、一つだけ疑問がある……っと、こういう時は聞くのが一番だな。


「なあ、さっき買い出しっていったが、お前ら人間や妖精の金ってどうしてるんだ?」


「え? ああ、それね。うん、確かにそこら辺は……あたしたちも結構苦労したけど、まあ、ほら、こう……人に化けて……」


 ああ、なるほどね。そうやって街に降りて短い時間で終わる職とか探したり、あとは……行商とか装って売っても問題がない魔大陸のものとかで商売してるわけか。しかしよく、こんな短い期間で、そんな……


「こっちも生きるのに必死だったから。そんななりふりかまってられなかったってことよ──っと、


──ほら、あれよ」


 お、やっとか──なんて感慨を抱きつつ、彼女に倣って薄く見えてきた村に目を移す。


 さて、およそ通常の生命体など住めそうにないこのおどろおどろしい環境で、はて、どのようにして生きているの、か……お、


「おお……これは……」


 意外──住民達に失礼ではあるが、その村落を見て、初めて浮かんだ感想はそれだった。

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