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アルグリア戦記 ~1/31,104,000秒の世界~  作者: 虎口兼近
第4章 詐欺師飛翔編
29/40

第28話 廃神さん...傍観する(11)

毎月...3日...13日...23日......更新予定です。

●アルグリア大陸暦千三百八十四年四月二十八日 

【アレキサンドロス特等学園】






【マルガレーテ・シイトス】

「ミクナーク様、浮かない顔をされていますけど大丈夫ですか?」




【ミクナーク・ベニアス】

「ああ、ごめんレーテ。弟が心配でね......」


 




 地精霊人(ノーム)の男と普精霊人(ヒューマン)の女が、アレキサンドロス特等学園の花園で語り合っていた。




 地精霊人(ノーム)の男は、ベニアス王国第一王子ミクナーク・ベニアス。




 普精霊人(ヒューマン)の女は、シイトス王国第一王女マルガレーテ・シイトス。






 ミクナークは本国からの手紙を見詰め、渋い顔をしている。




 そんなミクナークを憂うマルガレーテは、ミクナークの苦悩を知るだけに掛ける言葉がなかった。




 ミクナークは臨んで、このアルバビロニア大帝国の、アレキサンドロス特等学園に来た訳ではなかった。




 全ては己の弟の、将来の為の布石と思い、万感の思いで、この学園に入学したのだった。




 それをマルガレーテが知ったのは、二人が出会って暫くしてからだった。






 二人の出会いは、ミクナークの大切なお守りを、マルガレーテが拾った事が発端だった。




 ミクナークは草臥(くたび)れた紐も、大切な思い出の為に大事に扱っていたが、その紐も擦り切れてしまい、大切なお守りを落としてしまった。




 それに気付いたミクナークは必死にお守りを探すも、そのお守りは子供が作った拙い物だった。




 その様な物が落ちていても、清掃され捨てられる。




 それ故にミクナークは必死に暗闇の中も、お守りを探し続けていた。




 そのお守りとは、ミクナークの弟が作った拙い物だった。




 しかし、ミクナークにとってそれはどんな宝石よりも、尊い物だった。




 そんなお守りを拾ったマルガレーテは、そのお守りに己が持つ小さき頃より大事にしている人形と同じ、大事にしている想いを感じ取った。




 翌日も、そのまた次の日も、探し回るミクナークの姿は学園の者達には、奇異なものに映っていた。




 そんなミクナークの存在を知ったのは、心無い噂だった。




 ベニアスの王子ともあろう者が、必死に地べたを這いずり回っている。




 何を探しているかは知らんが、面目と言うものがあると。




 そんな形振り構わないミクナークの様子を、口性無い者達は嘲笑していた。




 マルガレーテは己が拾ったお守りが、ミクナークの探している物かも知れないと、声を掛けた事が二人の出会いだった。




 ミクナークはマルガレーテに感謝し、そのお守りが国に居る弟が、幼き頃に己に作ってくれた大事な物だと語った。




 マルガレーテは己の人形と同じ想いを感じたお守りが、再びミクナークの手に戻った事を我が事の様に喜んだ。




 マルガレーテの大切な人形は、無き兄の贈り物だった。




 どんなに大事に扱おうと、人形は擦り切れてくる。




 マルガレーテの立場で、そんな貧相な人形を部屋に置く事に、侍女達は良い顔はしなかった。




 マルガレーテにとって、体面よりも大事な物が、兄の残した人形だった。




 そして、ミクナークにとってお守りはまさしく、体面よりも大事な物だった。




 それから二人は急速に仲を深めていった、......親友として。




 しかし、運命はそんな二人を祝福してはくれなかった。




 シイトス王国は、ベニアス王国の隣国の小国だった。




 そして、二人の関係を知ったシイトス王国の国王は、己の娘に非情な命を下すのだった。




『王子の心を掴み、王子の伴侶と為れ!』




 マルガレーテにとって、ミクナークは初めて出来た親友だった。




 しかし、それ以上の感情を、今は持ってはいなかった。




 そして、この非情な命が、二人を分かつ事になる。




 ミクナークはマルガレーテの苦悩を知り、敢えて知らない素振りで、恋に落ちた振りをする。




 そして、マルガレーテ()心の機微に敏感だった。




 マルガレーテは己の下心を知り、敢えて知らずを演じるミクナークに、心の中で懺悔し感謝した。




 小国が生き残る為には、仕方がない。




 マルガレーテは、そう思いたかった。




 そして、ミクナークは留学期間が終わり、ベニアスに帰って行った。






 運命の歯車がコトリと廻った。






 ミクナークの帰還後に開催された、アルバビロニア大帝国アレキサンドロス大帝主催仮面舞踏会で、マルガレーテは運命を感じる相手と出会う。




 その相手もまた、マルガレーテに運命を感じ惹かれた。




 お互いに惹かれ合った二人は、束の間の逢瀬に胸を躍らせた。






 暫くしてベニアス王国へと帰ったミクナークと入れ替わりに、ミクナークの弟が学園に留学して来た。




 ミクナークから弟の事を頼まれていたマルガレーテは、ミクナークの弟を茶会に誘い絶句する。




 その茶会に現れたミクナークの弟は、先日の舞踏会で、己が運命の相手と感じた者だった。




 ベニアス王国第二王子、ローグレス・ベニアス。




 そして、またローグレスも絶句する。




 あの日の運命の相手が、己の兄の恋人だったのだから......。




 兄の恋人に恋した、王子の弟。




 恋人の弟に恋をした、王女。




 そして、二人は己の心に、共に鍵をした。




 兄の恋人と恋人の弟。




 決して表沙汰には出来ない、隠さねばならない想い。




 二人の、苦悩の日々が始まった。






 そうしているうちに、ベニアス王国とシイトス王国では、ミクナークとマルガレーテの婚約が正式に結ばれた。




 その婚約発表の為に、ベニアス王国へマルガレーテは向かった。




 マルガレーテは、これは己に下された罰だと思った。




 親友に心無い政略を仕掛け、情けを掛けられながらも、親友の弟に恋をした己への罰だと。




 ローグレスは己の想いに鍵を掛けてはいたが、その想い故にマルガレーテの後を追いベニアスに帰還していた。




 そして、己が想いをマルガレーテに伝え、マルガレーテからは己への偽りの無い想いを受け取った。




 しかし、そんな二人の関係に気付いた者がいた。




 ベニアス王国第一王子、ミクナーク・ベニアス。




 悲壮なマルガレーテの様子に気付いた王子は、事の真相を探り出す。




 そして、浮かび上がってきた真相は、己の弟ローグレスとの恋だった。




 ローグレスが秘密裏に帰還し、マルガレーテと会ってお互いの想いを通わした事を知ったミクナークは、二人を呼び出した。




 苦悩するマルガレーテと弟に、ミクナークは優しくこう言った。




「大丈夫だよ。全て僕に任せておけば良い」




 そして、婚約発表の時を迎えた。




 シイトスの外交特使も臨席する場で、マルガレーテとミクナークの婚約が発表される。




 しかし、発表されたのはローグレスとマルガレーテの婚約だった。






 その不可解な、婚約発表の顛末。




 ミクナークは、王位継承を放棄したのだった。




 シイトス王国の目的は、婚姻同盟だ。




 相手は次期国王ならミクナークでなくとも、シイトス王国としては問題はない。




 そして、ミクナークの長年の計画により、ローグレスの資質が開花していた。




 ベニアス王国としても、()()調()()で、ミクナークの長年の計画の前倒しだった。




 そして、ベニアス王国はローグレスとシイトスの王女の婚約と、()()()()()()()()()()()()を発表したのだった。




 そして、ミクナークは全てをローグレスに託して、ベニアス王国を出奔した。




 何故、ミクナークはそれほどまでに、ローグレスを溺愛していたのか?




 何故、王位を放棄しても、側で弟を見守らないのか?




 その答えを知るのは、唯一の親友であるシイトス王国第一王女、マルガレーテ・シイトスだけだった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【アルバビロニア大帝国~帝城プロロス】






【マルガレーテ・ベニアス】

「貴方は何者ですか? 貴方はミクナーク様ではありません! 何故ならミクナーク様がベニアスを去る理由を、私が知っているからです! そう、ミクナーク様自身からお聞きしたのです! その事実を知らない貴方は、一体何者なのですか?」






 マルガレーテの糾弾が、詐欺師に投げ掛けられる。




 詐欺師の魔法は、解けた。




 しかし、詐欺師は諦めない。




 否、諦める訳にはいかない。




 今も病に苦しみ、己の心配よりも、己の父親を案じる少女の姿に、詐欺師は亡き己の母の姿を見た。




 己が救えなかった母。




 その母と重なる少女を救う事に、詐欺師は命を懸ける。




 起死回生の一手を打つ!




 詐欺師は、諦めない。




 もう二度と()()を、犯さない。




 そんな詐欺師の頭に、声が響く。






【カルマ】

『ナークス! 否、ミクナークよ! ......』






 そして、刻が止まった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【帝都プロロース~ロシナンテ商会百貨店付近】






【カルマ】

『待て! ......』






 プロローズの裏社会を牛耳る大男の頭に、声が響く。




 良いのか?




 本当にそれで良いのか?




 お前の娘の為に、一命を懸けている男を裏切るのか?






【キルギルス・ノール】

「誰だ? ......」






 そして、刻が止まった。






●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日 

【アルバビロニア大帝国~帝城プロロス】






【ジズード・マラッセ】

「はっははははは~! やっぱり偽者だった! 俺は間違ってはいなかった! これでノクレ、お前も終わりだ!」






 近衛兵に拘束されたジズードが、唖然としているノクレ・オーディスを嘲る。






【ノクレ・オーディス】

「......」






 帝城プロロスの大広間で、姿と気配を消して空中に浮かぶカルマが、静かに様子を見守っている!




 その視線の先には、己を嘲笑する()()を、悲しそうに見詰める老商人の姿が映っていた。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






 アルグリア大陸の北西に位置するアッバース王国は、巨精霊人(ジャイアント)が統治する軍事強国である。




 巨精霊人(ジャイアント)は力を重要視する以上に、誇りを第一義にしている。




 卑怯な振る舞いは、巨精霊人(ジャイアント)は受け入れない。




 そして、その高潔なる魂を至高としていた。




 それ故に巨精霊人(ジャイアント)との約束は、絶対であった。




 巨精霊人(ジャイアント)は、約束の為に己が命を、惜しまない。




 そんな巨精霊人(ジャイアント)が統治するアッバース王国には、規範がある。




 “正義の剣であれ!”




 アッバース王国は、私利私欲の侵略行為を為さない。




 しかし、道理を違えた国には、正義の剣を振るう。




 喩えその正義の剣が、傲慢の誹りを受けても、アッバース王国は躊躇わない。




 傲慢なる正義を振るう力を持ち、傲慢なる正義を説き、己の正義を疑わない国がアッバース王国だった。






 アッバース王国は別名《狂国》と呼ばれ、近隣の国々に畏れられ、敬われていた。








 To be(続きは) continued(また次回で)! ......

ご都合主義満載! 【詐欺師飛翔編】の締めの第33話までお付き合い頂ければ、幸いです!


幾重にも絡まった糸が、解き解される、続きを見たいと思った人は、★評価・ブックマーク登録・感想よろしくお願いします!


最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!


【2020/07/21 改訂しました】

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