第27話 廃神さん...傍観する(10)
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●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日
【アルバビロニア大帝国~帝城プロロス】
【アレキサンドロス・アルバビロニア】
「ジズードよ! その沈黙が己の答えと受け取っても良いのか?」
【ジズード・マラッセ】
「......」
大帝に詰問されたジズードは、答えに窮する。
肯定も否定も、身の破滅であるからだ。
脂汗を流しながらもジズードは、己の身を守るべく沈黙せざるおえなかった。
そんなジズードを眺めていた大帝が、今度はノクレに問い掛ける。
【アレキサンドロス・アルバビロニア】
「ノクレよ、どうやら答えが出たようだな。此処に秩序と法を司る天空神ライブラ様の裁きが下された。ジズード・マラッセ商会長は、己の沈黙を持って己の不実を証明した。しかし...だ。不実なる者は果たしてこの者だけであろうか? のう、ミクナーク殿?」
そう大帝から問い掛けられた詐欺師は、徐に拝礼しこう答えた。
【ナークス・アエニブス】
「全て、大帝陛下の御心のままに......」
FHSLG【アルグリア戦記】に於いて、身分とは絶対的な格差である。
アルグリア大陸では、第一位階として戦う身分である騎士・貴族と、第二位階として祈る身分である聖職者と、第三位階として働く身分である商人・職人・農民と、第四位階として隷う身分である奴隷と、第五位階として見えざる身分である自由民の、五つに分別される。
そして、その五つの身分の中でも、序列が存在する。
第一位階として戦う身分である騎士・貴族は、君主(王族)を筆頭に領主(貴族)・騎士と序列がある。
第二位階として祈る身分である聖職者は、教皇を筆頭に総司教・大司教・司教・司祭と序列がある。
第三位階として働く身分である商人・職人・農民は、三職平等であるが商人・職人には徒弟制度(見習いから始まる制度)があり、財を多く持つ者が力を持っている。
第四位階として隷う身分である奴隷は、隷属する主人の財産でありそれ以上でもそれ以下でもない。
第五位階として見えざる身分である自由民は、一言で言うと税金を払わない流民である。
帝都プロローズにも存在する、貧民街の住民がそれに当たる。
税を払わない者は民ではないと言う事から、見えざる者として扱われている。
その絶対的格差である身分制度が常識である、アルグリア大陸に於いて、ジズードの行為は許されざるものであった。
第三位階の商人であるジズードが、第一位階の最上位に位置するミクナーク・ベニアス王兄殿下に対して、不敬を行う事は不敬罪に当たり、当然罰せられなければならない。
そして、それは死罪以外には、あり得なかった。
【アレクサンドロス・アルバビロニア】
「そうか、ではミクナーク殿。其方に会わせたい者が丁度、帝城に来て居る。久方ぶりの再会の場を我が用意しよう!」
その言葉が発せられると同時に大広間の扉が開き、二人の高貴な身分であろう地精霊人と普精霊人が入場して来た。
入場する二人を知る者達は、この大商談会に参加して、最大の成果を得れたと感じていた。
その二人とはベニアス王国の国王ローグレス・ベニアス陛下と、王妃マルガレーテ・ベニアス妃殿下であり、百数十年ぶりの兄弟の邂逅だった。
その場に立ち会えた喜びに、商人達は驚嘆の声を揚げた。
【ローグレス・ベニアス】
「兄上! お久しぶりで御座います。お元気そうでなによりで御座います!」
【ナークス・アエニブス】
「ああ、其方も息災で何よりだ......」
詐欺師は己の魔法が、破られた事を悟った。
しかし、己の保身よりも、大事なものを、詐欺師は背負っていた。
何故か理由は、解らない。
帝都プロロースの裏社会の帝王である、キルギルス・ノールの一人娘が、不治の病で余命幾ばくも無い状況だと知った。
その時に、言いようのない想いが、詐欺師の心を覆った。
それ故、詐欺師は態と、キルギルス・ノールに己の正体を見せ、不治の病の少女を助けようとした。
此処でばれる訳にはいかない。
ノクレ・オーディスとの、約束は為った。
後は帝城から無事に退場するのみだった。
しかし、運命の悪戯か、運命と宿命を司る才能神ジェミニの思し召しなのか、己の身はどうなっても良いが、ノクレ・オーディスだけは無事に返さないと全てが無駄に終わる。
只、この状況では己一人が全ての罪を背負っても、ノクレ・オーディスにも類が及ぶ事は間違いない。
少女には時間が無かった。
何時亡くなってもおかしくない状況であると、キルギルス・ノールの繋ぎ役の者の表情が、物語っていた。
時間が無い。
少女を救う。
此処で、暴露れる訳にはいかない。
しかし、詐欺師の魔法とは、嘘がばれなければ超一流の詐欺師だが、暴露されれば三流以下に成り下がる、一種冗談のような魔法だった。
詐欺師は、全身から噴き出す汗を感じた。
詐欺師の意志では抑えきれない、何かによって、全てが崩れ落ちようとしていた。
詐欺師は何故、見も知らない少女の為に、命を賭けるのか?
詐欺師は何故、己の命よりも、少女の命を優先するのか?
それは詐欺師の過去に、答えはあった。
遠い日の記憶、......詐欺師は母を亡くしていた。
少女と同じ、不治の病だった。
遠い記憶の為か忘れたい記憶の為だろうか、詳細は朧気で思い出せない。
しかし、詐欺師は自分の助けられなかった母と少女を重ね合わしていた。
助けられなかった母、......後悔と自責の想い。
詐欺師は己の全てを賭けて、今回の大一番に臨んでいた。
【マルガレーテ・ベニアス】
「......」
その様子を見ていたマルガレーテは、違和感を覚えていた。
マルガレーテの知るミクナークとは、明らかに違った対応だった。
百数十年の歳月がミクナークを変えたのか?
そして、何よりミクナークにとって、弟はミクナークの全てだと知っているマルガレーテは、ある質問をするのだった。
【マルガレーテ・ベニアス】
「大帝陛下の御前で口を開く失礼をお許し下さい。ミクナーク様、貴方は何故ベニアス王国から去ったのですか? ご兄弟の再会の場で失礼ですが、お答え頂けないでしょうか?」
【ナークス・アエニブス】
「お久しぶりです、マルガレーテ妃殿下。私が何故ベニアスを去ったかですか、それは全てを弟に託したからですよ!」
その返答を聞いたマルガレーテは、このミクナークは偽物だと確信した。
何故ならミクナークとマルガレーテは遠い昔、恋人であり、許嫁同士だった。
そんな二人が何故別れて、マルガレーテがローグレスと結婚したのか、その答えを知るマルガレーテにとって、偽ミクナークの言葉は、己が偽物であると宣言したも同然であった。
【マルガレーテ・ベニアス】
「貴方は何者ですか? 貴方はミクナーク様ではありません! 何故ならミクナーク様がベニアスを去る理由を私が知っているからです! そう、ミクナーク様自身からお聞きしたのです! その事実を知らない貴方は、一体何者なのですか?」
マルガレーテ妃殿下の断罪が、詐欺師の意志を砕いた。
詐欺師は狼狽を隠せずに、崩れ去る世界で、ひたすら不治の病の少女を救う術を模索していた。
詐欺師は諦めない。
否、諦める訳にはいかなかった。
あの寝台で苦しむ少女の姿が、己の母と重なる。
曾て救えなかった母、あの時己が全てを懸けても救えなかった母。
しかし、少女は生きている。
今も病に苦しみ、己の心配よりも、己の父親を案じる少女の姿に、詐欺師は己の母の姿を見たのだった。
詐欺師は諦めない。
何としても、この危機を脱しなければならない。
そう決意した、諦めない詐欺師の頭に、声が響いた。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日
【帝都プロロース~ロシナンテ商会百貨店付近】
【キルギルス・ノール】
「野郎共、い......」
今まさに号令を掛けようとした大男の頭に、声が響いた。
【カルマ】
『待て! ......』
●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十六日
【帝都プロロース~ノール邸】
【ベスティア・ノール】
「パ、パパ......」
魘される少女の寝台の真上で、姿と気配を消して空中に浮かぶカルマが懊悩煩悶する!
その視線の先には、命の灯火が、小さく小さくなって、今まさに消えようとする、少女の姿が映っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アルグリア大陸には、賢者と呼ばれる知恵者が存在する。
その知恵者は、ある者は未来を見通し、ある者は天変地異を起こし、ある者は奇跡の御業で人々を助けたと、古文書にはある。
アルグリアの九賢者と総称される九人の賢者は、アルグリア大陸の何処かに隠棲しており、今もその知識と技術を伝承していた。
To be continued! ......
ご都合主義満載! 【詐欺師飛翔編】の締めの第33話までお付き合い頂ければ、幸いです!
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最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/21 改訂しました】




