第22話 廃神さん...傍観する(5)
毎月...3日...13日...23日......更新予定ですが、アルグリア戦記が累計八万字達成するまで3日から毎日更新しています。集英社WEB小説大賞に本作を応募する為です。
今回の投稿で八万字が達成したので、次回投稿から通常更新に戻ります。
作者には夢があります。“妄想ゲームの歴史を現実でゲーム化する”事です。コー○ー○○○ゲームスさんで、○○の野望のファンタジー版歴史シミュレーションゲームとしてゲーム化される中継点になる事を切に願って投稿します。
いつから本作が仮想小説だと誤解していた? 本作は作者の妄想ゲームの設定集を備忘録化したものです。勘違いさせたのならお許し下さい。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月十日
【アルバビロニア大帝国~帝都プロローズ】
【ノクレ・オーディス】
「次の方、お入り下さい......」
老年の地精霊人の商人が、次の現地従業員面接の相手を呼ぶ。
入って来たのは商人と同じ地精霊人の老年の紳士だったが、その姿を一目見て商人はある人物を思い出した。
ベニアス王国で、商人の成り上がりを助けてくれた人物に余りにも酷似していたからだ。
だが、紳士から受け取った紙を読み質問を繰り返す内に他人の空似だと判断した。
受け答えと履歴書から有能な人物だと、採用だと商人は判断するも、己の直感がこの紳士の完璧さが怪しいと警告を発していた。
商人は、己の直感を絶対視する。
何故なら、過去にその直感よりも人情を優先して、商人は全てを失ったからだった。
直感に従いこの紳士は落とそうと決めた商人に、待ったを掛けた者がいた。
その者は、別室から面接室を除いていた、空中に浮かぶ真っ裸の赤ちゃんだった。
【カルマ】
『ノクレ、この人は合格でお願いします。......』
商人は、主からの言葉に了解の意を念話で伝えると同時に、忠告もした。
この人物は怪しいと。
赤ちゃんは告げる。
この老紳士は詐欺師だと。
商人は驚き再度、忠告する。
その様な者を、内に入れるは危険ですと。
赤ちゃんは告げる。
この老紳士は、訳有りだと。
それから、赤ちゃんは商人に色々と指示を出した。
【ノクレ・オーディス】
「アエニブスさん、本音で話をしましょう......」
老紳士は惚ける。
何の事でしょうかと。
商人は柔和に語る。
あなたの経歴もあなたの有能さも完璧過ぎると。
私の直感が失礼だが、あなたは某かの嘘を付いていると言うんですよと。
すると、老紳士は目に見えて狼狽し出す。
滴々と汗を掻く様は、先程までと同じ人物とは思えない。
商人は、呆気にとられた。
先程までの胆力が嘘の様に無くなり、あっさりと白状した。
詐欺師の紳士は、左手を強く握りしめ、土下座しながら語る。
実は探している物があると。
この商会なら、その現物かその物の情報が得られると思い従業員面接に来たと。
商人は、詐欺師からその物を聞き答える。
ここには現在はありませんが、手に入れる事は可能ですと。
詐欺師は、土下座から瞠目した表情で、顔だけ上げて値段を尋ねた。
商人は答える。
あれは必要な者なら天井知らずの値段になりますが、お金ではお売り出来ない品物ですと。
詐欺師は問う。
では何を用意すれば売ってくれるのかと。
【ノクレ・オーディス】
「あなたの技術を対価に頂けるなら、ご用意しましょう!」
詐欺師は、訝しみ尋ねる。
己の技術とは詐術であり、それをあれの対価とすると? 詐欺師は自信なさそうに再度尋ねる。
私の様な嘘が暴露れるまでは超一流、でも嘘が暴露れたら三流以下になる詐欺師でいいのかと。
商人は柔和に答える。
あなたが良いんですと。
詐欺師は立ち上がり、ぎこちなくお辞儀をしながら答える。
【ナークス・アエニブス】
「お、お望みのままに......」
商人は、詐欺師に微笑みながら伝える。
あなたには、ある人物を騙して貰うと。
あなたの全力に期待すると。
詐欺師は最敬礼する。
嘘が暴露なければ、超一流の私にお任せ下さいと。
商人は何故か大いに納得して、詐欺師に告げる。
【ノクレ・オーディス】
「あなたに騙して貰いたい人物は、“アレキサンドロス・アルバビロニア”陛下......この国の大帝です」
FHSLG【アルグリア戦記】のプレイヤーの多くは、王道の職業である剣士・盗賊・回復師・魔術師系統のキャラクターで大陸制覇を目指す。
しかし、搦め手の奇道で大陸制覇を目指す、天の邪鬼を地で行くプレイヤーの三種の職業は、奇術師・詐欺師・呪術師である。
そして、奇抜な特化才能を駆使して戦争ゲームで覇権を握る醍醐味に打ち震えるのだ。
ナークス・アエニブスをプレイキャラクターに選択する人は、多くはない。
それは地精霊人の平均寿命は二百歳程なので、年齢も百七十三歳と高齢であり、プレイ年数の短さと所持才能の調和の悪さ故に敬遠される。
その才能群は、満枠の《詐術Ⅸ》《話術Ⅸ》《奇術Ⅶ》《催眠術Ⅸ》《交渉術Ⅴ》《鑑定術Ⅲ》《礼儀作法Ⅲ》《薬術Ⅲ》《錬金術Ⅲ》《長剣術Ⅲ》であり、高レベル帯の才能は対話系才能三枠・幻惑系才能二枠と見るべきものは多い、しかし低レベル帯の才能が所作系才能一枠・生産系才能三枠・戦闘系一枠と、総合バランスの歪さが目立つ。
だが、一部の好事家が所持称号の博打性に惹かれプレイをする。
そして、そのナークス・アエニブスが持つ称号《二枚舌》が、このキャラクターの長所を危ういものにする。
その効果は、嘘・虚言の効果(極大)【交渉時の成功率が八十パーセント上昇する】と言う超不正行為な効果である。
しかし、交渉失敗時に嘘・虚言が必ず露見する効果(極大)【失敗時に某かの罰則が付与される。罰則は交渉内容により変化する】がある為に、一般プレイヤーは二の足を踏むのである。
あるプレイヤーは、戦争の詰めで同盟国軍に敵国軍への奇襲を交渉した時、交渉成功確率は九十八パーセントだったが、交渉は二パーセントの失敗確率に軍配が上がった。
すると同盟国軍が裏切り、逆に自国軍を急襲され自国軍が敗退し、敵国軍と元同盟国軍の連合国軍により、自国が滅ぼされた事もあった。
ちなみに交渉成功率は、最大で九九.九パーセントで、必ず○.一パーセントの失敗率が存在する。
これは、運営製作会社の、物事に絶対は無い、物事には必ず一パーセント未満であっても可能性が存在すると言う拘りが、その数値に体現されていた。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年一月十五日
【ベニアス王国~王都ヘテナ~王の書斎】
【ローグレス・ベニアス】
「それは誠か? 何かの間違いではないのか?」
【フェルキウス・ウェンダル】
「残念ながら、申し訳ございません......」
王は宰相から告げられた内容を信じたくはなかったが、知性がそれは真実であると判断する。
ベニアス王国は、列強であるエルブリタニア帝国とフューダー大王国、強国であるバロック王国に囲まれながらも、外交を駆使して主権を守って来た。
しかし、現実は無情であり、この度の対処を誤れば、ベニアス王国は一瞬で隣国の強者に食い散らかされる。
王は宰相を書斎で待たせたのち、王妃を伴い戻って来て、宰相にある事を告げる。
その内容を理解した宰相が、涙声ながらに土下座をして、二人に詫びるのだった。
【ローグレス・ベニアス】
(兄上なら必ず......)
王は行方知れずの兄を思い浮かべて、曾てベニアスの明星と唱われた兄なら、この状況を座して待たず、己と同様に必ず動くと確信していた。
●アルグリア大陸暦千五百三十八年二月五日
【アルバビロニア大帝国~帝都プロローズ】
【ジズード・マラッセ】
「くっくくくくく、あっははははは......」
帝都プロローズの一画にある豪華な邸宅で高笑いする老獪な地精霊人の男が、報せを告げた者を下がらせ独り言ちた。
【ジズード・マラッセ】
「馬鹿な奴だ......」
●アルグリア大陸暦千五百三十八年三月八日
【アルバビロニア大帝国~帝都プロローズ】
【ベスティア・ノール】
「パパ、ごめんね。私......ママに会いたい......」
雨が激しく窓を打つ深夜、寝台に仰向けで眠る少女は涙を溢し、魘されながら寝言を呟いていた。
その言葉を部屋の片隅で聞いていた大男が、静かにその少女の涙を拭い、静かに嗚咽を漏らさない様に己の口に手を当て涙を流す。
そして、大男は少女を起こさない様に、静かに部屋を後にする。
大男が部屋を出て廊下を進むと、廊下の影から小男が進み出て大男に告げる。
例の物が手に入りましたと。
大男は静かに頷き、静かに呟く。
【キルギスタス・ノール】
「マリア、ベスを守ってくれ......」
【カルマ】
(......)
激しい雨の中、窓辺の空中に浮かぶカルマは沈黙する!
その視線の先には、病魔に侵され余命幾ばくもない少女の姿が映っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アルグリア大陸の東の端に位置するフューダー大王国、アスト領にある霊山『不死山』には禁忌が存在する。
一つ、霊山に冬期の入山はそれを禁ずべし。
一つ、霊山で騒ぎを起こすを禁ずべし。
一つ、霊山に入山し霊山のものを持ち出すを禁ずべし。
一つ、霊山に入山し麒麟と武競べするは唯一人で行うべし。
一つ、霊山では一切の殺生を禁ずべし。
この五ヶ条が霊山の禁忌であり、それを破ると神々の祟りがあると伝承にある。
この禁忌の禁を破り消滅した国家が、この霊山『不死山』が在るアスト領、旧アサン皇国である。
To be continued! ......
ご都合主義満載! 新章の締めは第33話!
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最後に、読者の皆様に感謝を、お読み頂き、ありがとうです!
【2020/07/20 改訂しました】




