最終話 魔王の代わりに勇者退治①勇者襲来
ボルン大洞穴500階層から一階への直通エレベーターの扉が開くと、エレベーターの出入口に大量の衛兵が待ち構えていた。
どうやらボルン城の衛兵が待ち構えていたらしい。
「...私の人生終了のお知らせだわ...」
リリアンが屈強な衛兵達を見て、自分を逮捕しに来たのと確信した。
リリアンの後ろで控えてるドルトンもビビる程の衛兵達の数は数百人規模だろうか。
「...まあリリアン君。ワシに任せたまえよ。」
リリアンの心配をよそにジーニアスが衛兵の真ん中から現れた!
『皆の者!ワシの弟子であるリリアンは密命でアビス及びボルン大洞穴の調査を行っていたのじゃ!
そして1年の長き時をもって無事に帰還したのじゃ!
皆の者!我が弟子リリアンを讃えよ!
そして、従者のオーク⋯ドルトンを讃えるのだ!!』
それだけを聞いた衛兵達はジーニアス王の名前を連呼し始めた。
それを見たリリアンは...
「こうして見ると教官ってやっぱり王様なのねぇ。」と、しみじみ思った。
リリアン的にはお祭り騒ぎは好きではないのでこの場から離脱したい所なのだが、ジーニアス共々完全に衛兵達に取り囲まれており離脱は不可能だ。
「...リリアン様ぁ、オラは処刑さらちまうだか?」
「あんた、衛兵達にビビって話を聞いて無かったでしょ⋯
大丈夫よ、私と一緒で存在を許されたわ。」
その言葉を聞いてドルトンは喜んだ。
そんなドルトンは置いて、リリアンは国王ジーニアスの隣に立って手を上げた。
衛兵達の歓声がこだまする。
リリアンは国王ジーニアスの隣に立った時、一つの疑問を口にした。
「⋯ねぇ、教官。
私の指名手配からアビスのからボルン大洞穴まで全て仕組んだでしょ?」
「さて?なんの事じゃろなぁ。」
ジーニアスが横を向いてぴゅ~ぴゅ~口笛を鳴らした。
『どんだけ!私が苦労したと思ってんのよ!!!』
リリアンはジーニアスの首をグイグイ絞めた!
それを観た衛兵達が止めに入らないのは、
ジーニアスは普段からお茶目なイタズラで側近の大臣から首絞めを喰らっているのをしょっちゅう目撃しているからである。
なので「ああ...あの王様が、またやらかしたんだ⋯」くらいにしか思っていない。
「...それはそれとしてじゃな。城へ到着したらろくに話しも出来ないので、今のうちにリリアン君へ伝えておくぞい。」
ジーニアスは勿体振った振る舞いでコホンと軽く咳をしてリリアンに向けて要件を伝える。
「リリアン君。君にこのボルン大洞穴を任せる。」
一瞬ジーニアスの言ってる意味が解らなかったリリアンだが、徐々にジーニアスがマジで言ってる事が判った。
『はい?今何と?』
「おめでとう!リリアン君がボルン大洞穴三代目魔王じゃの。」
『勇者を目指す私が何で三代目魔王なのよ!』
「別に勇者になりたければなれば良かろ?」
『どこの世界に魔王を倒すぜ!と言いながら勇者をやってる魔王が居るってのよ?馬鹿?馬鹿なの?』
「ほっほっほ。究極のマッチポンプじゃのお。
おお、そうじゃ!冒険者パーティーを導く仲間の勇者が最下層で正体を現して襲って来る!ゲーム的に燃える展開ではないか!」
『それは単なるグズ人間じゃないですか!』
「だからリリアン君、苦しいから首を絞めるでない。
ほら、だってエルダーリッチ君やバンパイアロード君もリリアン君を認めてたぞい。」
「...教官...もしかして私を魔王にする事も最初から企んでたんじゃないでしょうね?」
「ありゃばれた?だから一番最初に城で忠告したじゃろ?」
確かにジーニアスはリリアンの旅立ちを少し渋っていたのは事実である。
だが選ばれた人間しか触れないブルークリスタルロッドを持ち出した時点でジーニアスはリリアン魔王化計画が始まったのだ。
そして、計画第1弾がリリアンを指名手配にしてアビス送り計画と言う訳である。
一連の漫才みたいなやり取りを見ているドルトンは満面の笑みを隠し切れていない。
主人と仰いだ人物が魔王となるなら、アビスでは大出世以外何物でもないのだから。
『こら、そこの豚!笑うな!』
「はっ、これはとんだ失礼を!」
それからボルン城に帰った一行はジーニアスは実務に戻り、リリアンは魔法学校にて未習得の単位の授業を受ける日々。
時々リリアンに「魔王様出陣じゃ!」と出動要請が入るが、一応平和な日々に戻っている。
ドルトンは城でアルバイトの用務員だ。
そんなこんなで日にちが過ぎてリリアンが単位を全て修め卒業間近になった明くる日、ボルン城の謁見の間に一人の人物が国王を訪ねて来た。
その人物とは2年以上前に行方不明とされていた勇者であった。
ボルン大洞穴の最下層で魔王人形と対決したのを録画で見て以来は勇者がどこで何をしていたかは謎である。
ちなみに謁見の間には国王や大臣の他にはリリアンもいた。
一応リリアンはジーニアスの実験の手伝いで、たまたまこの場にいたのは偶然である。
そして本当に偶然ではあるのだが、この場にリリアンが居た事でボルン王国の最大の危機を回避する鍵になるのだ。
何故ならこの場の人間の中で勇者と直接会話をした事があるのはリリアンだけなのだからだ。
「...よお、国王様。ボルン大洞穴の攻略を終わったぜ。」
勇者が魔剣をブラブラさせながらジーニアス国王に報告をする。
何気に勇者の態度が悪い。
「(まだ存在してたのか、何本あるのよ!)」
現在、イヤホンとマイクで国王ジーニアスと直接会話中だ。
魔剣モラルイーター...人の理性を食い物にしチカラに変える呪われた魔剣である。
「(うむ、なので彼の剣と同種の剣を装備したリリアン君の意見を聞きたいのじゃ。)」
「(...そうですねぇ、私の場合は他の呪いと重複してたんでモラルイーター単体の効果って良く解らないんですよ。)」
モラルイーターの効果は、例えばやってはいけない事の心の枷を外すと言うものである。
例えば欲しい物があれば盗みや殺しも辞さない感じだ。
なのでモラルイーターは基本的に性格が変わるとかは無い。
リリアンのバーサーカーモードは冷徹の鎧の効果である。
勇者の凱旋は滞りなく進み そろそろ報酬の発表に移ろうかとした時、勇者はジーニアスが喋ろうとする瞬間にジーニアスの言葉を制し、謁見の間に響く様な声で話した。
『俺様は報酬は要らねぇ!だがな魔王ジーニアス!俺様と戦え!そして、そこの女もよこせ!』
勇者がリリアンを指した。
勇者の言葉で謁見の間が一瞬の静まり、その後ざわめきが起こった。
「勇者殿は何を言っておられるのだ?」
「国王が魔王?あり得ぬ。」
大臣達は勇者が乱心したと思っている。
だが内心一番焦りを感じているのはジーニアスである。
(こやつ...大洞穴の仕組みに気付いてるのか?)
たしか勇者はボルン大洞穴の魔王人形と戦った後で部屋から出ていったはずである。
「...ふん、そうかい。オトボケかますならそれで良いや。俺様は退散するとするぜ。
ああ...俺様はボルン大洞穴の一階の地上町に居るから逃げも隠れもしないぜ?」
勇者はそう言いながら高笑いをしてからボルン城から退場した。
勇者が謁見の間から居なくなると大臣達はジーニアスに詰め寄る。
『国王よ!あの失礼なやつを野放しにして良かったのですか?』
大臣達は国王=魔王などと言うのは特に信じていない様子なのだが、ジーニアスとしては内心穏やかでは無い。
「(教官、大臣に何か言ってあげなよ。彼ら不安そうだよ~。)」
リリアンがのほほんとイヤホンマイクで注意した。
「あ~多分大丈夫、地上人は暴れるモンスターは嫌うけど、大人しくしてれば亜人扱い程度で済むから。」
実際、冒険者にはホビットやエルフ以外にカルラーム大陸では他大陸では敵以外何者でもないオークやネクロマンサーに召喚されたスケルトンの冒険者も存在したりするので、他大陸からは暗黒大陸だの悪魔の大陸とか言われるのだ。
ジーニアスと共に衛兵達に導かれひときわ豪華な馬車に案内されると馬車はそのまま出発した。
客車にはジーニアスとリリアンとドルトンの三人だけになったので、ようやく落ち着いて話しが出来そうだ。
「...あのさあ...もしかして私の指名手配って簡単に解除出来たんですか?」
「ほっほっ、何の事だかさっぱり解らんのぉ。」
『とぼけるな糞ジジイ!このまま黄泉道へ旅立ちたいのか?』
「これ!リリアン君、苦しいから首を絞めるのは止めなさい。何気にバーサーカーが出とるぞい!」
「うむ、なので彼の剣と同種の剣を装備したリリアン君の意見を聞きたいのじゃ。」
「...そうですねぇ、私の場合は他の呪いと重複してたんでモラルイーター単体の効果って良く解らないんですよ。」
モラルイーターの効果は、例えばやってはいけない事の心の枷を外すと言うものである。
例えば欲しい物があれば盗みや殺しも辞さない感じだ。
なのでモラルイーターは基本的に性格が変わるとかは無い。
リリアンのバーサーカーモードは冷徹の鎧の効果である。
勇者の凱旋は滞りなく進み そろそろ報酬の発表に移ろうかとした時、勇者はジーニアスが喋ろうとする瞬間にジーニアスの言葉を制し、謁見の間に響く様な声で話した。
『俺様は報酬は要らねぇ!だがな(魔王ジーニアス)!俺様と戦え!』
その言葉で謁見の間が一瞬の静まり、その後ざわめきが起こった。
「勇者殿は何を言っておられるのだ?」
「国王が魔王?あり得ぬ。」
大臣達は勇者が乱心したと思っている。
だが内心一番焦りを感じているのはジーニアスである。
(こやつ...大洞穴の仕組みに気付いてるのか?)
たしか勇者はボルン大洞穴の魔王人形と戦った後で部屋から出ていったはずである。
「...ふん、そうかい。オトボケかますならそれで良いや。俺様は退散するとするぜ。
ああ...俺様はボルン大洞穴の一階の地上町に居るから逃げも隠れもしないぜ?」
勇者はそう言いながら高笑いをしてからボルン城から退場した。
勇者が謁見の間から居なくなると大臣達はジーニアスに詰め寄る。
『国王よ!あの失礼なやつを野放しにして良かったのですか?』
大臣達は国王=魔王などと言うのは特に信じていない様子なのだが、ジーニアスとしては内心穏やかでは無かった。




