第15話 けだものフレンズ ②
妙に発展した町を物見雄山しつつ、何よりヘンテコなトラブル回避したいリリアン達はバーサーカー用呪われた装備の情報を知ってそうな人物は誰かと考えた。
普通に考えるならば、町の責任者→何か頼まれる→トラブル→何とか解決→というテンプレートを避けたい所ではあるものの完全にノープラン。
歩き続けていると、舗装道路に面した歩行者道路に怪しげな露店商をマリーは物珍しげに物色していた。
「あらあら、リリアン!これは何とかブーツとかじゃないですか?」
「あはは、んな簡単に見つかったら苦労しないっつ~の...ってマジにあるし...」
ウイングブーツが普通に売っていた。
さらに心眼の兜も売っているし、冷徹の鎧やモラルブレイカーまである。
『いままでの苦労は何なのよ!!!!』
「まあまあリリアン君、世の中はそんなもんじゃよ。」
「しかも、そんなに高くないし...」
とにもかくにもリリアンは地上に戻る為の装備を全種コンプリートしたのだが...
問題はモンスターとして地上に戻る為の魔方陣がどこにあるかである。
ドルトンが召還された場所はリリアンが書き換えたので機能しない。
「ジーニアス教官!地上に召還される魔方陣の場所を知ってます?」
「それは問題無い、ワシはその場所は良く知っておる。それはボルン大洞穴じゃ。目的の一つはボルン大洞穴の点検じゃからな!」
得意げに語るジーニアスだが、実体は城の執務に疲れたのでサボって逃げただけである。
呪われた装備アイテムが出揃って安心しているリリアン達なのだが、実はリリアン達を見張ってる者が居るのを気付いていなかった。
早速装備を購入したで、丸太小屋にしまおうと小屋の入り口を開けた時⋯
『やっぱりあんた達じゃないのよ!!』
リリアンが何事かと周囲を見回したら、リリアンの背後の塀の上に10歳前後の少女が立っていた。
『同行者が変わってるし、変な装備だったから気付かなかったわよ!!』
少女は金髪のブロンドで巻き毛、茶色のワンピースのフリルスカートが風になびく。
「ミーシャ!無事だったの?あとミーシャって長い名前なのね」
ミーシャはフフンと鼻で笑いながらフルネームを言った。
「私の名前はミーシャ・ルン・シャルロッテよ。
良い名前でしょ?」
「ところで、何故猫人のリーダーとかやってるの?」
「あの紫色の洞窟から飛ばされたのがこの町だったのよ!」
どうやらミーシャもリリアン同様に自分から望まずにアビスへと来たらしい。
『ああ!もうなんなのよこの世界は!変な魔法陣を踏んだと思ったらおかしな場所に飛ばされるし!獣臭いし!仲間がいないし!超最悪!』
ミーシャが不満をぶちまけまくっている。
「それに関しては同感だわ⋯」
現在リリアン達が居るの場所はホテルの食堂であり、四人の他にミーシャが加わった。
「だーかーらー!私は獣人じゃなくて妖怪なの!昔は単なる猫だったけど20年生きたら人間に化けれるようになったの!」
「獣人は子供の頃は動物形で成長したら人型になる種族もいるって聞いた事あるよ。」
「はぁ...もうそれでいいわよ...で?次は名前?猫だった時に私が人間の飼い主が三人いて、一人目がミーシャで二人目がルンで三人目がシャルロッテだからよ...」
『ええ!こんな可愛い猫人さんを飼うって、なんてひどい悪人なのかしら!許せませんわ!』
マリーが怒っている。
「はぁ...なにかしら、この価値観の違いは。タケルのご飯が懐かしいわ...」
ミーシャは、このアビスに来てから心底苦労した挙げ句に何故か猫人達から英雄扱いされて現在に至っている。
『お頭!ここに居たんですかい!?ワーウルフの連中が襲って来ましたぜ!』
ホテルの食堂へ茶虎色の毛色の男が乱入してきた。
「そう、わかった。今から行くわよ。
それはそうとあんた達も来てくれないかしら?
その逆召還とやらに凄く興味あるのよ。もしかしたら元の世界に帰るヒントかもなのよ。」
ミーシャはリリアン達も連れて行こうとした。
「何かトラブルっぽいのが嫌なんだけど...」
「大丈夫よ、どうせ草レースの申し込みなんだから怪我しないわよ。」
ミーシャはリリアン達を連れて茶虎色の男が言ってた現場に向かって行った。
ミーシャの案内で町外れまで来ると、大量の犬人と猫人が一触即発状態であった。
「...どう見てもトラブルにしか見えんのぉ...」
ジーニアスの独り言に他のメンバーも激しく同意した。
町外れには八の字状にアスファルトが整備されており、道の外周には土管や水溜まりや砂場になっていた。
どうやらミーシャの言っていた草レース場とはここらしい。
ミーシャが筋骨ムキムキなワーウルフに向かって歩み寄る。
ミーシャは10歳前後のドレスを着た少女にしか見えないので、ワーウルフの前に立つとミーシャの小ささが更に目立つ。
ミーシャの部下らしき猫人の中にはサーベルタイガーや色気ムンムンな雌豹人も多いので、
そちらの方がワーウルフにひけをとらない。
しかしミーシャが現れたとたんに猫人達が陶酔した目でミーシャを英雄と呼んでいた。
「ミーシャってマジで尊敬されてんのね...」
リリアンの呟きを聞いた(聴力が凄い)サーベルタイガーがリリアンに注意した。
「馬鹿!お頭にそんな事言うと殺されるぞ!あの人の数々の伝説によると、睨まれただけで魂を奪うとか、怒らせた人間が一晩で白髪になったとか、7代祟られた一家が全員自殺したなど、とにかく恐ろしいんだぜ!」
「何か真夏の怪談みたいで胡散臭いんですけど」
ともかくワーウルフとミーシャに視点を戻そう。
『てめぇら猫人が意気がってんじゃねぇぜ!今日こそ決着つけてやるぜ!』
「あのねぇ、別にわたしは喧嘩売ってるんじゃないのよ。だいたい子猫を苛めてたあんたが悪いんでしょうが。」
ちなみに、その子猫とは肉体改造で筋骨ムキムキなマッチョマンなサーベルタイガーだ。
つまり先ほどリリアンに注意した猫人の副官である。
『はぁ?この町は昔から力が全ての無謀地帯なんだよ!
てめぇがこの町に現れてから変な技術で町が狂って来たんだぜ!
...だが...まぁ...このバイクと言う乗り物は気に入ったがな。』
『何よ!この町が不便過ぎるから、鍛冶屋とか工場にこんな感じの無いの?って聞き回ったらこうなっちゃったんだから仕方ないじゃない!』
『お前達!この町の流儀を忘れてないだか!?』
犬人と猫人の言い争いを見かねて一人の男が表彰台らしき壇上からスピーカーで叫んだ。
皆が何事かと壇上へ振り向くと、タキシードを着た太った男が胸を張りダンディズム溢れたポーズを決めて、ビシッと群衆に向かって指を刺した。
いわゆるジョジョ立ちと呼ばれるポーズである。
「...てかドルトンじゃん...」
リリアンは少し呆れている。
何故なら(どう?オラカッコいいべさ!)とリリアンに向かってウインクしたからだ。
『この勝負はオーク族のドルトンが見届け人となるだべ!』
ドルトンの宣言でレース場が盛り上がった。
「すげぇぜ!オーク族が立ち会いなんて久しぶりだぜ!」
「まじか?!他の連中に知らせて来るぜ!」
騒ぎが一段落した頃に、ドルトンがリリアン達の場所へと帰って来た。
リリアンはどういう事かドルトンへ訳を聞いた。
「元々オーク族は足が遅いから試合の審判をしてただよ。」
本来はドルトンの父親のドルクスが獣人町のまとめ役なのだが、人間の嫁を貰ったので引っ越したエピソードは既に聞いている。
「何よ!私はこんなの聞いてないんだけど。誰か事情を教えてよ!これだから野蛮人は嫌なのよ!何よあの偉そうな豚は!」
ミーシャがプリプリ怒っている。
「早い話ドルトンがレースの主催者になるんだって、私も良く事情は解らないんだけどさ。」
リリアンがミーシャに簡潔に話した。
実はオーク族はイベント好きで仕切り屋な性格をしており、典型的な例が人間の町で毎日開催されている魔界一武道会なのだ。
つまり、草レースの様な小競り合いではなく本格的な戦争がレースという形で行われるのであった。




