第13話 ボルン大雑技団結成
常に夕暮れの様に赤い空の世界…
地下に封印されし大地《古代カルラーム》に住んでいる人々は一様に《魔界アビス》と呼んでいる。
確かに地獄の様な風景や怪物などが跳梁跋扈しているのでダークなイメージが強いが、《魔力が溢れる世界》と言う意味での《魔界》が本来の意味なのだ。
世界中には魔法使いが数多く存在するが、魔法使いのチカラの源流(黒魔法)は、この魔界が無いと成り立たないと言われている。
そして、魔界にも地上と同様に町や村が存在するのだが、
その魔界に存在する町の一つである《斜陽の町》の中央広場では、何やら珍妙な集団が騒いでいて町の住民達な何事かとその珍妙な集団を遠巻きに見ていた。
『イェーイ!私は美しい♪』
ジャカジャカジャカジャカジャカジャカじゃん!!!!
『しゃかしゃかヘイ!』
吟遊詩人と踊り子らしき女の子が楽器を持って騒いでいたのだ。
吟遊詩人の見た目は30歳前後の男で、踊り子は白いふわふわドレスのスカートが跳ねる様に踊るので《大きな胸がプルンプルン!》さらにスカートが際どい所まで短い。
なので、ギャラリーの大半が男と言う状況だ。
吟遊詩人と踊り子の近くでは、音楽に合わせて槍の演舞を行うオーク。
実に珍妙な一団である。
勿論正体はリリアン一行なのだが、魔界一武闘会で謎の吟遊詩人ミスターJ…と言うかリリアンの師匠であり国王のジーニアスの提案で旅芸人となりお金を稼いでいた。
ちなみにリリアンはジェスター(芸をしないピエロ)の格好でおひねり回収係になっており、踊りに加わっていない。
何故一行が《斜陽の町》に居るのかと言うと…
地上に戻る為のアイテム《冷徹の鎧》がこの町に存在するからである。
当然だが冷徹の鎧も呪われた装備だ、装備した人間は感情を抑制し物事を冷静にこなす。
一見別に悪くない効果かと思うだろうが、目的の為なら肉親だろうと容赦無く冷静に排除してしまうのだ。
殺し屋さん御用達である。
この斜陽の町は、とにかく暗い!
いや、元々アビスは薄暗いが、住民が根暗過ぎて冷徹の鎧の在りかの話題すらきり出せない。
ならば、住民の口が軽くなるならと臨時で結成したのが【ボルン大雑技団】なのだ。
ちなみに武闘会で手に入れたちょっぴり呪われた剣は《モラルイーター》と言う名前で、冷徹の鎧と逆に感情的になる特性を持つ。
一通り満足そうに演奏を終えたジーニアス教官(ここではミスターJ)はやり遂げた男の顔でリリアンに親指を立てグッジョブと合図する…
王様であるジーニアスがお金儲けもどうかと思うが、リリアン達に会う為に城からコッソリ抜けてに来たので無一文との話しだ。
それに、リリアンの持ってるアイテムを少し売ってしまえば相当なお金になるので旅芸人でのお金儲けは...と思ったリリアンだが。
『せっかく吟遊詩人に変装したんじゃから、営業活動とやらをしてみたいのぉ...』
とジーニアスの提案が事の発端だ。
「いい汗かいたズラ!リリアン様もやると良かっただよ!」
オークのドルトンも満足げだ。
「...いやぁ私はそういう派手な晒し者的なイベントは苦手なのよ。」
とか言いながらも、おひねり集計の銭勘定はきっちり行うリリアン。
やはり実家がカルラーム大陸では大手の道具屋ローズ亭の娘だけに金銭面はきっちりしているのだ。
「ところで教官、この町に冷徹の鎧があるって本当?」
銭勘定が終わったリリアンは収益をノートに書きながら、ジーニアスに聞いた。リリアンは学生時代の名残でジーニアスを教官と呼ぶ。
「それなんじゃが、遥か昔にワシが冒険者してた頃に入手したんじゃが、そんな呪われた鎧なんてワシも仲間も装備する度胸の持ち主なんて居なかったもんだから、この町で売りはらったんじゃよ。ちなみに売値は1Gじゃったよ。」
『安っ!』
リリアンが突っ込んだ。
余談だが、呪われた装備は某ドラゴ○クエストよろしく店売り時は65535Gなのに買い取りが1Gとなる。
「ねぇリリアン?変な人達がこちらに近づいて来ましたよ。」
際どい踊り子衣装のままのマリーが物々しい鎧を着た男達がリリアン達の居る中央広場へやって来るのに気付いた。
その集団を見るやジーニアスがリリアンの背後へコソコソ隠れた。
(ヤバい!あいつらボルン城直属近衛兵じゃ!)
(まぢで!?私もヤバいじゃん!)
ボルン近衛兵隊はいわゆる警察であり、ジーニアスは正体がバレてもせいぜい強制送還だが、リリアンの場合は国宝窃盗容疑のお尋ね者であるからして非常にピンチである。
オークのドルトンもフル装備の人間は強いので苦手だ。
「あらあら、皆さんどうしましたか?」
際どい踊り子衣装のマリーが近衛兵隊達に聞いた。
「驚かせて申し訳ない。皆さんは営業許可証をお持ちですか?」
近衛兵隊の男達は口調こそ真面目だが、目線はマリーの大きな胸があらわになった際どい衣装の太ももに釘付けであるのをリリアンは見逃さない。
「(まったく男ってばこれだから嫌なのよねぇ)」
「(リリアン様!オラは紳士だからリリアン様しか見ないだよ!)」
小声で愚痴るリリアンに対して何故かドルトンまで小声だ!
「(豚うっさい!私はあんたに視姦されるとムシズが走るのよ!)」
「(そんなぁ!触らない代わりの視姦だけがオラの楽しみなのに!)」
もはや会話がグダクダである。
「ごめんなさい、許可証の事を知らなかったです。」
しょんぼりするマリーを見た近衛兵があわててフォローする。
『だだだ大丈夫です!この辺りの商店街の元締めに会いに行けば良いです!』
何故かビシッとけいれいする近衛兵。
美少女にはカッコいい所を見せたい男のサガというものだ。
だから噛んでしまい変な語尾になっても致し方無しだ。
「むぅ、やはり冒険者パーティーに一人でも美少女が居ると話しが早いのぉ」
ジーニアスがしみじみ語る。
そんなジーニアスの呟きに対して、リリアンの『美少女じゃなくて悪かったわね』発言とドルトンの『リリアン様が一番の美少女ダァ!』がセットに付いてくるのは言うまでもない。
幸いな事にジーニアスはマスクで30才前後の吟遊詩人に見えるし、リリアンもピエロ姿なので正体がバレていない様子。
「これは好都合じゃの。なんせ大昔に売った呪われ装備なんぞ店に残ってる訳がないからのぉ。」
そもそも、この町に来た時に訪れた際にジーニアスが売った防具店自体が存在していなかった、もう何十年前の事なので仕方ないっちゃ仕方ない。
近衛兵があそこの建物へ行って下さいと指した先には市場で一番大きな屋敷が建っていた。
『ありがとうございます!』
マリーが近衛兵隊にお辞儀をする。
その時にマリーの胸が揺れる→男達のいやらしい目線→リリアンの愚痴→ドルトンのとんちんかんなフォローはダチョウ倶楽部ばりのお約束になりつつある。




