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メルダリン  作者: もっちー
はじめての冒険者ギルド、いきなりの休学申請
12/12

休学届けとお茶会(カフカのみ)

トランクを胸に抱くレイナスを抱え、カフカは事も無げに屋根を駆ける。

雨が屋根に溜まり、建材が腐食するのを防ぐために斜めに設けられた屋根ではあるが、彼女は全く足を取られる様子もなく、まるで平地を走るかのように軽やかに移動していた。


後でからかうために、レイナスの身体に自分の胸を押し当てておこうかとも思ったが、そういえば今は革鎧を着ているしのだしと諦めた。

ちなみに彼は、もう諦めたのかそれとも高所が怖いのか、あるいは屈辱に耐えているのか、カフカの腕の中ですっかり大人しくなって目を瞑っている。


無論、プルプルと震えてはいるが。



「さ、着いたわ。もう目の前だしそろそろ下に降りましょうか」



カフカの目にはぐんぐんと迫るアルヴィス学院の校舎。

純白の王城とも比較できるほど立派な城が、そのまま校舎として使われているアルヴィス学院だが、そもそもこの城は何代か前まで本当に王族が住んでいたとのこと。


だが、過去に他国との戦争が起きた時にかなり損壊してしまったため、修繕した城をそのまま校舎として再利用しているのだとか。

なので、現在王族が暮らしている城はわりと新しい建造物ということになる。



「…男として情けないです。女性に抱き上げられるなんて…たくさんの人たちに見られました。そのうち絶対お詫びしてもらいますからね!」


「誰もあなたが男の子だなんて気がついてないから大丈夫よ、きっと」



学院も目前のため、足を止めたカフカは抱き上げていたレイナスをようやく解放した。

それまで借りてきた猫のように大人しかったレイナスだったが、解放された途端に顔を真っ赤にして暴れ出す。


そして怒るレイナスに更なる追撃を行うカフカだが、悲しいかな彼女の言葉は間違っていなかったりする。



「それにお詫び、ねぇ。何がいいかしら?仕返しに私をお姫様だっこしてみる?」



不敵な笑みを浮かべて、はいと両手を広げてレイナスを迎えようとする。



「絶対楽しんでるだけでしょう?それに体格差を考えて下さいよ、第一カフカさんは重たくて僕には無理ですから」


「あら…傷ついたわ。女性に体重のことを言うのは良くないわよ?傷ついちゃったから、今日の夜の訓練がついついいつもよりキツくなっても仕方ないわよね」


「…すいません、僕が悪かったです。撤回しますので許して下さい、それだけは嫌です」


「お断りよ」



からかわれて地団駄を踏んでいた時とは打って変わり、今度は青冷めていくレイナスは放っておき、カフカは何の躊躇もなく建物の屋根から、人通りの少ない路地裏へと飛び降りた。

目測でだいたい10メートル以上はある高さであり、これは普通ならば良くて骨折、最悪命を落とす危険性もある高さではあるが、彼女は音も立てずに軽やかに着地する。



「え、ちょっと待って下さい!?」



焦るレイナスが屋根から身を乗り出すも、飛び降りるには相当な恐怖を感じる高さである。

下ではトランクを地面に置いたカフカが、ほら早くーと声を出しているが、いくらなんでも躊躇なく飛び降りるほうがどうかしていると思う。


…夜の訓練が三倍キツくなるわよー、と聞こえた気がした。



「あー、もう…《身体強化(フィジカルブースト)》!」



怖い、正直とても怖いが、実のところ同じような高さからの飛び降りと着地の訓練は何度かこなしているのだ。

今回は、それまでのよりも少しだけ高くて、前方に飛び過ぎれば隣の建物に激突するくらいに狭い路地裏が着地点なだけ。


仕方がない、訓練三倍も嫌だし行くしかない。

だが、彼女と違って自分はこのままでは普通に大怪我をしてしまうので、レイナスは自分の中に流れる魔力に意識を集中し、一つ魔法を使用した。


身体強化(フィジカルブースト)》、あくまで日常生活における延長線程度ではあるが、身体的機能のあらゆる面を強化する魔法である。

効果は多岐に渡り、筋力強化に骨格硬化、耐久力強化に五感強化、それに血行促進や代謝強化による美肌効果なんていう効果もあって、汎用性に富んでいるのが特徴。


そして申し訳程度ではあるが、不安や恐怖心、緊張などの精神弱体も軽減してくれるため、恐怖心が和らいだレイナスはトランクを掴んであっさりと屋根から飛び降りる。

ぐんぐんと迫る地面、ズダンと大きな音を立てて着地したが、そのせいで全身に衝撃が走り、足先から登頂部までジーンと痺れが広がってしまった。



「し、痺れが…」


「前よりも飛び降りるのに戸惑わなくなってきたけど、まだ衝撃の殺し方は下手ね。もう少しこう…フワリと、柔らかくというか身体全体で衝撃を分散させる感じで着地してみなさい?」


「そ、そう言われましても」



全身を襲う鈍い痺れに悶えるレイナスをよそに、カフカは高所からの着地について解説を始めたが、彼女の説明は抽象的すぎてよくわからなかった。

じゃあ身体で覚えなさいと、以前の訓練で崖から容赦なく突き落とされたのを思い出して冷や汗をかく。


そもそも、身体機能を強化させて飛び降りたレイナスが痺れに苦しんでいるというのに、そういう小細工は一切せずに飛び降りたカフカがノーダメージというのははっきり言って異常。

先ほどレイナスを抱えて跳躍し、余裕で屋根に飛び乗ったのもそうだが、 彼女の身体能力は人間のそれを遥かに超えてしまっているのだ。



「相変わらず常識外れな身体能力してますよね」


「そうかしら?あのぐらいの高さから飛び降りるのは、この身体になる前…向こうにいた時からできていたけど。屋根に飛び移れるほどジャンプするのは、いくらなんでも無理だったけどね。あなたぐらいの高さの障害物を、なんとか飛び越えるので精一杯だったわ」


「わりと元から常識外れってことじゃないですか、それ」


「何よ、人のことをまるで化け物みたいに。本当に訓練キツくなっても知らないわよ?」


「化け物なんて微塵も思っていないので、それだけは本当に許して下さいお願いします。ギルドに登録した次の日から寝込むのはさすがに嫌です」



つまり、カフカの素の身体能力>レイナスの身体強化魔法込みの身体能力≧前の世界でのカフカの身体的能力ということである。

最も、彼女がこういう身体になった明確な理由もあるし、そのおかげで得られた利点もあれば、むしろそのせいで得てしまった大きな欠点もあるのだが。


だが、何はともあれ目的には無事着いた。

レイナスは足を屈伸して残っていた痺れを取り、狭い路地裏から広い歩道に出ると、自然な動作で彼の背中をカフカが追う。


アルヴィス魔法学院。

二人がいるのは、最高学府の巨大な正門である。


―――――

―――

――


「休筆中」

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