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第66話 紅と白の配信者

 白峰リアの仕事用メールボックスには、毎日いくつもの案件が届く。


 化粧品。

 エナジードリンク。

 探索者向けプロテイン。

 ダンジョン保険。

 配信用ドローンの新型機。

 探索者事務所の合同イベント。


 以前なら、マネージャーが一度ふるいにかけて、その中からリアのイメージに合うものだけが回ってきていた。


 でも今は違う。


 事務所との契約は残っているが、リアの立場は以前ほど安定していない。


 配信禁止区域事件。

 謝罪配信。

 S級ダンジョンでの願望幻影。

 そして、配信で何を見せるべきか、見せないべきかを考えるようになったこと。


 それら全部が、白峰リアという配信者の価値を変えた。


 良い方向にも。

 悪い方向にも。


 だから最近は、リア自身が案件メールを見るようにしていた。


 嫌なものは断る。

 怪しいものは調べる。

 受けるとしても、自分の言葉で説明できるものだけにする。


 そのつもりだった。


 なのに、そのメールを見た瞬間、リアは指を止めた。


 件名は、やけに軽かった。


【案件相談】あなたの能力は何色? 八色能力診断アプリPRのご依頼


「……何これ」


 リアは思わず声に出した。


 自室の配信用デスク。


 モニターには、案件メールの本文が表示されている。


 差出人は、聞いたことのないベンチャー企業だった。


 探索者向けセルフ分析アプリを開発しているという。


 アプリ名は、プリズム・チェック。


 説明にはこうあった。


 探索者のスキル傾向、性格、戦闘スタイル、配信適性、チーム内役割を診断し、八つの色に分類します。


 紅。

 蒼。

 翠。

 金。

 黒。

 白。

 紫。

 透明。


 リアは、その文字列を何度も見た。


 八つの色。


 昨日、黒瀬透真から短く共有された言葉が頭に浮かぶ。


『相原さんの件で、新しい表示が出ました。色相:翠』


 詳しい説明はまだ受けていない。


 透真も、まだ分かっていないようだった。


 ただ、彼の鑑定に新しい表示が出た。


 色相。


 翠。


 その情報は、まだ身内のごく一部でしか共有されていないはずだった。


 少なくとも、管理局が公式に発表したという話は聞いていない。


 それなのに、民間企業が「八色能力診断アプリ」を出そうとしている。


 軽すぎる。


 早すぎる。


 そして、嫌な感じがした。


 リアはメール本文を読み進める。


『白峰リア様は、視聴者との共鳴性が高く、特に白系統の影響力をお持ちと推測しております』


「白系統……?」


 さらに下。


『一方で、危機状況における感情爆発と瞬発的判断力から、紅系統との混合傾向も想定されます』


 リアの指が止まる。


 白。


 紅。


 それが何を意味するのかは分からない。


 でも、自分のことをかなり具体的に見られている気がした。


 視聴者との共鳴性。


 危機状況における感情爆発。


 瞬発的判断力。


 褒め言葉のようにも見える。


 でも、分析されている感じが気持ち悪い。


 リアは椅子にもたれた。


「私、まだ何も診断してないんだけど」


 なのに、向こうはもうリアを分類している。


 白。

 紅。

 混合傾向。


 そんな言葉を、軽いPR文の中に混ぜている。


 リアは一度、返信画面を開いた。


 断る。


 それが一番簡単だ。


 以前のリアなら、怪しい案件でも内容次第では受けたかもしれない。


 話題になる。

 視聴者が盛り上がる。

 診断系ならコメント欄も伸びる。

 切り抜きにも向いている。


 でも今は、そういう判断だけでは動けない。


 見せることは、力になる。

 同時に、誰かを巻き込む。


 リアは返信を打たず、メールを閉じた。


 代わりに、別の連絡先を開く。


 黒瀬透真。


 少し迷って、やめた。


 透真に聞けば、きっと真面目に考えてくれる。


 でも、この案件は配信と企業と情報の匂いがする。


 なら、最初に聞く相手は別だ。


 リアは、鴉羽ミナトへ通話をかけた。


 数コール後、やけに眠そうな声が返ってきた。


『はいはい。白峰リアさんから直接通話とは珍しいね。炎上?』


「開口一番それやめて」


『じゃあ案件?』


「なんで分かるの」


『君が俺に直接かける理由、恋愛相談か案件の裏取りくらいしかなさそうだし』


「恋愛相談は絶対しない」


『絶対って言われると傷つくなあ』


「傷ついてなさそう」


『まあね』


 相変わらず軽い。


 でも、こういう時のミナトは頼りになる。


 信用できるかどうかは別として。


 リアはメールを転送した。


「これ見て」


『んー? 八色能力診断アプリ……ああ、もう出たんだ』


 リアは眉をひそめた。


「もう出たんだ、って何?」


『いや、そろそろ誰かがやると思ってた。人間、自分が何色かって言われるの好きだからね』


「そういう話じゃなくて。管理局、まだ公式に発表してないよね?」


『してないね』


「じゃあ、何で民間企業が知ってるの?」


『漏れたからでしょ』


 あっさり言われて、リアは黙った。


 ミナトは続ける。


『管理局、名家、企業、裏市場。色相って概念に触れた人間はもうそれなりにいる。完全に止めるのは無理だよ』


「それは分かるけど、この案件、気持ち悪い。私のこと、白系統とか紅系統とか勝手に書いてる」


『それは気持ち悪いね』


「軽い」


『じゃあ重く言おうか。君の過去配信データを誰かが解析してる可能性が高い』


 リアの背筋が冷えた。


「過去配信データ?」


『危険配信、謝罪配信、S級ダンジョン関連の公開映像。君は有名だから素材が多い。視聴者の反応、コメント速度、声のトーン、能力発動時のノイズ。そういうのを集めれば、色相っぽい傾向は推測できる』


「それ、合法なの?」


『公開映像だけならグレー。個人の能力データとして販売してるならアウト寄り。裏で未公開データまで混ぜてたら完全にアウト』


 リアはメールの企業名をもう一度見た。


「調べられる?」


『もう調べてる』


「早」


『白峰リアさんからの直電だからね。怖い怖い』


「絶対怖がってない」


 数秒、通話の向こうでキーを叩く音がした。


 ミナトの声が少しだけ変わる。


『あー、これ表はただの診断アプリ会社だけど、資金の流れが変だね』


「変?」


『親会社が二つ噛んでる。片方は広告系。もう片方は探索者向けメンタルケア事業。さらにその先に、記憶補助ツールの会社がある』


 リアは嫌な予感がした。


「記憶補助……」


『名前は変えてるけど、アルカディア残党の周辺会社っぽい』


 やっぱり。


 その名前を聞いた瞬間、リアの中で何かが固くなった。


 アルカディア・ゲート。


 新人探索者の失敗や恐怖を集め、記憶をデータとして売っていた組織。


 透真の妹、黒瀬澪の記録にも関わっていた可能性がある組織。


 S級ダンジョンの一件が終わっても、完全には潰れていない。


 リアは唇を噛んだ。


「これ、診断アプリじゃなくて、色相データ集め?」


『たぶんね。表向きはエンタメ診断。裏では能力傾向と心理反応の収集』


「最悪」


『最悪だけど、商売としてはうまい。みんな自分の色を知りたい。配信者にやらせれば視聴者も真似する。データが勝手に集まる』


 リアはモニターの案件メールを見る。


 明るい文面。


 親しみやすいデザイン。


 報酬額もかなり高い。


 受ければ話題になる。


 配信としても、きっと盛り上がる。


『リアちゃんは何色?』


『白っぽい』


『いや紅でしょ』


『診断やってみた!』


『私も透明だった!』


 そんなコメントが簡単に想像できる。


 そして、その裏で誰かが能力者の色を集める。


 知らないうちに。


 遊びの顔をして。


「受けない」


 リアは言った。


『だろうね』


「でも、ただ断るだけでいいのかな」


『やめといた方がいい。告発配信とか考えてる?』


「……ちょっと考えた」


『だと思った。やめた方がいい』


 即答だった。


 リアは少しむっとする。


「何で」


『今の段階で配信したら、逆に宣伝になる。八色診断って何? ってみんな検索する。アプリは消えても類似アプリが出る。あと、君が騒ぐことで、相手は「白峰リアが自分の色を隠してる」って煽れる』


 リアは黙った。


 悔しいが、分かる。


 見せれば勝てるとは限らない。


 それはもう、痛いほど学んだ。


「じゃあ、どうするの」


『表向きは普通に断る。裏では会社の資金経路とデータの送信先を追う。君はその案件メールを保存して、事務所にも共有。ただし配信では触れない』


「見せない方がいいやつか」


『そういうこと』


 リアは椅子の背にもたれた。


 画面には、案件メール。


 明るくて、軽くて、楽しそうな言葉。


 あなたの能力は何色?


 少し前なら、気軽に乗っていたかもしれない。


 診断結果に笑って、コメント欄と盛り上がって、切り抜きになって、それで終わり。


 でも、終わらない。


 誰かがデータを集める。

 誰かが分類する。

 誰かが利用する。


 見せたものは、必ずしも自分の手元に残らない。


 リアは静かに言った。


「ミナトさん」


『ん?』


「私の過去配信、見られてるって言ったよね」


『言ったね』


「どこまで分かるの?」


『どこまで、とは?』


「その……白とか紅とか」


 口にして、少し恥ずかしくなった。


 自分が何色なのかを気にしているみたいで。


 でも、気になる。


 勝手に分類されたことが嫌なのに、自分がどう見えているのか知りたくなる。


 人間は面倒だ。


 ナギが聞いたら、またそう言うかもしれない。


 ミナトは少し間を置いた。


『映像からの推測でいいなら、君は白だけじゃない』


「白だけじゃない」


『配信者としては白。視聴者との共鳴、注目、信頼、空気を束ねる力。そこはかなり強い』


「うん」


『でも危険時や追い詰められた時、紅っぽいノイズが出る。瞬間的な爆発、感情の火力、反応速度。理屈より先に体が動くやつ』


 リアは、自分の手を見た。


 配信禁止区域で、裏切りに気づいた瞬間。

 高木の短剣。

 瀬尾の偽装負傷。

 三枝のカメラ。

 透真の声。


 あの時、自分は計算していた。


 でも、全部が計算だったわけじゃない。


 怖かった。

 怒った。

 生きたいと思った。

 誰も見捨てたくないと思った。


 その瞬間、確かに自分の中に火のようなものがあった。


「白と紅って、相性悪いの?」


『さあ。俺は専門家じゃないからね』


「嘘」


『半分嘘。分かってることは少ない。でも、白は人からの信頼や共鳴で強くなる。紅は自分の感情で爆発する。方向が違うから、噛み合えば強いし、ズレれば暴走するんじゃない?』


 噛み合えば強い。


 ズレれば暴走。


 リアは小さく息を吐いた。


「紅に堕ちる、ってコメントが来た」


『ああ、さっきの匿名?』


「見せてないのに何で知ってるの」


『君が分かりやすいから』


「やだ」


『褒めてる』


「絶対褒めてない」


 ミナトは軽く笑った。


『堕ちる、ね。そういう言い方する相手は煽りたいだけだよ。気にしすぎない方がいい』


「気にするよ」


『だろうね』


 リアはモニターの黒い画面に映った自分を見る。


 白峰リア。


 配信者。


 白。

 紅。


 誰かに勝手に決められるのは嫌だ。


 でも、その色が自分の中にあることは、完全には否定できない。


 明るく振る舞う自分。

 視聴者の反応を読んで笑う自分。

 怖い時に、怒りで前へ出る自分。

 配信を切ると決めた自分。


 どれが本当か。


 たぶん、全部だ。


「私、紅なのかな」


『白峰なのに?』


「名前いじりやめて」


『ごめんごめん』


 ミナトは少しだけ真面目な声になった。


『色って、たぶん一つじゃないよ。君は白でもあるし、紅でもある。どっちかに決めたがる人間は多いだろうけどね』


「決めたがる」


『分類すると安心するから。味方か敵か。善か悪か。白か紅か。そういうの、人は好きでしょ』


 リアは黙った。


 その通りだった。


 視聴者も、配信者も、世間も。


 誰かを分かりやすくしたがる。


 白峰リアは被害者。

 白峰リアは危険配信者。

 白峰リアは反省した。

 白峰リアはまた利用している。


 全部、見出しにしやすい。


 でも、人間はそんなに一色ではない。


「じゃあ、私はどうすればいいの」


『俺に聞く?』


「一応」


『ひどい信頼度だね』


「ミナトさんだし」


『まあ正解』


 少し間が空いた。


『案件は断る。会社は調べる。自分の色については、急いで答えを出さない。あと、配信者としては一つだけ』


「何?」


『色を見せ物にしない方がいい』


 リアは目を細めた。


『少なくとも今は。診断ごっこにすると、誰かが必ず傷つく。自分の色を知りたい人もいれば、知られたくない人もいる。色で差別される人も出る。能力を狩られる人も出る』


 リアは、相原ユウの名前を思い出した。


 翠と表示された新人。


 透真が気にかけている子。


 もし彼の色が広まったら、どうなるのか。


 成長する能力。

 一度失敗して、二度目に変わる能力。


 弱いと笑われるかもしれない。

 逆に、育つ前に潰そうとする人間が出るかもしれない。


 リアの胸が重くなる。


「分かった。見せ物にしない」


『いい判断』


「でも、隠し続けるのも違うよね」


『それもそう』


「難しい」


 リアは案件メールを開き、返信を書き始めた。


『このたびはご依頼ありがとうございます。内容を確認しましたが、現時点では能力傾向や個人情報の扱いについて確認できない点があるため、今回のPRはお受けできません』


 少し考えて、付け加える。


『探索者や視聴者の方々が、自分の能力や特性を不用意に公開することへつながる可能性も懸念しております』


 送信。


 リアは息を吐いた。


 断った。


 たったそれだけなのに、少し戦ったような疲れがあった。


 ミナトが言う。


『お疲れ』


「まだ通話つながってたんだ」


『ひどい』


「案件の会社、調べてくれる?」


『もちろん。有料で』


「え」


『冗談。半分だけ』


「半分取るんだ」


『情報屋だからね』


 リアは少しだけ笑った。


「じゃあ、今度何か奢る」


『言質取った』


「高いのは無理」


『白峰リアなのに渋い』


「白峰リアだから現実見てるの」


 通話を切る直前、ミナトが言った。


『リア』


 珍しく、名前だけで呼ばれた。


「何?」


『匿名コメントの件、スクショ送って』


「うん」


『たぶん、ただの煽りじゃない』


 リアの指が止まった。


「どういうこと?」


『文面が妙に早い。君が案件メールを開いた直後くらいのタイミングで来てる。メールの送信側とコメントの送信側が繋がってる可能性がある』


 リアは背筋が冷えるのを感じた。


 紅に堕ちる。


 あれは、単なる視聴者の煽りではないかもしれない。


「分かった。送る」


『あと、しばらく一人で案件関連の配信はしない方がいい』


「分かってる」


『分かってるならよし』


 通話が切れた。


 部屋が静かになる。


 リアは匿名コメントのスクリーンショットをミナトへ送った。


 それから、過去配信のフォルダを開く。


 配信禁止区域事件の映像。


 もう何度も見た。


 見たくないのに、見返してしまう。


 自分が何をしたのか。

 何を見せたのか。

 何を見せなかったのか。


 それを忘れないために。


 映像を再生する。


 薄暗いダンジョン。

 カメラ。

 コメント欄。

 自分の笑顔。

 仲間だったはずの人たち。

 透真の声。


 リアは、映像を一時停止した。


 高木が短剣を抜く直前。


 画面の端に、ほんのわずかなノイズがあった。


 昔なら、ただの映像乱れだと思っただろう。


 でも今は、違って見える。


 白い光。


 コメント欄の熱。


 その奥に、一瞬だけ赤い火花のようなものが走っている。


 リアは息を呑んだ。


「……何、これ」


 拡大する。


 画質は荒い。


 それでも、見える。


 自分の周囲に、白い揺らぎ。


 そして、背中側から赤い線が弾けるように広がっている。


 紅。


 白。


 メールの文面が頭に蘇る。


『白系統の影響力』

『紅系統との混合傾向』


 気持ち悪いくらい、当たっている。


 リアは別の映像を開いた。


 謝罪配信。


 コメント欄は荒れていた。


 自分は泣かなかった。


 謝るところは謝り、認めるところは認めた。


 その映像には、白い揺らぎが強く出ていた。


 視聴者の反応と、自分の声が繋がっているように見える。


 次に、S級ダンジョンの避難情報を流した時の記録。


 そこには、白い光と赤い火花が交互に走っていた。


 視聴者を盛り上げるためではない。

 誰かを戻すための言葉。


 でも、その言葉も力を持っていた。


 リアは画面を見つめた。


 自分の配信は、ただの配信ではなかったのかもしれない。


 視聴者の心を動かすこと。


 場の空気を作ること。


 恐怖を鎮めること。


 怒りに火をつけること。


 それらは、ずっと配信者の技術だと思っていた。


 でも、もしそれが能力の色と繋がっているなら。


 リアは、思わず腕をさすった。


 怖い。


 自分が何かを持っていることが怖い。


 そして、その何かを誰かに見られ、分類され、利用されることがもっと怖い。


 端末が震えた。


 ミナトからの返信。


『コメント送信元、案件メールの関連会社と近い経路を通ってる。偶然にしてはできすぎ』


 続けて、もう一文。


『リア、これは君だけの案件じゃない。誰かが配信者を使って色を集めようとしてる』


 リアは、画面を閉じた。


 心臓の音が少し速い。


 怖い。


 でも、ここで配信ボタンを押すのは違う。


 見せれば勝てるとは限らない。


 見せないことで守れるものもある。


 リアは、事務所への報告メールを作成し始めた。


 案件の拒否。

 不審な匿名コメント。

 ミナトによる初期調査。

 過去配信映像の異常ノイズ。


 文章にしながら、思った。


 これは、派手な配信ではない。


 視聴者を沸かせる一手でもない。


 でも、これも自分の戦いなのだろう。


 配信者として。


 白峰リアとして。


 白でも、紅でも。


 誰かに勝手に色を決めさせないために。


 その時、非公開の連絡フォームに新しいメッセージが届いた。


 件名はない。


 本文も一行だけ。


『白は人を集める。紅は人を焼く。あなたは、どちらで壊れますか?』


 リアは画面を見たまま、静かに息を吐いた。


 怖さはある。


 でも、今度はすぐに配信をつけなかった。


 スクリーンショットを撮る。

 保存する。

 ミナトへ送る。

 事務所へ送る。


 それから、透真にも短く送った。


『色の件、私にも来た。たぶん、もう動いてる人がいる』


 送信。


 すぐに既読はつかなかった。


 リアは椅子にもたれ、モニターに映る自分を見た。


 白峰リア。


 白か。

 紅か。


 どちらでもあるのか。

 それとも、どちらでもないのか。


 まだ分からない。


 でも、一つだけ決めた。


 自分の色を、見世物にはしない。


 そして、誰かの色を勝手に商品にさせない。

ここまで読んでくださりありがとうございます。


今回は、白峰リア視点の回でした。


第二部で少しずつ現れ始めた「色相」という概念。

今回はそれが、配信案件という形でリアのもとへ届きました。


「あなたの能力は何色?」という診断企画は、一見すると軽いエンタメです。

ですが、その裏では探索者や視聴者の能力傾向、心理反応、過去配信データが収集される危険があります。


リアは第一部で、見せることの強さと怖さを知りました。

だから今回は、すぐに配信で告発するのではなく、見せない判断を選んでいます。


リアに見え始めた白と紅のノイズ。

それが何を意味するのか、なぜ彼女がその二色に関わるのかは、これから少しずつ明らかになっていきます。


第二部では、透真だけでなく、それぞれのキャラクターが別々の場所で「色」と向き合っていきます。

ここから物語は少しずつ広がっていきます。


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークと評価で応援していただけると嬉しいです。

第二部もここからさらに加速していきます。

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