愛情と言うには強く、執着と言うには重い呪い
新月が全ての光を飲みこんだ真っ暗な世界。俺の目の前では力尽きて倒れる三人の姿があった。皆刀が突き刺さっていて、床には未だに広がる赤が見える。建物の外では足音一つもしない。もう助かるのは無理だ。なんせ、彼らを刺したのは自分自身だ。俺が助けない限り彼らは死ぬ以外の道がない。
「今回も楽しかったな」
ぽつりと呟けばそうだねと声がする。満面の笑みで笑う澪くん。ニヤリと笑う遥真。へにゃりと笑う朔さん。目を閉じれば浮かんでくる彼らの顔。今はもう笑うことすらもなくなったのだが。それにしても……。刺した彼らに近付く。
「幸せそうに笑いおって……ったく」
朔さんならともか遥真と澪くんは知らないだろ。俺が何のために皆を殺してるかなんて。――殺すことでまた皆と出会えることなんて。初めは怖かった。本当に輪廻転生するかなんて分かんなかったし、今みたいな世界と違って人が簡単に死なない世界だったから。でもあの時、朔さんに名前を呼ばれたとき、記憶が戻った瞬間全身が沸騰するぐらい熱くなった。俺が殺せばまた皆に会える。そう確信したら口角が上がって体が震えた。
「ほんま、朔さんや遥真のこと言われへんわ」
俺も中々執着していると自覚はしていたけど、あの二人よりはないと思っていた。それでも確実に俺は二人に並ぶぐらいの執着心があの瞬間にはあったと思う。そもそも朔さんが俺たちを探して、遥真が呪いをかけて、澪くんが輪廻させるよう引きつけて、俺が殺す。こんな歪んだ関係なんて全員が狂っていないとできない。それを無意識にしているか意識的にしているかの違いだろう。
「おもろいなぁ」
俺たちは遥真の呪いでこうなったわけじゃない。初めて出会って、お互いの家に行くようになって、仲を深めたときから狂っていたんだ。誰も気付こうとしないだけ。あぁ、本当に愛おしい。なんて閉鎖的で愛らしい狂いだ。近くにいた澪くんの頭を撫でる。冷たくなったそれに俺はまた愛おしさを募らせる。朔さんと遥真の頭も撫でてゆっくりと立ち上がる。……独り言もここまでにしておこう。そろそろ三人が寂しがってしまう。
「ほな……またな。みんな」
彼らと同じ笑顔を浮かべる。澪くんが好きだと言っていた笑顔。隣に置いていた余った刀を手に取る。首に当てると冷たい鋼の感覚がする。今はその冷たさが心地良い。俺は勢いよく刀を引いた。鮮血が舞い、体に力が入らなくなる。血が抜けて体温が下がっていく感覚に目を閉じる。さぁ、地獄へいこう。地獄すら、また逢うための約束の場所なのだから。
「ありがとうね」
最期にへにゃりとした声が聞こえて体が抱き締められる感覚と共に俺は真っ暗闇へと意識を投げ出した。
「――やっと見つけた。悠翔……覚えてるかな?」
その言葉に俺は視線を後ろに向ける。そして彼の、朔さんの顔を見て駆け出し勢いよく抱きついた。
「忘れるわけっ、ないやん!」




