脱!石田さんのコミュ障
「あ、神沢おつかれ……」
石田さんは、座った状態で俺を見上げてそう言った。……それにしても女子の体育座りってなんかいいな……
「うん。ありがとう石田さん」
「ん。」
俺も石田さんの横に座った。
もちろん体育座りなんてしてない。
「神沢、足すごく早いね。予想以上で驚いた」
「ん?そうか?まぁ普通だと思うんだけどな?」
「あれが普通なら……この学校にいる全生徒が普通に以下になる」
……いや、さすがに言い過ぎだろ?
俺より早い奴もいっぱいいるよな?たまたま現段階でクラス1位が俺なだけで
「先生にも陸上部に勧誘されてたんでしょ?」
「え!?どうしてわかるんだ?」
「そんなの誰でもわかるよ。神沢の走りを見たら誰だって陸上部に勧誘したくなる」
「そうか……」
俺は自分での評価より周りの評価が高いんだよな……。
嬉しいやら面倒やら複雑な気持ちだ。
「凛はどれくらい早いの?神沢と比べて」
「凛か?凛は俺と同じ……か、今の俺なら凛には勝てないだろうな」
「え?凛……神沢より早いの?」
「あぁ。中3の時に互角だったからな。なまってる俺の身体じゃ凛には勝てないだろうな」
まぁなまってる身体を元に戻すことができたら負けることはないだろうけどな。
「やっぱりバケモノだよ。凛はバケモノ……」
「ま、身体能力に関してはそうかもな」
男の俺と互角……それ以上だからな。
「私は総合的な目標を凛に決めた。凛みたいになりたいと思う。才色兼備の女の子になりたい」
石田さんは憧れの目をしながらそう言った。
「石田さんが凛になるにはまずコミュ力をあげないと」
「う……痛いとこをつく……」
「あははっ。コミュ力ってのはほんとに大事だからね」
いくら頭が良くても運動ができてもコミュ力がないとあまり意味がないのだ。
「私もそう思うけど……コミュ力の上げ方がわからない。」
「んーそうだなぁ……まずはクラスの女の子に話しかけてみるのはどう?」
「難易度が高い……ボス戦で言うとラスボスくらいの難易度……」
「そ、そーかな?凛や神楽坂さんとはすぐに友達になれたじゃないか」
「そ、それはそうだけど……うぅ……」
と、石田さんは黙ってしまった。
「今日の昼休みさ、誰かに話しかけてみようよ。俺も話しかけやすそうな子探すから」
俺がそう言うと石田さんは少し悩んで末にこくりと頷いた。
「脱!石田さんのコミュ障だな!!」
「できる限りの範囲でがんばります……」
石田さんは地獄耳の俺でも聴こえないような声で返事をした。




