白帝
ボロボロの隼人は声を振り絞る。
「ありがとう……ございます」
「借りを返しに来ただけだよ」
隼人はそこで気絶してしまう。
「そこの魔人君! その刀を返してもらうよ」
男性はバルカスから新月を奪いとる。
「この刀は君なんかが使える代物じゃない」
バルカスはやすやすと刀を奪われたことに驚愕する。
「お前何者だ!」
「私は アラン」
「この子たちに借りがあってね。それを返しに来たんだ」
アランは手に持っている新月を隼人の心臓に突き刺す。
「こういう使い方もあるってアギトが言ってたよな」
新月にまとわりついていた黒いオーラが隼人に戻っていき、新月はきえていく。
「リカバリー」
雅章の傷もみるみるうちに消えていく。
「これで安心だな」
アランは一瞬で四人を一か所に移動させる。
「バリア」
四人を囲うシールドが展開される。
「貴様! そいつらは必ず殺す」
「これでこの子たちは大丈夫だな」
「聞いているのか!」
「本来こんな場面を見たとしてもスルーするんだけどね、この子たちは葵の恩人なんだよ」
「それがどうした! こいつらは必ず殺すといっただろう」
「この子たちが死んだら葵が悲しむからね」
「だから、この子たちを害するというなら消す!」
アランの言葉と共に絶対的な恐怖がバルカスを包み込む。
バルカスはどうすることもなく地面に崩れ落ちる。
心ではなく体が恐怖に屈していた。
「これで分かったでしょう」
「君では絶対に勝てん。自分たちの世界に帰りなさい」
「君たちもだよ」
アランは後からきた魔人達を指さす。
バルカスに話しかけていたリーダーらしき魔人が前に出てくる。
「それは無理だな」
「こんな場面を見られたら生かしてはおけない」
「あんたには死んでもらう」
「これはチャンスですよ」
「死なずに帰れるんですよ!」
「なめやがって!」
「こいつを殺せ! 暴れたいやつもいるだろ」
一人の魔人がアランに向かっていくが途中で動かなくなる。
アランが魔人にゆっくりと触れる。
パリンッ
魔人は音を立てて砕けた。
「氷系の魔法か!」
アランはため息をつく。
「私はチャンスを与えたぞ」
「チャンスを棒に振ったのは君たちだからな」
「あまり戦いは好きじゃないんだ」
黒髪だったアランの髪が一気に変色し、きれいな白銀になる。
アラン自身の雰囲気も変化したようだった。
それと同時に周囲の気温が一気に低下し始める。
「もう誰も逃がさんぞ!」
「殺せ!」
「サンダー」
「バーニング」
「スラッシュ」
魔人が一斉に魔法を放つ。
だが、アランにはとどかない。
アランに近づくと魔法は動きを止めて消滅した。
「バカな!」
「この能力はおもしろくないな。解除してやるよ」
アランは手に氷の剣を創造する。
「どこまでバカにすれば気が済むんだ!」
スパッ
斬りかかったバルカスは一瞬で真っ二つになる。
血はでず、切断面がすでに凍っていた。
「バルカス!」
「ランス」
無数の氷でできた槍が空中に出現する。
「シールドだ!」
一斉に魔人がシールドを展開するが意味はない。
シールドを槍が貫き魔人に穴を空ける。
魔人は残り三十人程に減っていた。
「化け物か!」
「リーダー今からでも撤退を!」
「そうだな。ゲート」
ゲートが開き始めるが途中でゲートが消滅する。
「逃がすかよ!」
「助けてくれ」
一人の魔人が降伏の意思を示す。
スパッ
助けを求めた魔人の首が飛ぶ。
「チャンスはやったはずだ!」
「お前らが悪いんだよ」
急にアランの携帯が鳴る。
「葵か? うん。うん。分かった」
「急用が入った」
魔人の中には安堵する者もいた。
しかし、リーダーとばれた魔人は終わりを悟ったようだった。
「じゃあな」
「ブリザード」
あたりが一瞬で氷の世界に変貌する。
その中で生命活動を維持できるものなどいなかった。
生きているのはバリアの中にいる四人とアラン一人だけだった。
アランはバリアの方を一度向くとサッと姿を消した。
しばらくして、魔導隊の戦士が到着する。
その中には林康次の姿もあった。
「これはなんだ!」
一人が氷の世界に驚き、声を上げる。
「子供たちがいるぞ!」
魔導隊がバリアに触れるとバリアは粉々になって消滅した。
「安全は確保できたな」
「しかしこれはいったい」
康次があることを思いつく。
「これは白帝の仕業だろうな」
「白帝ってあの?」
「その白帝だな。この世界でナンバー2と言われる実力者だ」




