絶望の先へ
二回目の進行が行われた一週間後、さらなる変化がおとずれた。
「ま、またゲートが現れた……」
「もしかしたら、帰るんじゃないのか?」
人類に少しだけ、希望の光がさした。
だが、その希望はさらなる絶望で塗り替えられる。
世界各地に開いたゲートから更に魔物が降り立ったのだ。
「もう終わりだ。地球にいる奴だって増えるのに」
「更に数が増えるなんて……」
人々は口々に絶望を述べる。
降り立った魔物の中には、今までの個体とは格の違う上位種が含まれているようだった。
RPGでオークと言われるような今まで降りてきたものとは違う。狼のような容姿。
服装やいでたちからもそれは歴然だった。
「先に行った魔物の数がずいぶん減っているな」
「おい! そこの人間! 数を減らしたのはお前たち人類か?」
「………………」
「どうした? 喋れないのか? 同じ言葉を話しているはずなんだがな」
「オナカヘッタ オレ タベル」
グシャッーー
「勝手に動くな、殺すぞ?ああ、もう死んでるか」
手下と思われる魔物の頭が潰れて絶命する。
魔物が魔物を殺すという異様な光景、それは一般人に刺激が強すぎた。
「おい! 気絶してしまったのか? これからは部下を手にかける時も要注意だな。めんどくせえ」
「この程度で気絶するとは、戦闘用の兵士ではなさそうだな」
「この地域の支配者を探しに行くぞ!」
上位種らしき者が言い放つと魔物の軍勢が移動していく。
「やっぱりあてずっぽうでは無理か」
「意識のあるものよ、いるはずだ。出てきてくれ! この地域の支配者に合わせてくれ」
ある少年が姿を現した。
「あの子、殺される。助けましょう!」
「俺たちが行っても無駄だ。もう、しょうがない」
「そんな、まだあんなに若いのに」
周りで隠れている人が口々に嘆いた。
「おお! こんなに小さい子がでてくるとは! 反応してくれて私は嬉しいぞ」
「それにしても、誰も助けようとしたりしない。この世界の人類とは薄情なんだな」
上位者らしき者は笑いながら喜ぶ。
「あなた達は人間を殺さないんですか?」
「そうだな。私たちは交渉をしに来たんだ。人間を殺しに来たんじゃない」
「じゃあ、悪い魔物じゃないんだね」
「そうだな、現状は……な」
「お前はおれが怖くないのか?」
「魔物のお兄ちゃんがさっき言ったじゃん。悪くないって、だから怖くないよ」
「そうだったな。ハッハッハ」
上位者らしき者と少年は仲良さそうに歩いていく、魔物の軍勢を引き連れて。
「魔物のお兄ちゃんに名前ってあるの?」
「僕は 如月 隼人 っていうんだ! 十歳なんだよ!」
「まだまだ若いなー、隼人。」
「俺は魔人の ロディス よろしくな!」
「ところで隼人。 今はどこへ向かっているんだ?」
「ベヘルっていう偉い人が集まるところ。昔行ったことがあるんだ!」
「そうか! ありがとな!」
「どういたしまして」
更に仲良くなった隼人とロディスは歩いていく。
ベヘルという目的地へ。魔物の軍勢を引き連れて。
まだ若い彼には分らなかっただろう。
交渉とはどういうものか。決裂すればどうなるのかを。