絶望
世界は絶望の中にあった。
「誰か!……た、助けて」
「まだ、死にたくない!」
鳴り止まない悲鳴と宙を舞う血飛沫。
突如開いたゲートから、見たことがない大量の化け物がこの世界に降り注いだ。
「ニンゲン タクサン オイシイ マオウサマ サスガ」
人は銃火器によりできる限りの応戦を行った。
だが、一部の個体には銃火器が利かず、ただ蹂躙されることしかできなかった。
化け物が現れて二週間、奴らはいつのまにか消えていた。
二週間というい短い間に世界人口の二割が失われた。
「やっといなくなった! これでまた平和になる!」
大人数の人が喜び、泣き、生存に歓喜した。
しかし、一部の人は笑っていなかった。
彼らは知っていた。化け物がどこへ消えたのか。
奴らは森や海へ移動していったのだ。
殆どの人が隠れていて気づいていないようだが、奴らは消えたりしていない。
まだ地球上に存在しているんだ……と。
化け物が去りすぐに各国首脳の会議が行われた。
化け物を魔物と命名し、この地球上から殲滅すると。
「今のうちに総攻撃で奴らを殲滅する! あらゆるものを使って攻撃しろ! 死んだ人々の恨みを思い知らせろ!」
世界各国で魔物に対する一斉報復が始まった。
ある国では細菌兵器が、ある国では禁忌とされる核兵器が使用された。
それにより魔物の大多数は死滅した。
「「「人類の勝利だーー!」」」
歓喜の声が世界中に木霊する。
軍の上層部はきずいていただろう。
全ての魔物が死んだわけではない。
この攻撃で生きているということの意味を。
為すすべがなく、あとは死ぬだけだということを。
一か月後、魔物は再び姿を現した。
魔物の子供という、さらなる絶望を引き連れて。
人類は考えが至らなかった。
魔物が生物だということ。
繁殖し増える可能性があることを。
「ナカマ タクサン コロシタ ユルサナイ」
そこからは一か月前と同じだった。
奴らが満足するまで、為すすべなく蹂躙される。
見せしめのように、残虐に。
「やめて、離して!」
「やめてくれ! その人を連れて行かないでくれ!」
「オマエラ ヨワイ ダカラ ウバワレル オマエラノセイ」
魔物は女性を抱え、笑いながら森へ消えていく。
一か月前と違う点は、女性を連れ去る個体が現れたことだ。
何をされるかは想像できる。だけど助けられない。
魔物が去り、つかの間の平和がまたおとずれる。
人類の攻撃により魔物の数も減っており、数の被害は少なくすんだ。
しかし、一か月前よりも心に傷を負うものが多く現れた。
「なんであんなことになるんだ」
「あいつらが憎い」
「殺してやる」
家族を殺された者。
大切な人を連れ去られた者。
彼らは嘆き、悲しみ、さらなる絶望に呑まれる。
「マスター! これ以上は人類の心が持ちそうにありませんが、まだ加勢しなんですか?」
「まだ早いな。まだ絶望が足りない。彼らが魔物に対抗する力をつけるにはまだ……」




