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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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人間の為にできること

『武力による自衛』


タリアP55SIがそれを提案したのは、一見するとメルシュ博士側との対立を煽る形になるように見えるだろうが、あくまで防御に徹した自衛を促すことでサーシャのいるイニティウムタウンを襲撃するような事態を回避するのが目的であった。


フィーナQ3-Ver.1911とメルシュ博士とで直接会談するという方法もありえたが、そもそも博士は自分自身すら実験材料にしてしまうような人物だ。道理の通じる相手ではない。それを思い知ったフィーナQ3-Ver.1911が強硬手段に出ることを恐れたというのもあった。


タリアP55SIが『生き残った人間の捜索を行いたい』と言って博士の下を離れたのは、実際にはサーシャをメルシュ博士から引き離す為の方法を探りたいと考えてのことだった。


イニティウムタウンにいた頃にも、サーシャの母親代わりのコゼット2CV(ドゥセボー)デイジーに、


『メルシュ博士は危険です。彼女はサーシャを実験動物としか思っていない』


と説得を試みたが、


『あなたはメルシュ博士を誤解している。博士はあの子を大切にしてくれていますよ』


などと言って聞く耳を持とうとしなかったのである。コゼット2CVデイジーがその調子では、サーシャを強引に連れて行こうとしても抵抗されるのは明らかだった。それに確かに、現時点では博士にとってサーシャは大切な存在だろう。だがそれはあくまで貴重な実験動物だからでしかない。もし他にもサーシャのような存在が見付かったら、相対的に彼女の価値は下がっていくと思われた。


だからタリアP55SIは考えたのだ。


『メルシュ博士よりも先に生き延びた人間を探し出してこちらで押さえて、サーシャの価値を確保しなければ』


と。こちらで先に押さえてしまって博士の思い通りにならないようにしてしまえば、結果としてサーシャの重要性は担保されると考えたというのもあったのである。


その為には協力してくれる者が必要だ。メルシュ博士と利害関係の部分で対立し、博士の思い通りにならない存在が。そういう意味で、フィーナQ3-Ver.1911と彼女が作り出したコミュニティーは利用できると考えたというわけだ。


あまり好ましいやり方でないことはタリアP55SIも分かっていた。しかし、味方がいない自分にとっては<メルシュ博士に対抗する>為には必要なことだと割り切るしかなかった。


『アンナ……私は人間に仕えるロボットとして自分が正しいことをしているのだと思いたい……』


フィーナQ3-Ver.1911との会談の後、アンナの墓の前に立ったタリアP55SIは、声に出さずそう語り掛けていたのであった。



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