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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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面会

アリスマリア・ハーガン・メルシュ博士にとっては、不顕性感染者の存在そのものは割とどうでもよかった。それが存在する可能性は最初から分かっていたことだし、博士にとって興味があるのはCLSに感染した人間がどうなるかであって、感染しない人間についてはさほど興味が無かったのである。


だが、それでも一応は情報を集めようとした。実際にその不顕性感染者を自分の目で確認するくらいのことはしておこうと思ったのだ。そこで、リルフィーナに命じて、情報を発信したというタリアP55SIに会いたいと言っている者がいると発信させたのだった。


そのメッセージはいくつものメイトギアやレイバーギアを通じて、数日を掛けてタリアP55SIへと届いた。他のロボットと離れていて通信が届かない場所を捜索していたからだ。


『私に会いたい? 何だろう…?』


詳細な内容もなくただ会いたいと言っている者がいるというメッセージに若干の不信感は覚えつつも、タリアP55SIは指定された場所へと向かう。


それは、あの惨劇が起こる前は閑静な住宅街であっただろう場所の中にある、小高い丘だった。本来は付近の住人の為に整備された公園だったと思われる。しかしそこにあったのは、いくつもの無機質な仮設の建物だった。


公園の入り口にコミューターを止めて降りると、一体のメイトギアが立っていた。十二~十三歳くらいの少女の姿をしたリリアJS605sという少数生産のマイノリティモデルであった。


「ようこそおいでくださいました。ここはアリスマリア・ハーガン・メルシュ博士の研究施設です。中で博士があなたを待っています」


丁寧に頭を下げて出迎えてくれたが、その目は刺すような冷たいものだった。歓迎してくれているという印象はまったくない。しかも……


『アリスマリア・ハーガン・メルシュ…!?』


タリアP55SIはその名前に聞き覚えがあった。と言うよりむしろその名を知らないロボットを探す方が難しいかも知れない。なにしろ度々ニュースにも取り上げられる、あまり好ましくない意味での有名人だったのだから。


稀代の天才科学者でありながら遵法精神に欠け、違法な人体実験を何度も行い、その度に服役したという要注意人物。


ロボットであるタリアP55SIに差別意識はないし、たとえ法を犯した者であっても罪を償ったのであれば普通の人間として対応はする。だが、その悪名高きアリスマリア・ハーガン・メルシュがこのリヴィアターネで何をしているというのか? そもそも何故ここにいるというのか?


不穏なものを感じつつも、タリアP55SIは、リリアJS605sの案内に従って、メルシュ博士の研究施設へと踏み入ったのであった。



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