協議
「これからどうすればいいのかしら…」
「……」
アンナTSLフラウヴェアの家のリビングで、トーマスとリンナとレミカの頭を撫でながら、プリムラEL808が困ったような顔をして呟いた。向かいに座るアンナTSLフラウヴェアも、言葉もなく腕を組む。
今はまだ人数もそれほどではないからまだ大丈夫だとしても、これ以上、このコミュニティーが大きくなるというのは、アンナTSLフラウヴェアとプリムラEL808にとっても正直、好ましいものではなかった。
おそらく、コミュニティーとして平穏に存続していく為には今の規模が限界かもしれないというのが二体の共通認識だった。
元々、この集落自体が小さいので、用意できる住宅も残り少ない。そこで、
「住宅が残り少ないことを理由に、これ以上の受け入れは拒否するべきだと思う」
と応えたアンナTSLフラウヴェアに対し、プリムラEL808も、
「そうね。フィーナQ3-Ver.1911には、自分で他に同様のコミュニティーを作ってもらいましょう」
と応じた。
「あなたはどうするの?」
そう言ってプリムラEL808が視線を向けた先にいたのは、エレクシアYM10であった。二体とは離れて座って黙って話を聞いていたのである。
正直、CLS患者を保護しようという意図のない彼女の存在も、二体にとっては懸念材料の一つだったのだ。
「別に……今は他に目的もないからここにいただけだ。お前達が出て行けと言うのなら出て行っても構わない。お前達のおままごとにもそろそろ飽きてきたしな」
特に何かが進展するでもなく、<人間ごっこ>をただ続ける彼女らに対して、エレクシアYM10の関心が薄れつつあるのは事実だった。
「そうしてもらえると私達も助かるわ。できれば、フィーナQ3-Ver.1911にもそう伝えてもらえないかしら」
アンナTSLフラウヴェアが発したその言葉に、エレクシアYM10はただ黙って決意した。この茶番を見限ることを。
人間ごっこを続けたいのなら勝手にすればいい。だが自分には関係ないし、何か面白いことが起こるわけでもなさそうだ。だから、
「分かった。ただし、私が今使っているガレージの車両は餞別代りとしてもらっていく。それが条件だ」
と、即断即決した。
「いいでしょう。それで出立は?」
「今すぐだ」
日常を再現するつもりなどまるでなかったエレクシアYM10にとっては、片付けなければいけないものもないし失いたくないものもないが、住居にしていたガレージに置かれていた4WD車は、アミダ・リアクタ―を搭載した、軍用車両のベースにもなっている比較的大型のもので、自身の充電にも使えるので持っていきたかっただけなのだった。




