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死の惑星に安らぎを  作者: 京衛武百十
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フィーナQ3-Ver.1911

現在、惑星リヴィアターネ上では、数千を数えるロボットが偽生症(Counterfeit Life Syndrome)=CLS患者に安らかな死を与える為に任務にあたっている。彼女、フィーナQ3-Ver.1911もそんなロボットの一体だった。


彼女は、ロボットでありながら自らもこのCLSという病がいかなるものであるかを理解する為に独自の調査を行っていた。どうやら何かの研究もしくは調査を生業とする人物の下で長らく使われていたものらしく、自らの知識の充実に意欲を見せるメイトギアであった。


その所為か、彼女は拠点でCLS患者をただ待つのではなく、積極的に周囲の住宅などを探索し、何があったのかということを知ろうとした。


しかし、彼女がいた地域はパンデミックの基点となった基地からそう遠くない位置にあった為か、非常に早い時点で状況も分からぬままに壊滅したらしく、残された痕跡はどれもただ日常の一コマを窺わせるものばかりだった。


そう、この地にいた住人の多くは、いつも通りの生活をしていた中で、突然、CLSを発症したのだろう。住宅に入り内部の様子を見てもただ何かが暴れた様子が窺えるだけで、日記やメモさえ殆ど残されていなかった。


異変を察したなら、日記やメモを残す者が必ずいる。にも拘らずそういうものがあまりにも少なかったのだ。その数少ないメモについても乱れた字で走り書きされた、『怖い』『何が起こってる?』『お父さんが』『お母さんが急に』『バケモノが』等々の断片的なものばかりで、具体的な状況を記したものはまったく見られなかった。


その代わりに、食事の用意がそのままであったり、服を選んでいたのかクローゼットが開けっ放しでベッドの上に服が並べられていたり、子供机の上に鞄からテキストが出しかけのまま放っておかれたりと、本当に何の前触れもなく日常が途切れてしまったのだと思われた。


チェストの上に置かれた、両親と思しき大人と幼い子供達が幸せそうに笑っている写真が痛々しい。


住宅の庭などに簡単な墓が築かれたりしていたが、これはCLS患者を処置したロボットの手によるものだろう。この住宅街のCLS患者については処置がほぼ終えられていたようだ。


取り敢えず今日の探索を終えて戻ろうとした時、彼女の聴覚センサーは小さな物音を捉えていた。それは、ある住宅の物置だった。その中で、何かが動いている気配がしていたのだ。その音から推測される正体は、人間。しかも幼い子供のようだった。とは言え、そんなところに閉じ込められた人間の子供がまだ生きている筈もない。また、心臓の鼓動も聞こえない。間違いなく子供のCLS患者がそこにいるものと思われたのだった。



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