EPISODE 18.1
専務の由美子さんの手腕でオオミヤとの話し合いが決着した。来春を目処に市川市のオオミヤの所有地を購入して新工場を建設する。土地代金は新規に発行する株式で支払われる。実行された場合、比野文具株式会社の資本構成は比野真二社長 75%、比野由美子専務 5%、オオミヤ 20%になる見込み。また信用改善により江戸川銀行、神田川信用金庫からの借り入れも現実的になるはずだ。
製造設備は主力製品の自動ラインが主となる。手作業的な少量生産は当社にとって文化であるからこれもなくさない。倉庫機能の一部は両社で共有されて商品の融通を容易にする方針だ。また事務所と工場は光回線で接続されて広域VPNが構築される。現工場は段階的に倉庫化されて使える限りは使う方針。
市川新工場は2003年春に着工、2005年夏に稼働開始。
年末の大掃除の日。由美子さんはベージュの作業服で倉庫に現れた。
「ここはあと数年は使うことになりました。だから広く使いましょう」
そう言って、保管されていた古いパソコンの処分を命じた。98MATE (PC-9821Ae/U7W)、Gateway 2000 P5-100、IBM ThinkPad 345C、IBM ThinkPad 230CS、DynaBook GT475、98FELLOW (PC-9801BA)、EPSON PC-486SE、IBM ThinkPad 220 はどれもが思い出のある機械。10年以上前のプリンターPC-PR101TLもとうとう処分されることになった。
お姉さんが固定資産台帳を手に駆け付けて調べているとき、竹山工場長が前に出て専務に意見をした。
「2台ある345Cの片方は棚卸し専用に使用しています。処分すると今日の午後からさっそく困ります」
「じゃあそれは残しましょう。間違えないようテプラを貼っておいてください。他の機械はどうですか。個人的に欲しい人がいれば市価で譲りますよ」
誰もいなかったので夕方に産廃業者さんの軽トラに積むことになった。保管期限の過ぎた書類もいっしょに処分してもらう。
掃除をしながら私は思った。竹山さんはずいぶん痩せたなあと。




