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6、リコの成長?

orz いつもの構成ミスで長くなってしもた…

 ◆リコの成長



 ──  リコたちが世界樹の力を借りて本格的に浄化を始めてから、数ヶ月が経った ──






 帝国の瘴気を浄化することにも協力し、世界樹まで聖なる樹に変貌させ、世界樹に選ばれた者、聖女の代理人としての本領を発揮し、色々な恩恵と加護をもたらしていた。


 晴れて欲しい時、雨が欲しい時、天候にも恵まれるようになり、大地の畑や果樹園に豊穣をもたらした。


 またある時は、重傷を負った怪我人を完全に治し、伝染病が広まった時も、病人たちを癒していった。


 ツカサの読心術と協力し、地球の知識を惜しみなく提供し、帝国の貧富の差や、差別問題にも取り組み、医療や福祉も手伝った。


 周辺国にも赴き、獣人やエルフ、魔族と呼ばれる魔力の多い人々が、人間と対等に働ける職場を作り、教育の機会を広げていった。


 世界樹ユグドラジルの聖域に柔らかな陽光が差し込む午後。


 リコは目を閉じて精霊たちのささやきに耳を傾けていた。


 数ヶ月前、ムーン王国ではぼんやりとした光の玉にしか見えなかった存在たちが、サンディ帝国では鮮明な姿と声を持って彼女の前に現れている。風の精霊が木々の間を駆け抜ける音、水の精霊が泉で遊ぶ笑い声、土の中から聞こえる地の精霊の低い唸り ── すべてが彼女の感覚の中で調和のとれた交響曲を奏でているかのように。


 「リコ、また一つ新しい精霊と会話できたようだね」


 ツカサが近づき、銀髪を風になびかせながら微笑んだ。彼女の紅い瞳には、リコの成長に対する純粋な喜びが映っている。読心術の能力を持つツカサは、リコの心の中の変化を誰よりも敏感に感じ取っているようなのだ。


「うん、地の精霊たちが、この一帯の土壌が浄化されてきたって教えてくれたの。来年の収穫はとても豊かになるって」


 リコが目を開けると、茶色の瞳には世界樹から注がれる微かな光が反射していた。


 聖女の代理人としての力が日に日に強まるのを感じてもいた。


 最初はただのOLだった自分が、今では帝国の瘴気を浡化し、世界樹を聖なる樹へと変貌させる力を手にしている ── その現実に時々戸惑いを覚えることもあったが、困っている人々を助けられる喜びがそれを上回っていた。


「リコ、ツカサ、また成長したな」


 深く響く声が聖域に響いた。


 赤い髪が陽光を浴びて炎のように輝く獅子皇帝オーデンが、セレニウスだけを連れて近づいてきた。彼の金色の瞳は、威厳の中に温かさを秘めていた。亜人国の王である彼は、祖先から受け継いだ獅子の血を濃く引いているからだと教えてもらった。


 威厳と優しさを併せ持つその姿に、リコは少しずつ心を開いていた。


 「帝国の陛下ともあろうものが、護衛騎士を連れなくていいのかい?」


 ツカサはわざとらしく眉を上げてからかった。聖樹の聖域では邪悪な意図を持つ者は入れないことを皆知っているのにもかかわらずに。


「ツカサ嬢、聖樹の下へは下手な武器を持っては入れないのです。それに、陛下自身が武に優れた方なれば、せめて盾代わりになる自分程度でよろしいかと」


 セレニウスが丁寧に頭を下げて答えてくれた。ハイエルフである宰相の空色の瞳には、オーデンに対する深い忠誠心が読み取れる。


 「セレニウス宰相様も、重要な知恵者ではありませんか」


 ツカサは呆れたように、陛下と宰相を見た。


 リコは陛下と宰相のやり取りを見て、思わず笑みを零した。


 この数ヶ月で、リコとツカサたちは帝国の人々との間に確かな絆を築いていた。


 最初は「召喚された異世界人」として好奇の目で見られていたのは確かだが、今ではその実力と人柄から多くの信頼を集めていた。


 獅子皇帝オーデンは赤い髪を風になびかせ、金色の瞳でリコの修行を見守っていた。


「また一つ、新しい力を覚えたようだな」


 「リコは世界樹や精霊たちの話を、本当に親身になって聞いてくれるからね」


 ツカサが自信をもって報告してくれる。


 リコは汗を拭いながら微笑んだ。


「それはよい。リコ、そなたの手を見せてくれ」


 オーデンが突然言った。リコが少し驚きながらおずおずと手を差し出すと、皇帝はその手を優しく包み込んできた。彼の手は大きく、戦士としての鍛錬の跡が感じられたが、リコの手を握る力加減は驚くほど繊細に感じられる。


「世界樹の力が、そなたの体内でさらに調和しているようだ。最初に会った時よりも、はるかに安定している」


「はい、精霊たちの声が以前よりはっきり聞こえるようになりました。天候を調整することもできるようになって……」


 リコが言いかけると、オーデンは懐から何かを取り出してきた。


 精巧に彫られた獅子の紋章が刻まれた金の護符だ。それは古びてはいたが、神聖なオーラを放ち、触れる者の心を落ち着かせるような力を感じさせる。


「これは我が家に伝わる護符だ。先祖が獅子の血を継いでいる証であり、持ち主を守る力があるといわれておる」


 オーデンは自分の首から護符を外すと、真剣な眼差しでリコを見つめてきた。


「これをそなたに預けよう。受け取ってくれまいか?」


 聖域が一瞬で静寂に包まれた。風の精霊たちさえも動きを止め、木々の葉音だけが微かに響く。


 リコとツカサは驚いて護符を見つめた。


 「これ、かなりの神聖な力を感じるよ……」


 リコは息をのんだ。


「陛下、これは……」


 セレニウスは目を見開いた。


「陛下、このように、あまりにも大切なものを……」


「我は自覚したのだ」


 オーデンがリコの言葉を優しく遮った。


「そなたが異世界から来た者であることは重々承知している。本来の姿が、ただそれだけではないことも、すべて理解している。だが、それらはどうでもよいことなのだ」


 彼の金色の瞳には揺るぎない確信が輝いていた。


「我が見ているのはそなたの心だ。聖女の代理人としての責任感、弱き者を守ろうとする強さ、この世界をより良くしようとする意志 ── それこそが真の王族に相応しい資質なのだ」


 リコの胸が高鳴った。頬が熱くなるのを感じ、視線を下に向けた。


 この数ヶ月、彼女はオーデンと共に帝国を巡り、様々な問題に取り組んできた。


 貧富の差を縮めるための政策、亜人やエルフ、魔族と呼ばれる魔力の多い人々の権利拡大、医療と福祉の改善 ── そのすべてで、オーデンは単なる支配者ではなく、民を心から思いやる指導者であることを示してきた。


「そなたに一つ頼みがある」


 オーデンの声がさらに深みを増した。


「その……だな……わ……我の……」


 しかし、ここでオーデンはどうしても急に現実に戻されたかのように、自身がなくなってきた。いや、しかし断られることなどとは、露ほども疑っていないようだ。


「?」


「我の妃になってほしい。この国を共に治め、共に未来を築いてはくれまいか?」


「──!」


 リコの息が止まった。妃になる ── つまり皇后として、この帝国の共同統治者になるという提案なのだと。それはあまりにも大きな責任であり、あまりにも突然の申し出である。


 「やったじゃないか、リコ」


 ツカサは心から喜んでくれるが、リコの心は違う心情だ。


「でも、陛下。仰る通り、私は……この世界の人間ではありません。異世界から来た、ただの召喚された人間です ──」


「そんなことはどうでもよい」


「それに、本当の顔はこんなものじゃありません。お化粧したり着飾ればましだとは思いますが ——」


「我にとっては外見などどうでもよいことなのだ」


 オーデンはリコの言葉を優しく遮ると、静かに言い切った。


 リコは胸が高鳴り頬が赤くなるのを感じていた。複雑な思いが渦巻く。日本に帰りたい気持ち。この世界で困っている人々を助けたい気持ち。そして、確かにこの威厳がありながらも優しい獅子皇帝オーデンに惹かれる気持ち。彼の正直さ、力強さ、そして民を思う優しさにも。


 しかし ──


「陛下、私は……まだ日本に帰りたいという気持ちもあります。この世界での役割が終わったら、元の世界に戻る可能性だって……」


「む……わかっている」


 オーデンが静かにうなずいた。


「だが……だからこそだ。返事は急がなくともよい。すぐには答えを求めない。ただ……この護符だけは受け取ってほしい。悪意を持ってそなたに近づく者があれば、確か反射……インガオウホウ?  因果応報が働くはずだ」


 その言葉に、リコは思わず微笑んだ。オーデンが一生懸命に日本語の言葉を発音しようとする様子が、何とも愛らしく感じられたからだ。


「『因果応報』ですね。陛下、よくそんな言葉をご存知で」


「そなたの世界の言葉をいくつか学んでみたのだ」


 オーデンの頬が少し赤らんだ。威厳ある獅子皇帝が、照れくさそうに俯く様子に、リコの胸に温かいものが広がっていった。


 「待ってくれるって言うんだから、ゆっくり考えてみたら?」


 ツカサがそっと背中を押すように囁いた。読心術でリコの複雑な心情を感じ取っていたのだろう。


 リコは深く息を吸い込み、オーデンの目を真っ直ぐ見つめた。


「護符は大切に受け取ります。ただ……


 ただ失礼かとも存じますが、陛下の気持ちは、この異世界に無理矢理連れてこらた異世界人である私を憐れんでいるだけかもしれませんよ? それとも、聖女の代理人としての物珍しさで、勢いで求婚しようとしていませんか?


 そういうこともよくよく含めて、真剣に考えさせてください」


「む……そういう風に言われてしまえば、確かに我も軽率であるし、性急になり過ぎたか……わかった。我の方こそ、再度、よく考えてみるとしよう」


 オーデンはまさかリコに断られるとは考えていなかったから。しかし、護符を受け取ってくれたことだけでも、今は満足しようと、自分を律した彼の顔に深い安堵の表情が浮かんでいた。


 彼は護符をリコの手に載せると、その手をそっと包み込んでくれた。護符が触れた瞬間、温かなエネルギーがリコの全身に広がるのを感じた。


「さて、和平条約の件に戻るとしようか」


 セレニウスがタイミングよく口を挟んだために、るこのぬくもりを一旦手放さずを得なかったが。


 宰相はしれっとした様子で、いくつかの羊皮紙を取り出し、リコとツカサに手渡す。


「亜人と人間の和平条約の草案が完成しました。リコ様とツカサ様の提案を多く取り入れています」


 リコが草案に目を通すと、彼女たちが数週間かけて練り上げた案がほぼそのまま反映されていた。


 職場での平等な待遇、教育の機会均等、医療へのアクセス ── すべてが異世界である地球の知識を活かしたものである。


 「でも、まだ問題があります」


 ツカサが指差したのは、ムーン王国に関する条項の部分だ。


 「ムーン王国が最近相次いでいる災害について、私たちは援助を申し出るべきでしょうか?」


 オーデンの表情が一瞬で険しくなった。


「あれは彼らが招いた結果だ。真の聖女を蔑ろにし、代理人であるそなたを追いやる行為をしたのだ。創成女神の怒りは当然のことだろう」


 リコはうなずきながらも、心のどこかで引っかかるものを感じてもいた。世界樹を浄化し、創成女神たちと対話を重ねるうちに、この世界の仕組みが少しずつ理解できるようになっていたせいもある。すべての出来事には因果があり、ムーン王国の災害も彼ら自身の選択の結果なのだと。


 「それにしても……キョウカの扱いは大丈夫かな?」


 ツカサが本音を漏らした。リコも同じことを考えていた。


「そうですよね……キョウカのことは心配です。あの子こそ、本当はただの巻き込まれ被害者なのに……」


 キョウカ・サクラガワ ── 自称聖女を名乗り、逆ハーレムを夢見てこの世界に召喚された女子高生。彼女は能力を改竄し、リコとツカサを追い出すことに加担したが、根本的には異世界召喚の物語に憧れる普通の少女に過ぎなかったのだと。


 オーデンは複雑な表情を浮かべた。


「あの少女は自ら聖女を名乗り、王国の寵愛を受けたそうではないか。その責任からは逃れられまい」


「でも、陛下」


 リコが一歩前に出た。


「もし私たちがムーン王国を完全に見捨てれば、彼らはさらに過ちを重ねるかもしれません。真の変化をもたらすためには、時には手を差し伸べることも必要ではないでしょうか?」


 オーデンはしばらく黙考した後、深く頷いた。


「そなたの言う通りだな。だが、無条件の援助はできまい。彼らが真に過ちを認め、改める意思を示すことが条件になるだろうな」


「それで十分です」


 リコの顔に明るい笑みが浮かんだ。彼女は護符をしっかりと握りしめると、世界樹の方に向き直った。


 ユグドラジルの枝が微かに揺れ、葉の間から妖精たちが顔を覗かせた。精霊たちのささやきが再び聞こえ始め、風がリコの茶髪を優しく撫でる。


「では、和平条約の最終調整を始めましょう」


 セレニウスが羊皮紙を広げた。


「まずは職場環境の整備から。リコ様が提案された『障害者雇用促進』の概念ですが、こちらはどのように……」


 議論が再開される中、リコはふとオーデンの方を一瞥した。彼はすでに条約草案に集中しており、皇帝としての厳しい面持ちでセレニウスの説明に耳を傾けていた。


 護符が胸元で温かく輝いているのを感じながら、リコは静かに誓った。


 この世界の人々のために、できる限りのことをする ── そして、いつかはオーデンからの提案にも、きちんと答えを出せるように。


 風が再び吹き抜け、世界樹の葉がさらさらと音を立てた。まるで精霊たちが、新たな決意を祝福しているかのように。






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