The Steal Bride of Evil God 72
30分が経過し、豪華客船の中で逃げ遅れた人々が居ないか紅と黒を基調とした死焔達が徘徊する。扉が蹴り破られる音が聞こえて、音のする方角に顔を向けると、黒いスーツ姿の集団がゾロゾロと侵入してくる。
仮面を被っており、死焔と同じ様な不気味さを漂わせながら、老若男女様々な人間が居る事は見て取れる。
死焔も音に気づいて集まり始めて相対した。人数差は
互角、10人同士で睨み合い、先に黒いスーツの集団が動いた。重火器を所持しており、死焔相手に火力の雨を降らせた。音が鳴り止むと、蜂の巣にした死焔の集団がゾンビの様に起き上がり、距離を詰めて曲刀で斬り伏せていく。
「⋯⋯⋯手応えが無いだと」
まるで空を斬る様に、手応えはなく血も流血も無い。
倒れた者から消滅して消え失せ、次いで扉の奥から革靴の音が聞こえる。同じ人相をした者が再び現れ、銃を乱射し死焔達の足を止める。
「夏樹、あれの周囲にある邪神との繋がりを消してくれない?」
「頭上に何か見えるわ、変なのが。炎の塊みたいな物があの人達と繋がってるみたいな感じね」
「そう、じゃあサクっとお願いするわ」
「簡単に言わないでよシティハンターじゃないんだから!動き回られたら当たるわけ無いでしょ!」
銃を創生して、浦美に投げる。彼女は手に取り不思議そうに手に持つ。
「弾が無制限なのは何故かしら」
「そりゃ、私の想像の産物だからとしか。実物を生み出してる訳じゃないんだって」
ついでに、眼鏡を作ってそれも投げる。浦美がそれを装着すると、夏樹のみえている物が認識出来る。陰陽師の符術に近く、上位互換の様に遥かに応用が利く桁外れの能力に浦美も感心した。
「ふーん、面白いわね」
そう誰かが呟くと、再び銃声の音が聞こえる。二人の発砲により本来目に見えるはずの無い邪神との繋がりを正確に打ち抜き破砕する。夏樹が3人、浦美が7名を撃った。
「ーーー馬鹿な!」
再生が間に合わず、傷が戻り始めて全員消滅する。音を駆けつけて更に死焔の使徒が現れる。再び黒いスーツ姿の亡霊達が立ちはばかり、夏樹と浦美も銃を構えた。
結界の外は、ヘラジカの化物が足場の流氷を一歩ずつ歩きながら殺意を早苗と紅葉に向ける。氷点下の気温は更に下がり続け、白虎と朱雀も結界を張って術者を守る。気を抜けば、完全に凍りついてしまうかも知れない。早苗と紅葉も死の恐怖を感じ、打つ手も無いまま耐えるしかない。吹雪が強くなり、死を悟った瞬間、急に吹雪がピタリと止んだ。
「我ら以外の結界が張られている」
「ーーーあいつか。やるなら早くやれってんだ」
白虎と朱雀も納得した様に、早苗も理解した。
「⋯⋯京子?」
吹雪の最中、悠々とヘラジカの化物に向かっていくその背中に、京子を重ねる。化物も威嚇はするが、本能が畏怖を感じ取り一歩ずつ後ろへ下がる。
「紅葉をいじめるな」
瞬間移動で距離を詰め、化物の顔面を殴って流氷に沈める。
「京子ちゃんじゃないわ。銀杏よ」
早苗がそう言うと、周囲を覆っていた寒波も霧散し
晴れ渡る夜空と月が見えた。




