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第61話 意外

 実験に同席してる俺がいる。殺戮兵器開発なんて全く興味はない。ただ、そんな物騒な事に一般市民を巻き込むなんて許されたもんではない。俺は一団の中の良識として立ち会わなければならないという思いでここにいるのだ。




「凄いな〜、ふふふ、何回見ても不思議だし綺麗だよねぇ!いいな〜ジャス、羨ましいよ〜。」


「もう〜、アルさんやめて頂けませんか〜、へへへ♪もっと光らせちゃいますよ〜もう~♪」


 こうやって不備が無いかを監視してる。なんだ?変質者が呆れた目で俺を見ている、まるでいつも俺がしている様な目で…………いや、悪いのはマグだからな。善良な市民に万が一があってはならないからこうせざるを得ないんだからな。魔法サイコー!




 文句は受け付けん。




「ふむ、素晴らしいなこの能力。気体を可視化できるのは自分の経験則頼りより遥かに効率が良い。ここまで高濃度でこのガスを取り出すことがなかなか難しかったんだけどな………悔しいけどジャスの魔法はいい能力だよ。ホント捗るよ、くくくくっ………」

 最後の不敵な笑い声は少しひっかかったが、この変態科学者が素直に魔法を認めるとはね…なんか俺まで誇らしくなっちゃったよ。


 効率良く目当てのガスだけを抽出するのが光の量で一目瞭然になったらしい。今までの何倍、いや何十倍の量を一気の集める方法が分かったと喜んでいた。マグにとっては道具として使えれば魔法でも何でも活用するって事だな。





「本当にこんなにお手当頂いて良かったのですか?わたし的にはそんな大したことしてないと思うのですけど…………」

 マグが提示した金額にジャスが困惑している。王国直下の感覚は確かに俺も含めて一般人には桁がズレてる所があるからな。ただ、バカ二人はそれを遥かに凌駕する金額をギャンブルに突っ込めるからスゲェよな。最悪の意味で。


「ああ、気にしなくて良いよ。ジャスのおかげで自分の研究が一気に何ヶ月分も進んだ感覚なんだよ。それに、自分の懐からじゃなく研究費として機関から支払われてるからな。その代わり、この先もまた来た時に研究を手伝って貰えると嬉しい。」


「あ、は…はい!こんな事で良ければお声を掛けて貰えればいくらでも!アルさんも近くに来たら寄って下さいね!それまでには新しい事ができるように努力しておきます!」

 うう、素直に真っ直ぐで眩しいな………魔法使いが仲間になった気分だよ。ここ数日楽しい毎日だったな。こんなに充実した時間を過ごしたのは久し振りだったよ、何か忘れててる感じがするんだけど思い出せないって事は大したことではないのかな?


「ありがとうな、ジャス!まだまだ見足りないけど凄く楽しかったよ!次見せて貰うの楽しみにしてるよ!」


「ふふ、この街には特産物もまだまだありますし競馬も楽しめるのでまた来て下さいね!」

 ああ、競馬か………そう言えばあいつらしばらく放っといたっけな。なんか今朝遊びに行くとか言ってたっけな………俺も少し浮かれてたな、余りちゃんと対応してなかった気がする。











 今日俺達はほぼ無一文になってしまった。何故だ?











「行くぞコラッ!とっとと任務終わらせて特別賞与くらい貰わないとやってけねえぞ!」


「はい………仰せの通りに……」

「うん………がんばります……」

 バカコンビに喝を入れる。特にデカブツ!コイツと競馬の相性は最悪だったっぽい。バカディッドですら引く時があるくらい熱狂して雄叫びを上げていたらしい。なんせ率先してディッドを誘って来たらしいからな。マグは王国の研究費を動かせる権限があるのだが、もしもそれを私的に使ったとしたら………横領罪として一生牢獄行きになってもおかしくないってさ。恐ろしい………


「今回の任務は王国式典用の宝飾品の採取と言う事だ。その分特別手当も出るだろうし丁度良かったな。」

 なんだよ、お偉いさんのお飾りの調達係かよ。でも下手に物々しい任務よりか幾分気は楽かもしれないな。とりあえず金だ、金!守銭奴に思われようが関係無い。必要なものは必要なんだよ。


「それで次の目的地はどんな所なんだ?」

 採取と言っても王国の任務には変わりない。俺達にやらせると言うなら面倒臭い内容なのは間違い無いだろう。


「そうだな、多分容易に想像がつくと思うぞ。なんせ宝飾品って巷では”奇跡の石”って呼ばれてる代物だからな。この国では数カ所採取場所が存在するんだが、近頃一箇所は何処ぞかの何者かに採取されたらしいって事だ。それが取れる場所は大体同じ雰囲気の場所だからな。」

 う〜ん、何故想像できるのかな?俺にはよく分からない。何処ぞかの何者が持っている奇跡の石を渡してしまえばこのミッションは完了ってことにならないか?





 うっ、ヤバイ。なんで心のなかでちょっと考えただけなのに恐ろしいほどの殺気が俺に襲い掛かってきているんだ?変な超能力発揮してんじゃないよ。クソッ、危うくチビるトコだったじゃねえかよ…………そこら辺の情報は確実に王国は握ってるだろうから、何も言ってきてないって事はマグが陰で糸を引いているんだろう。王国相手でも引くことを知らないからな、ウチのバカは。


「と、言うことは山登りになるのか。…………いや、崖?………」










 何か思い出してはいけないことが頭をよぎった。俺の人間としての尊厳を跡形もなく砕いてくれるような扱いのことを。




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