第34話 滝のほとり
大河から支流に入り幾分は川幅が落ち着いてきた。とは言えまだまだ巨大生物の気配が消えるわけではない。慎重に行くべきだな。で、この先には滝が見えている。結構な流量があるのだが滝の隙間からちらっと……気になるんだけど裏に洞窟があるっぽいんだよな………よし。
「ちょっとここの滝を超えるには遠回りに行かないとダメっぽいな。さあ行くぞ、早くしないと日が暮れちゃうからな。目的地まではもうすぐだぞ。」
「なんで」
ああ、そうだよな、逃げられないなやっぱり。俺ですらちょっと気になるもん。完全にバカのハートを不気味洞窟がキャッチした様だ。
「なあマグ、俺達の任務って期限はどうなってんの?」
とは言え危険は避けたいので国家権力に頼ることにする。
「これと言って決まって無いよ。自分は国王含め上層部と面識あって進言もしてたりするんでね。時間がかかったとしても自分が説明できれば問題ないし、急がなきゃいけない時はちゃんと伝えるよ。」
はい、退路は塞がれた。行かなきゃいけなくなったのは分かったけど、俺の並びは前から3番目だからな。ちゃんと守れよ、順番と俺。
「まぐ夫〜なんか明かりってある?ちょっと見てきたけど結構奥までありそうだよ。」
行動が早いな、ワクワクが止まんないんだろう。
「明かりは大丈夫なんだけど、狭い空間だと使える弾が制限されるんだよね。穴が崩れて生き埋めも困るだろうし……ちょっとばかし準備する時間貰えるかな?」
「構わない。みんなの安全の為だしな。」
俺は生き埋めは御免だ、苦しそうだろ。
最低限の道具だけ選別し残りは纏めて外に隠しておく。マグの機械は置いていくので、吟味した鉄球弾をラックバードに渡してた。左腕や腰にマグの手製のホルダーに装着できる様になっていた。何気に器用だな、変態なのに。
「ラック君。100kg位はあるけど大丈夫かい?」
「問題無いです。なんならあと4〜50キロ追加しても大丈夫そうです。」
普通は大問題なんだけどな。俺は助かるからそんな事は言わないでおく。
「早くしてよー、コッチは待ちくたびれちゃったよー。」
「ちょっと待ってろ。準備は大事っていつも言ってるだろ。………ん?」
急いで滝の裏に足を踏み入れたんだが、入口付近は思ったより広かった。このままの空間が続くならデカ目の生き物もいる可能性があるんだよな……あれ、地面に何か転がっているな。
「ぬぁっ。なに!?キショク悪……」
虫だ、大量の虫が散乱している。一匹ごとに脚が10対以上あるので虫の脚の草原みたいになってる。奥には今まさに生き生きと草原を生み出している生産者がいた。
「うう…歩く度にパキパキいうのにヌルヌルしてんの凄い嫌だ。ラッキー、マグ、蜘蛛とか百足も転がってるから毒にも注意しといた方が良いからな。」
あのバカが手当たり次第に斬り落としてるので、虫やらなんやらが山になって重なり合っている。暗いし凸凹してるから足を取られるのが腹立つ。俺の事を考えろ。
外からの明かりが途絶えた辺りでディッドが待っていた。流石に真っ暗じゃ何もできないんだな。安心した。
マグが用意したランタンは小さく軽い筒状の形をしていた。なんか怪しい薬品やら火薬やらを混ぜて燃料にしているらしく数時間もつらしい。何気に便利な奴だよ、重宝できるな。
「ディッド、あんまり離れるなよ。結構穴がデカいからどんなのが出てくるか分からないからな、お願いだから注意してくれよ。」
「相変わらず臆病だね。こんなに広かったら動き回れるじゃん。大丈夫だよ。」
何をもって大丈夫なんだよ。歩くのさえままなってないよ俺は。それに奥に行くほど広くなるの怖いんだけど……行き止まりになってくれれば戻れるのにな……まだ探索は続きそうだった。
「結構奥まで来ましたけど、ここに来るまでの感じだと虫みたいなのしかいなさそうですね。問題なさそうです。」
デカいサソリで苦労したのを忘れたのかデカブツ。
「明かりの事を考えるとそろそろ一回引き返したほうがいいかもね。あと10分ぐらい行って何もなければ戻ろうか。」
マグ、いいこと言った!そうだな、しょうがないもんな。
「う〜、分かったよ。拍子抜けだねこの洞窟。」
よし、ディッドが納得すれば問題ない。さあ、今すぐ帰るぞ。あれ?
「ディッド!戻れ!何か…何だ?水じゃない、光を反射してる…水飴みたいな…って、」
ディッドのいる少し先に洞窟を堰き止めるような光の膜が見える。その膜の奥には宙に浮かんでいる虫の死骸が見えた。振り返り一歩引いたディッドの目の前に透明な触手のようなものが伸びてくる。これは……
「スライム?なのか?」
この先の洞窟の形に見事にフィットしているゼリー状の生物。生き物だよな?捕食してるしな。
目の前の触手をディッドが刀で切り捨てる。
「あんまり手応えがないよ。これで死んでるのかな?」
虫より遥かにスライムは感情が分からない。ラッキーは俺の同志に成り下がってる。物理攻撃が通用しそうにないもんな。だが、俺を守る役割があるんだからしっかりしろ!頼むぞ。
「切った先は徐々に干からびて活動を止める、と。何が効くのかやってみないとね。
ディッド君、この弾をスライムの中心に向かって投げ込んでくれるかい。」
マグはやはり研究者なんだな、研究対象と実験対象があるからか冷静に対処してる。この状況を逃す手はないのだろう。
「ラック君は左腕の3番の弾をディッド君の投げた弾にぶつけてくれないか。」
「えい!」
ディッドも普通の人間では考えられないような勢いで投げやがるよ。バケモンめ。
「それでは行きます………ふん!」
ラッキーはそれに輪をかけてパワーとコントロールが乗っている。先行の弾に寸分狂わずに追撃をする。
「わぁ〜、綺麗だね!花火みたいだよ。」
眩い光と炸裂音が響く。透明なスライムの内部が艶やかに彩られていた。
「ふむ、花火だね。45%位の確率で成功すると思ったんだけどね。ただの花火になっちゃったよ、失敗失敗。」
は?
スライムの感情なんて分かるはずない、とさっきは思ってたけど……そんな事は無かったよ。
怒りと敵意だね、俺達に。




