↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/251

第3話『Black Knight(黒騎士)』 B Part

 新月──月明かりを望めぬ夜空を舞台に風の精霊術で飛ぶ様に跳ねる女武術家のルシア。

 エドナ村を襲来する黒の軍団の首領格。マーダの背後に迫るも後一歩の処で及ばず、避ける動作を余儀(よぎ)なくされた。


「女ッ! 貴様中々やるではないか。可憐(かれん)なる花をこの我が直々(じきじき)()ぐ前に名乗る権利を与えて進ぜよう!」


 マーダ、未だ抜刀せず馬上から見下す視線と手招(てまね)きと笑顔でルシアを煽る(あおる)


 黒髪に黒い瞳。出会いの順にif(もし)は存在し得ない。だがこの島に渡らんとする青年(ローダ)の顔を見れば面影(おもかげ)を感じても不思議ではない面構え。


「貴方に覚えられた(名乗れた)処で全然嬉しくないけど。ルシア……『ルシア・ロットレン』よ」


 その名を耳に入れた途端(とたん)、この世の総てを卑下(ひげ)するマーダの顔色が変わりゆく。名乗りを挙げた女武術家に(まゆ)顰め(ひそめ)凝視(ぎょうし)、他には目もくれない。


「──()()()()()? 女ぁ……。貴様ぁ、()()()()()と抜かしたなぁ!?」


「それが何だって言うの……よッ!」


 ルシアに取ってこの男とお喋りをする余裕は無論、楽しむ未練(みれん)も全く皆無。会話しながら男の黒い騎馬へ、風の精霊を付与した足払いを入れつつ迫る。


 マーダの騎乗する馬は大層屈強(くっきょう)なれど所詮(しょせん)ただの馬。ルシアの鋭き足払いをまともに受け、憐れ(あわれ)嘶き(いななき)脚を折られ(くず)れ落ちた。


 マーダは馬上から砂地へ降り立つ。騎馬を失った事実を全く以って意に(かい)さない。

 そんな些細(ささい)よりも目前の女が名乗ったロットレン姓へ過敏(かびん)に反応。それこそ気張り(きばり)過ぎな()()()(ごと)苛立つ(いらだつ)仕草を隠す気がなかった。


「我が暗黒神よ、その竜が(ごと)き爪を此処に示せ──『切り裂く爪(ディセデイオネ)』!」


 女武術家と黒い剣士のやり取りを後ろで見聞きしてた女魔導士フォウ。敵の(すき)を見計らいすかさず詠唱。

 折られた魔導の(つえ)が赤く輝き、その光がルシアへ急速に伸びる。さながら赤き光の刃。


 キンッ!


「何ィッ!?」

「はんっ! ばろうず(ヴァロウズ)の4番目が女子(おなご)()相手に不意打ちすっとか(するのか)? ほんのこち(本当に)呆るっど(呆れるぞ)!」


 腕組み鼻を鳴らすガロウ。何時の間にやら黒の軍団最深部まで押し迫っていた。


 フォウ、爆炎(フィアンマ)を止められた痛恨(つうこん)の冷めやらぬ間に続く戦慄(せんりつ)

 魔術で生成した刃を、髭面の剣士ガロウが()()()()で斬り伏せた並外れた(イレギュラーな)行動。


 ──ただの刀が魔法と斬り結ぶ? この男まさかっ!?


 先程のルシアですら炎の精霊術を以て相殺したのだ。

 実体を持たぬ光の刃をただのイカレ(気狂いな剣士)が斬って捨てられる道理がない。男の刃、よく見つめてみれば滾る(たぎる)鉄の(ごと)き色を帯びていた。


「男ッ! 貴様さては()(ひら)いた異能者だな!」


「ア"ッ!? (ない)言っちょっか(言ってるか)まるで判らん!?」


 フォウの刃物より鋭き指摘の声。折られた杖でガロウを指す。

 ガロウは刀の(みね)で己の肩を叩いて首を捻る(ひねる)()()()()()()()()()()()()のは寧ろ(むしろ)髭面の方だと云えた。


 バシュッ! バシュッ!


 マーダとフォウの足元へ暗闇の最中、何かが撃ち込まれ砂塵(さじん)が舞う。あからさまな目潰し(めつぶし)の攻勢。Resistance(反乱者達)は、ルシアとガロウだけではない存在感を指し示す。


 ブォンッ!


 ルシアが瞬間、マーダの背後に気配のみを散らして左脇から電撃を帯びた拳で迫る。全体重を載せた全力の拳(ストレート)でなく、左右の連打(ワンツーパンチ)で攻める慎重なる動き。


 ルシアの動きを予め知覚し切っていたかの(ごと)きガロウ、最上段から電光石火の振り下ろしをマーダに浴びせた。未だ周囲を囲う炎の壁が刃に映る。

 フォウ(女魔導士)の存在を完全に無視した両者、文字面通り()()()()()()


 ガロウの放つ赤い刀の切っ先。

 ルシアが見舞う電撃の拳。

 何れもマーダの首へ届くと、誰もが思う(願う)好機(タイミング)


 刀の切っ先が砂地に届き、砂埃すなぼこりが舞い上がる。

 ルシアの文字通り、電光石火の拳が宙を切った。


 二人が夜の闇に描いた互いの軌跡。真っ直ぐに真横へ伸びた金色(こんじき)(きら)めきと、上方から地面へ叩き付けた赤い剣筋が美しき十字(クロス)を成す。黒い帆布(夜の背景)に映えた()()()


 ──て、手応てごたえがなか(無い)ッ!?

 ──い、今のを(かわ)すのッ!?


 そうなのだ──。

 黒い帆布(キャンバス)に描かれたのは、あくまで二人の十字(クロス)だけ。赤い絵の具(マーダの血が)飛び散る様子が全く見当たらない。何れも避けられた()()


「下らぬ、地上を這う(はう)虫共。我は現人神(生きた神)である。星の重力さえ(かせ)にはならん」


 ルシアとガロウの背後、それも斜め上から小馬鹿にした声が聴こえる俄か(にわか)に信じ難い(さま)

 何とマーダ(黒い剣士)、2人分程の背丈に達する宙で静止。(あご)まで()ける嗤い(わらい)を浮かべた。


 戦慄(せんりつ)を通り抜け、純然たる脅威(きょうい)だけを感ずるルシアとガロウ。出来の悪い奇術の類(Magicshow)を見せられた気分に堕ちた。


 マーダが嘗て(かつて)の敵から奪いし魔法。その名も『重力解放(ヴァレディステラ)』文字面通り、まさしく重力の(かせ)から(のが)れ、宙で好きに振舞える術式で浮いたのだ。


 スゥッ……。

 遂にマーダ、()()()(さや)から巨大な両手剣(グレートソード)を抜いた。されどフォルデノ王国を夜襲した際の赤い(いびつ)な大剣とは異なる。


 マーダ、冷笑しながら()()両手剣(グレートソード)悠々(ゆうゆう)握り、空いた手で己が刃をスッと()でる。加えてガロウに対する当てつけが如く、蒼白く輝いた刃を最上段で構えた。


「虫共、地上から神の鉄槌(てっつい)を見上げ絶望に伏せるが良い! ──『輝く真空の刃(アディシルド)』!」


 斬る相手が何処にも無き夜空にて最上段からの振り下ろし。蒼白い大剣の剣筋が瞬時に存在しない()()()錬成(れんせい)した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。