2.お友達と、嫉妬。
「ミリア、お昼ご一緒してもいいかしら?」
「ナタリーさん! ぜひ!」
さて、午前の授業が終了して。
アタシはそそくさと、ミリアのもとへ移動して声をかけた。すると彼女は、その愛らしい顔に花のような笑みを浮かべる。
そして二つ返事で了承してくれた。
第一関門、クリア!
アタシは心のうちで、大きくガッツポーズ。
天使のような笑顔を浮かべる彼女にほっこりしながら、とりあえず食堂へと向かうことになった。この学園には学生用の食堂があり、一流のシェフが料理を振舞ってくれる。
貴族の令嬢、嫡男も多く通うこの学園ならでは、といった感じだ。
「えっと、それじゃ――」
到着して、アタシはメニュー表とにらめっこ。
そして今日の昼食を選ぼうとした。その時だった。
「あ、あの。ナタリーさん……」
「どうしたのかしら、ミリア?」
ミリアの声に振り返ると、そこには申し訳なさそうな彼女の顔がある。
首を傾げているとミリアはこう言った。
「私、やっぱり遠慮します……」
「え、えぇ!? どうしたの!?」
その言葉に驚く。
突然どうしたというのだろう。
もしかして、アタシに向けられている視線に気づいた!?
「えっと、その――」
そう考えていると、ミリアは小さくこう口にした。
「お、お金がなくて……」――と。
◆
「あ、ミリアって平民出身だったの?」
「あはは、そうなんです。すみません、黙ってて」
テーブルについて、アタシとミリアは食事を摂る。
その時になって知ったのだが、どうやらミリアは貴族ではないらしい。平民の生まれで、偶然にも魔力に目覚めたとか。そういえば、教員も特例って言ってたっけ。
お金がないというのは、つまりそういうこと。
彼女にとって、貴族が利用する食堂のランチは破格なのだ。
「でも、良いんですか? こんな美味しい料理をごちそうになって……」
「良いの良いの、気にしないで。アタシたち、友達でしょ?」
「ナタリーさん……!」
料理を目の前にした今でもなお、遠慮しようとするミリア。
そんな彼女に、アタシはあっけらかんとした風にそう伝えるのだった。するとミリアは感動したように、晴れやかな表情を浮かべる。
そして、深々と頭を下げた後に手を合わせてこう言った。
「いただきます……!」
少し緊張した様子で、一口。
その直後、彼女は目を見開き――。
「ほわぁ……!」
蕩けたような表情になった。
どうやら、お口に合ったらしい。
「美味しいでしょ?」
「はいぃ……!」
「どんどん食べてね?」
「あ、ありがとうございます!!」
その反応が嬉しくて、アタシまで笑顔になった。
本当にミリアは可愛らしい。この子と友達になれて、本当に良かった。
……いや、まぁ。
まだ周囲からの視線は、ちょっと厳しいけれど。
「まぁ、そのうち平気になるわよね」
「なにか言いました?」
「なんでもないわ、気にしないで」
「…………?」
アタシの独り言が聞こえたらしい。
ミリアは小首を傾げるが、アタシはそれを流した。
アタシはもう悪役令嬢でも、その取り巻きの一人でもない。
この人生をもって、その呪縛から逃れてみせる!
「頑張ろう、本当に……!」
◆
一方その頃、ガレリア。
彼女は食堂の物陰からナタリーを観察していた。
そして、その向かいに座るミリアを見て、こう口にする。
「泥棒猫……!」――と。
悔し気にハンカチを噛みながら。
公爵家令嬢――ガレリア。
彼女の怒りの感情は、燃え盛る炎となっていた。
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